異世界で再会した姉はおばあちゃんで、私はそこで恋に落ちた

能登原あめ

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「よく来てくれたね~!はじめまして、兄のアーティだ。会えて嬉しいよ」
 
 いかにも商人、といった雰囲気のお兄さんに一瞬戸惑った私だけど、好意的に迎えられて笑顔を浮かべた。

「はじめまして、ゆみです。私も会えて嬉しいです」

 フランシスが迎えに来て、私とあみちゃんを毛布を敷いた荷台に乗せてくれた。
 ガタゴトと揺れるからちょっとだけアトラクションのようで楽しかったのは、フランシスには内緒。

「みなさん、久しぶりね。この時期はどうしたって家から離れられなかったから、やっとひと段落できた今、お誘いがあってすごく嬉しいわ。今日はありがとう」
「アミさん、お久しぶり。お孫さんが来てくれてよかったわね。最近フランシスが配達専門になっちゃったから、顔を合わせることがなかったものね」

 私はフランシスの顔を仰ぎ見る。
 ちょっとバツが悪いような困った顔をするから吹き出した。
 
「だって、ユミに会えるから」
「うん……私も会えて嬉しかったよ?」

 気づいた時にはシンとして私たちの様子をみんなが見ていた。

「さぁさぁ、食事にしよう。アーティのもうすぐ帰還祝いとアミさんの孫の歓迎会と、フランシスに恋人ができた報告会かな!」

 フランシスのお父さんは大きな声でガハハと笑った。
 私たちのお父さんとは全然違う。
 どちらかというと職場にいた副店長みたいな明るくてオープンなタイプみたい。
 私は手にしていたアブリコのビスケットと、あみちゃんの塩むすびを渡すと、みんなが歓声をあげるから本当に驚いた。
 
 フランシスのお母さんが用意してくれた食事は、多分牛肉のプルーン煮込みにマッシュポテトが添えられて、グリーンサラダと、小ぶりのパンがカゴに盛られていた。
 これがこの村の家庭料理と聞いて、私はときめいた。
 こっちの料理は食べたことなかったから。
 そこに、初めから決まっていたみたいにあみちゃんの用意した塩むすびが並べられた。

「おいしそう、です」
「まぁ、嬉しい。アミさんがこの村に来てから食事改革が起こって、米は牛乳で煮てデザートにするより、食事にしようって変わったのよね。とにかく」
「シオムスビ!」
「シオムスビが絶品で!」

 みんなが口々に褒めるから、あみちゃんのお土産の定番なんだ。
 すごく納得した。
 食事に誘われてるのに塩むすび持っていくってどうなのかなって頭の中にハテナがいっぱいで、あみちゃんは笑っていいのよ、これでって言ったから。
 それで今朝もはりきってご飯を炊いて、私も手伝って握っちゃったけど、大丈夫かな……。
 いつもと違っておいしくないと思われたらどうしよう。

「この村で採れるお米が美味しいのよねぇ。それと、海塩」

 あみちゃんの言葉に、フランシスのお母さんが首を横に振る。

「炊き方とか握り方とか教えてもらったのに同じにならないのよねぇ」
 
 経験の差かしらって、言われてぎくりとした。
 みんなが塩むすびに手を伸ばす。
 フランシスが手に取ったのが私の作ったものだと気づいて、ちょっと嬉しくなる。
 あみちゃんの作るものよりわずかに小さいのは手の大きさのせいかも。
 
「おいしい」

 フランシスが私の目を見て言うから私はほっとして微笑んだ。

「……二人ともいつもこんな感じ?」

 アーティさんがあみちゃんに話しかけて、そうねと頷いて。

「俺も来月にはここへ戻ってくるし、その頃には天日干しの作業で大変でしょ?二人はゆっくり今後を考えると聞いているけど、お試しで一緒に暮らしてみたら?実際に作業して、一緒に過ごしてみたらよくわかるんじゃない?アミさんも助かるだろうし」

 アーティさんが街へ学びに行ったのは、村の女性との結婚前提のおつきあいがうまくいかなかったから、ほとぼりが覚めるまで離れたのと、兄弟で店を大きくすることを考えたかららしい。
 その女性は別の村から来た人と結婚してここに住んでいるというし、あみちゃんが言うように意外と住み続けられるのかな。
 小さい村なのに意外とあっけらかんとしていると思う。
 
「部屋も余っているし、私は助かるわ。二人はどう思う?」
「フランシスが嫌じゃなければ……」
「俺はやりたいです」

 びっくりするくらいすんなりと同居が決まって、忙しくなる前にフランシスが引っ越してくることになった。
 ちょっと展開が早くて戸惑うけど、一緒にいる時間が長くなるのはやっぱり嬉しい。

 おいしい食事を取りながら、賑やかな会話に食が進む。
 この村の家庭料理ももっと知りたいな。 
 
「ユミちゃん、お口に合う?」
「とても、おいしいです。……フランシスが好きな料理を教えてもらいたいです」
「…………それ」

 一瞬静まったのが気になったけど、フランシスのお母さんが隣のアーティさんの背中を叩きながら明るく笑う。

「ええ、もちろん!仕事が落ち着いたら、ぜひ!アミさんもどう?一度目の前でシオムスビを作るところを見てみたいわ!」
「そうだね、じゃあ、目の前で米を炊くところからしようかしら?」
「それは俺もみたいな!」

 アーティさんの声に、フランシスが味見係を申し出て、料理教室の後にまたみんなで食事会をすることが決まった。
 
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