私が好きと言ったら抱きしめるあなたは、好きと言ってくれない。

能登原あめ

文字の大きさ
11 / 28

10 橋渡し

しおりを挟む


「あの……」
「……」

 ちらりと見ると、アーサー様の顔が真っ赤で私の顔も多分真っ赤。 
 熱くて、熱が出そう。

「エヴァはアーサーが好きで、わたくしもアーサーが好き。一緒ね。これから、ずーっと、仲良くしてね!」

 キラキラした瞳で無邪気にそう言われて、私はもちろんです、と応えた。
 
「アーサーもわたくしが好きで、エヴァのことが好きなのでしょう? わたくしたち、みんな仲良くなれるわ。そうでしょう、アーサー?」

 アーサー様の方を向くことができない。
 なんて答えるかどきどきしてる。

「はい、そうですね」

 アーサー様!
 優しい!
 やっぱり大好き!
 胸がぎゅっとしめつけられる。
 顔がみたいのに、恥ずかしくて向けない。

「エヴァ、またこうしてお茶会に参加してくれるかい?」

 殿下は楽しそうに笑う。
 これがきっと普段の姿なんだろうな。

「ぜひそうしたいのですが、明後日には領地へ戻ることになっています。次はきっと来シーズンになるかもしれません……」

 そういうと、みるみる姫様が悲しそうな顔になる。

「せっかくお友達になれたのに……みんな、お兄様と仲良くするために、わたくしに近づいてくるから楽しくなかったの。……でもエヴァは……アーサーが好きだから……」

 きゃー! 姫様何度も言わないで!
 本当のことだけど‼︎

「あ、あの、お手紙のやりとりをしませんか? 絵でも、押し花でもいいので、よければわたくしと……」

 殿下が頷いて口を開いた。

「それはいいね。じゃあ、アーサー、手紙を届ける役目を君にお願いするよ。ちょうどいいだろう?」

 何がちょうどいいのかわからないけど、王都から領地まではそれほど遠くない。
 長居しなければ日帰りできる距離だと思う。
 つまり、これからたびたびアーサー様と会うことができるってこと⁉︎

「わたくし、毎日お手紙書きますわ!」

 殿下がそれはちょっとってつぶやいたけど、ちらりと見たアーサー様の口角は上がってる!

 すてき。
 冗談だと思ったのかな!
 本気だけど、アーサー様の体を考えたら……やっぱりダメだよね……。
 
「月に一度程度なら。学校もありますので」
「アーサー様は学校に通っているのですね!」
「彼は王都にある寄宿学校の上級クラスにいて、十八歳で卒業する予定だよ。私も一時期顔を出していたから仲良くなったのだけどね。それで、長期休みにこうして私につき合ってくれるんだ」
「では、手紙……大変じゃないですか?」
「大丈夫だよ。休みの日は鍛錬しかしているのをみたことがない。息抜きにいいだろう」

 さっきから、全て殿下が答える。
 アーサー様の声も聞きたいのに!
 
 私の心の声が聞こえたのか、アーサー様が私の顔をのぞきこむ。

「たいした手間ではないので」

 格好いい……。
 ついつい見つめ合ってお互い赤くなって目を逸らした。

「……よし、決まり。ルーナの手紙が用意できたらアーサーを呼ぶから、休みの日に届けてくれ。エヴァはその場で返事を用意してくれるかい? そうすれば手間も少ないだろうから」
「はい、わかりました。……アーサー様、よろしくお願いします」

 私の言葉にほんの少し微笑んでくれたから、勇気を出す。

「ところで、アーサー様っておいくつですか?」
「私と同い年の十三歳だ。エヴァは十二歳だよね?」

 やっぱり殿下が答える。
 思わず眉をひそめそうになる。
 いけない、いけない。
 アーサー様のことを教えてくださっているんだもの。

「……はい」
「それで、エヴァはまだ婚約してないよね? 侯爵から好きな相手を選んでいいと言われているんだよね?」

 どうしてそんなことを訊くのだろう?
 戸惑いながら、はいと頷く。

「そう、よかったね。アーサーも同じ。婚約してないよ」

 にっこり笑って私とアーサー様を交互に見る。

 えっと、殿下⁉︎
 嬉しい情報だけど、私はどんな顔をしたらいいの⁇

「アーサー、顔、どうにかしろよ……エヴァもか」

 ものすごく見たいのにアーサー様の顔が見れない‼︎
 どんな顔してるの?
しおりを挟む
感想 71

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi(がっち)
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【短編】ちゃんと好きになる前に、終わっただけ

月下花音
恋愛
曖昧な関係を続けていたユウトとの恋は、彼のインスタ投稿によって一方的に終わりを告げた。 泣くのも違う。怒るのも違う。 ただ静かに消えよう。 そう決意してトーク履歴を消そうとした瞬間、指が滑った。 画面に表示されたのは、間の抜けたクマのスタンプ。 相手に気付かれた? 見られた? 「未練ある」って思われる!? 恐怖でブロックボタンを連打した夜。 カモメのフンより、失恋より、最後の誤爆が一番のトラウマになった女子大生の叫び。

もう何も信じられない

ミカン♬
恋愛
ウェンディは同じ学年の恋人がいる。彼は伯爵令息のエドアルト。1年生の時に学園の図書室で出会って二人は友達になり、仲を育んで恋人に発展し今は卒業後の婚約を待っていた。 ウェンディは平民なのでエドアルトの家からは反対されていたが、卒業して互いに気持ちが変わらなければ婚約を認めると約束されたのだ。 その彼が他の令嬢に恋をしてしまったようだ。彼女はソーニア様。ウェンディよりも遥かに可憐で天使のような男爵令嬢。 「すまないけど、今だけ自由にさせてくれないか」 あんなに愛を囁いてくれたのに、もう彼の全てが信じられなくなった。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

処理中です...