私が好きと言ったら抱きしめるあなたは、好きと言ってくれない。

能登原あめ

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19 誕生日

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 私の誕生日に、アーサー様が黄色のフリージアを抱えてやってきた。

「エヴァ、誕生日おめでとう」

 大きくてがっしりしたアーサー様がお花を持つと、何だかとっても可愛らしい。
 ちょっと恥ずかしそうに私に差し出すから、私は両手でそれを受け取った。

「ありがとうございます。アーサー様」

 甘酸っぱい匂いを思い切り吸い込んで、そっと息を吐いた。
 幸せ。

「……どうして、黄色なんだ? どうして……?」

 後ろで父様がブツブツ言っている。
 
「一番きれいに咲いていたのと、エヴァのための花だと思ったので」

 アーサー様が父様に向けて挨拶してからそう言った。
 黄色のフリージアは無邪気って意味なんだって。

 私って無邪気?
 アーサー様にはそう見えるの?
 今日から成人なのに、子供っぽいかな?

「明日は、赤のフリージアにするのか?」

 母様になだめられながら、父様が訊いた。
 
「いえ。室内の装飾に合わせて……」
「まさか、あなた達は⁉︎」

 父様がいきなり荒ぶった。
 母様が、食事まで庭をみてきたら、って私達に早く行くよう言った。
 
 よくわからないけど、明日私が結婚するのがものすごく寂しいのかもしれない。
 だから、父様あんなに情緒不安定なのかも……。
 隣の領地なんだけど。

 庭に出る前に花を預けて私の部屋に飾るように侍女に頼んだ。

「アーサー様、ごめんなさい……」

 首を傾げて、アーサー様が私を見つめる。

「いや、説明が足りなくてすまない。……赤のフリージアは純潔を意味するから、それを飾らない理由を侯爵は勘違いをしたのかもしれない」

 勘違い?

「ドレスのサイズが変わるようなことをするなって話?」

 私がそう言うと、アーサー様が唸った。
 ちょっと赤くなって私から目を逸らして小声で言う。

「……明日はエヴァのためにちゃんと準備している」
「ありがとうございます。私達のために、ですよね。私、とっても幸せで嬉しい。……今日から大人の仲間入りで、明日にはアーサー様の妻に、なれるんですね」

 言葉に出したらもっと幸せな気持ちがあふれた。
 どうしよう。
 私、今世界一幸せだと思う!

「……エヴァ」

 アーサー様が私を包み込むように抱きしめる。

「好きだ」

 きゅーん。
 私が好きだと言うと、好きって返してくれていた近頃のアーサー様が、今日は初めて先に言ってくれた!
 あぁ、もう、人生で一番幸せな誕生日だわっ。

 だから私もせいいっぱい、腰にしがみつくの!
 好きって気持ちを込めて。

「アーサー様、だいっすきです! 愛しています! ずっと、ずっと、アーサー様だけが好きです」
「……」

 アーサー様がぎゅうっと私を抱きしめ返す。
 熱い。
 アーサー様の体温が上がってる。
 
「アーサー様、すき……」
「黙って」

 でも!
 だって!
 好きがあふれちゃうんだもん。

 


 
 その後すてきなブローチをもらって、アーサー様につけて、って頼んだら震える指で胸元の生地を掴んだ。
 ちょっと不器用な手つきで、なぜか赤くなって汗までかいて。
 私までどうしたらいいかわからなくなったけど、刺さったら怖いから大人しくしていた。

「アーサー様になら、痛くされてもいい、ですよ」

 ちょっとチクッとするくらいなら。
 アーサー様ったらなぜかますます真っ赤になって、額から汗が流れ落ちた。

 一生懸命なアーサー様、格好いい!
 今日は初めてブローチをつけてくれた記念日にもなったわ!
 
「ありがとうございます」
「いや、すまない……」

 アーサー様が謝ることなんて一つもないのに!

 食事会の時には落ち着いた父様がブローチに気づいて褒めてくれた。
 母様は隣で穏やかにほほ笑んでいる。

「ステキダネ、アーサーアリガトウ、エヴァ、ヨカッタナ」

 ちょっと硬かったけど!

 今日は誕生日を祝ってもらって、幸せな一日だった。
 明日はとうとう私達の結婚式!
 

 
 


 
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