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その後の二人
初めての夜を ②
しおりを挟むもうちょっと部屋の明かりを落としてもいいかな……。
何も着ていないようなネグリジェだから、アーサー様にジロジロ見られたら恥ずかしい。
テーブルに置かれたろうそくの前に立ち、息を吹きかけようとしたその時。
「エヴァ」
私の部屋とは反対側の扉が静かに開いて、アーサー様がやって来た。
「あ……っ」
すぐにろうそくを吹き消したけど、もしかしてアーサー様に見られちゃった?
母様からベッドで待つように言われていたのに!
「エヴァ?」
アーサー様が近づいてくる気配がする。
固まる私をそっと抱きしめて、ふぅっと息を吐いた。
「怖がるな」
そう言われて私はゆっくり顔を上げる。
これだけ近づいたら、アーサー様が私の顔を探るように見ているのがわかった。
「アーサー様のこと、怖いと思ったことなんてありません。……ただ、この格好が恥ずかしくて……見ちゃいまし」
「見てない」
私が言い終わる前に、答える。
ぎゅうぎゅう抱きしめてきて、お耳が真っ赤だけど……気のせいかな。
「……それなら、よかったです」
「エヴァ、移動する」
「はい」
ひょいっと私を縦に持ち上げてベッドに向かう。
アーサー様も薄手のガウンを羽織っているだけで、お風呂上がりだしいつもより体温が高いみたい。
筋肉に包まれて、私とは全然違うんだなって思ったら、何だかとっても恥ずかしくなってきた。
どんどん鼓動が速くなって、顔が熱くなる。
「アーサー様」
ぎゅっとしがみついて、確かめるように名前を呼ぶ。
アーサー様の匂いをかいだら落ち着くかも?
すんすんしたら、石けんのいい匂いがして幸せで。
でもアーサー様の首まで真っ赤になっちゃった。
「エヴァ」
ベッドに腰かけたアーサー様の膝の上に横座りさせられる。
膝の上に乗るのは二度目だけど、ほとんど素肌で触れ合っているみたいでどうしたらいいかわからない。
私の瞳をのぞき込み、一呼吸置いてからアーサー様が口を開いた。
「キスしていいか?」
「はい」
私が目を閉じると、昼間みたいに柔らかく触れる。
アーサー様が何度も何度も唇を重ねるからなんだか心地いい。
ただ唇をくっつけているだけなのに。
「……アーサー様……幸せ……っ」
そう言ったら唇の内側をそっと舐められた。
驚いて体をそらした私を、なだめるように背中を撫でる。
でもそれはなんだか逃げられなくされているようで。
「エヴァ、もう一度」
アーサー様が私の唇を喰む。
温かく湿った感覚にびっくりしたけど、好きかも。
もしかして、こうして子種をいただくのかな?
「エヴァ、今夜のことは何と訊いている?」
「全部、アーサー様が知っているから、お任せすれば大丈夫だって、母様が……」
アーサー様が何度か瞬いてから、私の顔をのぞき込んで大きく頷いた。
「……そうか。……今夜は、すべて任せて欲しい」
「はい、アーサー様。……私にたくさん子種を下さいね!」
アーサー様が喉の奥で変な音を立てる。
薄暗闇の中でもわかるくらい、アーサー様の瞳の色が深くなって、瞳の奥に見たことのない感情が浮かんでいる。
「アーサー様?」
「……あぁ、エヴァ」
あまり、煽らないでくれ。
アーサー様がそうささやいて私の顔中に口づけを落とした。
煽るって何を?
「ふふっ、くすぐったい、です……」
まぶたの上にまで唇が触れて、笑い声を漏らした私の唇を再びついばむ。
「かわいいな。早く、食べてしまいたい」
「食べるのは私のほうじゃないの、ですか……?」
一瞬で顔を赤くしたアーサー様の唇が深く重なり、舌が口の中に忍び込んだ。
「……!」
驚いて目を見開く私の後頭部をガッチリと押さえる。
アーサー様はそんな私にふっ、と笑って息して、って声をかけてから再度深く唇を重ねた。
アーサー様の今の顔、格好いい。
私の舌にアーサー様のそれが触れ、誘いかけるように絡みつく。
どうやって息を吸うか、やっぱりよくわからなくて、抗議するように声を漏らすと、もっともっと口づけが深くなる。
どうして?
口の中が熱いし、上顎をなぶられた時には腰のあたりがぞわりとした。
「アーサー、さまっ……」
長い長い口づけに、私は浅く呼吸してしがみつくことしかできなくて。
力の抜けた体をアーサー様に預けた。
「エヴァの瞳は……紫が混じるのだな。普段は青いのに、今は……」
感情が高ぶると、いつもは青い私の瞳は紫が混じるんだってみんなが言っていた。
アーサー様と触れ合って、これまで感じたことのない気分なの。
ずっと抱きしめていてほしい。
「アーサー様、大好きです」
「俺も好きだ。……エヴァ、いくらだって子種を授ける」
それから二人でベッドに横になり、アーサー様が私におおいかぶさった。
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