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8 小さな茶会で
しおりを挟む「アーサー様が素敵すぎました!」
私に起こったことは家にも知らせが届いたのだけど、私はみんなに何度も同じ話をした。
「私が怪我をしなかったのは、すべて、アーサー様のおかげです!」
「…………」
父様の唸り声が聞こえた気がして、顔を向けると母様が寄り添って背中を撫でていた。
「……エヴァが怪我をしなくて本当によかったわ」
「はい、またお茶会に呼ばれているので、その時にアーサー様にお礼をしたいと思います!」
私の言葉にローガン兄様が呟いた。
「お礼は言えばいいだけだよ……?」
「そうだよ、エヴァ! お礼にナニカスル必要なんてないんだからね‼︎」
「父様……」
父様とローガン兄様が揃うと本当に騒がしい。
「次の茶会は妹姫様も一緒なんでしょう? 何も心配することはありません」
イーサン兄様の落ち着いた声に、荒ぶっていた二人が大人しくなる。
イーサン兄様ってすごい!
「……その茶会の後すぐに領地に戻るから、みんな心しておくように!」
「……私達もですか? まだ社交シーズンが始まったばかりですが……」
イーサン兄様の困惑をよそに、父様とローガン兄様が盛り上がる。
「俺、いや、私は領地でエヴァを守ります!」
「そうだろう! 私は王都に戻らなくてはならない時もあるから行き来することになるが……イーサンはシーズン中、王都の屋敷を任せたよ」
「……はい」
イーサン兄様が王都に残り、結局私とローガン兄様が領地へ。
父様と母様は行き来することになった。
ローガン兄様は領地で私を何から守るんだろう?
よくわからない。
もともと私は領地で過ごすものだと思っていたけど、アーサー様と会える機会があるなら王都に残ってもいいのかもって、思った。
でもやっぱり王宮は怖い女の子達が集まるから領地の方がいいんだろうな。
次に会う時はアーサー様を心に焼きつけなくちゃ。
「ようこそ、エヴァ。今日は親しい者だけだから気楽にしてくれ」
フィンレー殿下がにっこり笑って迎えてくれた。
今日は非公式だからか、殿下も砕けた雰囲気でちょっとびっくり。
「……お招きくださり、ありがとうございます」
ちょこんと椅子に座った殿下の妹姫、ルーナ様が私をうかがうようにじっと見ている。
確か、八歳でおとなしい性格なのだと聞いたことがある。
人見知りで慎重なのかな?
私の視線に気づいて、殿下が小声で言う。
「……ルーナのことは姫様と呼んでくれ。それ以外返事はしないから。……年の近い友達がいなくてね。今日はいつも通りでかまわないよ」
私が頷くのと同時に姫様が口を開いた。
「お兄様。聞こえております」
苦笑いする殿下の横で、私は自己紹介した。
「はじめまして、姫様。わたくし、エヴァと申します。お会いできて嬉しいです」
小さくこくりと頷く姫様は、とってもとっても愛くるしい。
私にも妹がいたらいいのに!
父様に、妹が欲しいってお願いしたら考えてくれるかもしれない。
どうかな? だめかな?
でもローガン兄様みたいな男の子が産まれたら、父様が三人いるみたいな賑やかな家になってしまうかも……?
やっぱりお願いするのはやめた方がいいかな。
「さぁ、エヴァ。ここに座って。そろそろアーサーも来るだろうから」
「アーサーも⁉︎」
姫様がキラキラした目で殿下を見る。
「あぁ。言わなかったか? 美しいレディ二人に、私一人ではもったいないからね。嬉しいかい?」
「はい、とっても! アーサー大好き‼︎」
姫様の無邪気な笑顔に凍りつく。
もしかして、アーサー様と姫様は初恋同士で婚約してる?
だって、今は年の差を感じるけど年頃になったらそんなの気にならないもの。
「……あぁ、来たようだな」
凛々しいアーサー様が侍従に案内されてまっすぐ近づいてくる。
いつ見ても格好いい。
ぽぉっとみつめていると、隣に座っていた姫様がパタパタと走ってアーサー様に抱きついた。
「アーサー! 会いたかった‼︎」
そんな。
二人は恋人同士でもあるの……⁉︎
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