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9 姫様の婚約者?
しおりを挟む「姫様、おひさしぶりです」
アーサー様が抱き上げて、同じ目線の高さで微笑み合う。
「なんてこと……」
私の呟きに殿下が何が、って訊く。
「二人は恋人同士で、婚約者でしたのね……」
殿下が突然お茶を吹き出した。
何か変なところに入ったのかな?
完璧な王子様だって、そういうこともあるよね、私は笑わない。
こっちのほうが人間らしいかも。
無表情でハンカチを差し出す。
「……大丈夫ですか?」
「……っ、……大丈夫だ。むしろエヴァ。君のほうが……いや、なんでもない。ハンカチは結構だ」
そう言って胸ポケットからサッと取り出して、口元を拭いた。
侍女がさりげなくお茶やお菓子を交換してくれる。
よかった。
何にも手をつけられないところだった。
せっかくの王族の素敵なお菓子、食べて母様にも報告してあげたいから……今は衝撃の新事実に驚いて食欲がないけど。
一口お茶飲もう。
それから、アーサー様に笑顔で挨拶しよう。
一緒にお茶を飲めるのは今日が最後かもしれないから。
アーサー様と姫様が何か内緒話をしている。
羨ましいな。
ついつい見つめちゃう。
頭の中にアーサー様に住んでもらわないと困るしね。
まぶたの裏にどうやって焼きつけたらいいんだろう?
「エヴァ、見つめすぎだ」
「華麗なる殿下、まぶたの裏に好きな人の姿を焼きつける方法をご存知でしょうか?」
「……どう言う思考回路だ?」
「だって、黄金の殿下。もう二度と会えないかもしれないので」
「さっきから、頭に変な単語ばかりつけるな……まぁ、いい。なぜもう二度と会えないと思う?」
「……二人が想い合っているからです」
初恋は実らないって最近小説で読んだし、父様と母様は規格外、じゃなくて例外らしいから。
「エヴァ、いいことを教えてあげよう」
「まぶたの裏に焼きつける方法ですね? さすがです、壮麗な殿下!」
「いや、違う……二人ともこちらへ」
アーサー様が私に目礼する。
「ごきげんよう、アーサー様」
いつみても格好いい!
姫様を椅子にエスコートした後、私の隣に座った。
向かいに座る殿下が楽しそうに私達を眺めている。
なんで?
「四人しかいないんだ、もっとみんな、気を楽にして」
殿下が色々な話題をふり、始まりはぎこちなかったものの和やかな空気が流れる。
せっかくだもの、楽しんだほうがいい。
お菓子は美味しいし、アーサー様は格好いい。
何度見てもやっぱりすてき。
ちらちら見ちゃう。
姫様も笑顔を向ければ恥ずかしそうに笑ってくれるくらいにはなったかな。
「ねぇ、ルーナ。ルーナは将来誰と結婚したい?」
殿下がいきなりそんなことを言ったから、私は口の中のものをゴクッと飲み込んだ。
「そんなの……もちろん、お父様ですわ!」
え?
どういうこと?
「ごめんなさい。お兄様、アーサー。わたくし、お父様が一番大好きなんです!」
え? ええ??
「うん、ルーナがそういうなら、私はルーナの幸せをいのるよ。なぁ、アーサー?」
「……はい、もちろんです」
え?
アーサー様の恋は破れたの?
お慰めしてあげたい!
「あ、アーサー様! アーサー様はすてきですから、落ち込まないでくださいね!」
殿下がぐっ、と低い音を立てた。
どうしたのかな?
やっぱり王族って普段気を抜けない分、大変なんだな。
そんなことより、不思議そうな顔をするアーサー様をじーっと、みつめる。
お互い見つめ合っていると、アーサー様の顔が赤くなってきた。
血色のいい、アーサー様、すてき!
どんな姿も格好いい!
「エヴァは、アーサーが好きなのね」
姫様が小さく呟いた。
「仲良くなれそうだろう?」
「ええ! よかった!」
兄妹でそんな会話をしているけど、私はどうしたらいいの⁉︎
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