私が好きと言ったら抱きしめるあなたは、好きと言ってくれない。

能登原あめ

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その後の二人  

初めての夜を ①

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 晩餐の後、私は一足先に部屋に戻った。
 泣き出した父様を慰めたのが母様ではなく伯爵お義父様なのが意外だったけど、元々お隣同士だし私の結婚後も上手くやっていけそうな気がする。
 最終的には母様が父様を優しく受け止めるのかな。
 
 そんなことを考えながら本日二度目の入浴。
 その後、今夜のための特別な配合だという香油でマッサージを受け、母様に渡された今夜のためのネグリジェに袖を通した。
 結婚後はこういうものを着るらしい。

 でもこれって、本当にネグリジェなのかな?
 何だか布地も少ないし、薄いし、下着も身につけないんだって。
 寝返りをうって、うっかりリボンを踏んだらすぐ脱げちゃうと思うのだけど。
 
 こんなの着たら、アーサー様におかしいと思われない?
 私が知らないだけで、本当にみんな着ているの?

 渡された時にそんなことを母様に訊いたら、すました顔で結婚したらそういうものなのよって言われた。
 こっそり義姉様にも訊いたら、そういうものなのよって同じ答え。

 それから、義姉様はデザートの本がどうのこうのって言っていたけど分からなくて首を傾げたら、何でもないわって。
 
 あのネグリジェ姿で夫婦でデザートを楽しむの?
 なんだか落ち着かなそう。

 母様が、今夜のことはアーサー様に任せておけば大丈夫だから、このネグリジェを着てベッドに座って待っていればいいんだって。
 
「それだけ? そうすれば私のところにも赤ちゃんがやってくる?」

 母様がちょっと困った顔をした。

「そうね、こればかりは授かりものだからすぐかもしれないし、たくさんしてもしばらく先かもだし……」
「何をするの?」

 動物が仲良くするところを見たことがあるか訊かれて、首を横に振った。

 山羊に餌をやろうとしてスカートを食べられそうになったり、猫を撫でようとしてシャーって鳴かれて引っかかれたりして動物が苦手になった。
 それに、追いかけられたら逃げきれないからなるべく近づかないようにしていた。
 
「それなら、想像がつかないわよね……。あのね、エヴァの中に、子種をいただくの……」

 母様がデザートの本を用意すればよかったかしらってつぶやいて。
 こんな時にデザートの話?
 そういえば、義姉様も言っていたような?

 そっか。
 子種って、子どもの種ね!
 栗やクルミも種だもの。
 アーサー様が種を持っていて、私が食べればいいのかな?
 あ、飲みこむってことかも。
 そうしたら、お腹の中で育って大きくなるのね!

「詳しいことは、アーサー様が教えてくださるのね」

 私がそう言うと、母様がほっとした顔を見せた。

「そうよ……私もそうだったから。最初は父様に教えてもらったの。……今度勉強になりそうな本を用意するわね」
「はい。わかりました。母様、教えてくださりありがとうございます」

 そんな会話をしたのが一週間ほど前で。
 今夜のことで勉強になりそうな本はまだ届かなかったのか、母様も忙しくて渡すのを忘れていたのか、私の手元にはないし、あの日のまま頭の中は疑問だらけ。

 でも、アーサー様が知っているんだから、大丈夫!
 大きなベッドの端にちょこんと座って何をするでもなく、夫を待った。
 
 とうとう、私も人妻なのだわ。
 もしかしたら、今夜母親になれるのかもしれない。
 
 アーサー様にたくさん子種をいただかなくちゃ。
 
 






******


 お読みいただきありがとうございます。
 デザートの本というのは、『すれ違わない二人の結婚生活』に出てくる、この世界の貴族女性向けの閨事指南書の一つです。

タイトル『甘いデザート』初級~中級向けの一般的な閨の作法の本。
 
 コメディになり過ぎないようにソフトな甘めのエロを目指しました。私なりに。
 全四話予定です。
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