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12 一夜の? ④※微
しおりを挟む頭が真っ白になって、私は温かく包まれたそこで吐精した。
浅く何度も息を吐きながら頭の中のモヤがスーッと晴れていって、目の前の状況に気づく。
ルイの小さな肩が痛みに震えている。
これって、これって。
「ごめん、ルイ。……ごめん」
女の子の初めてをこんな風に奪うなんて。
最初に襲われていたのは自分だし、そんな風に考えなくてもいいんだろうけど、前世の私の、女の子の心が痛い。
「どうして、謝る? こうなりたかったから、いいんだよ」
ルイはそういうけど、すっごく痛そうに顔をしかめているから。
ルイを持ち上げて、そっと横たわらせる。
私のアレがふにゃっと元気を失って、血がついているのが見えてなんだか泣けてきた。
「ごめん……責任とる」
「うん」
私の首に腕を回して抱きついて、はぁ、っと大きく息を吐いた。
「あー、痛かった……」
「ごめん」
「いいよ、こっちが煽ったから」
「でも、ごめん」
「すぐ、動けないからしばらくこのままでもいい?」
「もちろん! なんかして欲しいことある?」
「少し、ドレスを緩めてくれる? コルセット、苦しくて」
「わかった!」
背中側の包みボタンをはずしていく。
コルセットの実物を見たのは初めてだけど、多分この紐を緩めればいいのかな。
「ありがとう」
はぁ、っと息をついてくっついてくるから、そのまま何も考えず抱きしめた。
男からしたら小さいし、華奢。
守ってあげなきゃって思ってくるから不思議。
背中を撫でながら、思わずつぶやいた。
「私、これから閨教育受けようかな」
服も来たままこんなことするなんて、私、ありえない。
基本くらい知らないと恥ずかしい。
「なんで?」
ルイが勢いよく顔を上げる。
怖いからにらまないで!
「えっと、だって、ルイに痛い思いさせちゃったし、何も、知らないし」
だってこれまで、うっかり夢精するという恥ずかしい経験しかないから。
自分では最低限しか触れてこなかったんだよ。
「そんなの、一緒に覚えていけばいいよ。他の女を抱くなんて嫌だ」
「そう、いうもの?」
俺の高校時代の彼女にヤキモチ妬いていただろ、って。
ルイくんに片想いしていた中学生の私は、そんなにわかりやすかったのかな。
あの彼女は私の気持ちに気づいていたからなのか、ルイくんにべったり甘えて、みせつけて、本当に性格悪かったと思う!
でも、すぐ別れたからほっとしたんだ。
「うん、いやだね。なんか、いやだ」
「ものすごく嫌だよ」
私が高校生になって、ルイくんにデートの練習してって誘ったんだった。
ひどい誘い方だけど。
でも、笑って頷いてくれた。
映画でも観るか、って待ち合わせして……先にご飯を食べたところまで覚えている。
「初デート、途中から記憶ない、んだよね」
私のつぶやきに今度はルイくんが私の頭を包むように抱きしめてくれた。
「多分……映画館に行く途中で、事故に巻き込まれたから、二人ともここにいるんだと思う」
そっか、やっぱりそうなんだ。
「悲しいね。もうみんなに会えないんだもん……」
家族にも、友達にも。
「そうだね」
ルイくんが慰めるように優しく髪を撫でるから、私はついつい、そのまま眠ってしまった。
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