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7 勢ぞろい
しおりを挟む晩餐の時間は地獄だった。
ジェラルディーヌに、モニク、それにルイーズが揃ってなんかバチバチやってる。
この中で一番身分が低いのが伯爵令嬢のモニクで、控えめに様子をうかがっていた。
なんだろう。ジェラルディーヌってば、隣の国の姫にまで喧嘩売ろうとしちゃう?
えー、外交問題に発展するようなことはやめてねー。
私、この間に入らなきゃいけないの?
ちょっと、義姉上助けてー。
チラッチラみれば、にっこり笑って、がんばりなさーい、みたいな感じ?
とにかくここにシャルロットがいなくてよかったな。
小さなあの子は守ってあげないと。
でも近々、お茶会で四人が顔を合わせるのか……。
気が重い。
「あさって、侯爵家のシャルロットを呼んで一度全員顔合わせをしておこう。皆より歳が離れているから、アリスティドが特別に思って、いや格別、気にしているからな」
言い換える意味ある⁉︎
兄上、ヤメテ!
この重たーい空気をどうにかしようとしたんだろうけど、雰囲気ますます変になっちゃったよ‼︎
「シャルロット様とは、どのような方ですの?」
ルイーズの言葉に、ジェラルディーヌが鼻で笑った。
「あら……ご存知でいらっしゃらない? 幼な子ですわ。八歳としてはとても賢くて可愛いレディですの」
うん、まぁ、確かに。
ジェラルディーヌは一番のライバルと思ってないんだろうな。
私の大本命なんだけどね。
まぁ、二十歳の青年が八歳を選ぶとは思わないよな。
八歳の子を見初めた、とか犯罪の匂いしかしない。
結婚するメリットも、侯爵家は穏和な中立派だからってくらいで、政略的に強い理由もない。
「そうですか……では、私が初めて殿下と出会った歳頃と一緒ですわね」
「ふふっ、私は生まれた頃からずっとおそばにおりますわ」
ルイーズとジェラルディーヌが笑い合う。
チラッとモニクを見ると、私を見てほんの少し微笑んだ。
モニクとも幼い頃にお茶会で会ってる。
女同士のやりとりめんどくさいよね、って感じで私も微笑み返した。
その時はそんなちょっとしたやりとりをほかの二人がじーーっと見ていたことに気づかなくて。
モニクは、チーズケーキのレシピとか渡せばあっさり引いてくれそうだなって考えた。
来たばかりの王女にすぐ帰れ、はさすがにどうかと思うから十日後に、シャルロットを選ぶと宣言しよーっと!
とは言え、その前に婚約者候補全員集合の気の重ーいお茶会。
シャルが可愛いな。
いるだけで癒される。
「シャルのために、この間話したスミレの砂糖漬けを用意したよ」
「ありがとうございます、殿下」
お姉さん達ばかりでちょっと困った顔なのも助けてあげようって思う。
「殿下? あの、わたくし一人で座れます」
「うん、そうだね。でも、私の膝の上の方が、ほかのみんなとも話しやすいんじゃないかな」
子ども用の椅子も用意してあるけど、抱っこしてると、落ち着くわー。
みんな、ニコニコしているけど怖いんだ。
震えそう~。
ごめん、シャル。私の盾になってほしいのよー!
喜んで欲しくて、テーブルにたくさん花を飾ってあるのよー!
「殿下。シャルロット様もレディですから、私の隣なら心配せずとも大丈夫ですわ」
ジェラルディーヌがそう言うと、ルイーズが。
「シャルロット様、それなら私の膝にいらっしゃらない? 女性同士の方が安心でしょう」
シャルが困ったように、ちらりと私を振り返る。
「できればこのままここにいてほしいけど、好きにしていいよ」
「はい、ありがとうございます。では、わたくしあちらへ失礼いたします」
素直~! 正直~!
というより、なんか空気読んだー⁇
そっと降ろすと、ジェラルディーヌの隣の席へ向かった。
そっか、八歳でも女の子だもんね。
「シャルロット様、こちらのクッションをお使いくださいませ」
すかさずモニクが椅子の上にそれを置いた。
「モニク様、ありがとうございます。……これ、とっても座り心地がいいですわ」
「お近づきの印にシャルロット様にプレゼントいたしますわ。我が領地で作っておりますの」
「すきです! 我が家用にたくさんほしいからお父様にお願いしますわ!」
さすが~! 商売っけあるね。
「モニク」
「はい、殿下。なんでしょうか?」
「今後のために、王宮にもシャル用にいくつか注文させてほしいな。私の部屋にも置きたいしね」
シン。
あれ?
なんか、みんな見つめてくるけど、やっちゃった⁉︎
でも、私は最初からシャル一択だから!
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