21 / 29
その後の話
1 新婚旅行へ
しおりを挟む結婚式の後、ぼく達は海辺の街へ。
ぼくが海を見たことがないって言ったから、ロイクさんが計画を立ててくれた。
「ロイクさん! 海って、海って水が動いてます!」
「あれは波だな……近づいてみるか?」
「はいっ! わ、わわっ」
砂に足をとられてよろけると、ロイクさんが腰を支えてくれた。
「ありがとうございます!」
「砂浜も初めてか……」
「はいっ! ぼく初めてのことがいっぱいで! ロイクさんと一緒にいるといろんなことが経験できて楽しいです!」
「……そうか、よかった」
なぜかロイクさんの耳が赤くなっていて、じーっと見てしまう。
背が高いからお日様が近くて熱くなっちゃったのかも。
「ロイクさん、暑いですか? どこか木陰で休みましょうか?」
「いや、大丈夫だ。……足を海水につけることもできるぞ」
「やってみたいです! ロイクさんも一緒に!」
靴を脱いで、砂浜に足をつく。
「熱いっ、ロイクさん、足の裏がっ!」
砂の熱さに驚いてぴょこぴょこ足踏みしていると、靴を脱いだロイクさんがぼくをひょいっと抱き上げてくれた。
ぼく女の人としては小さくないんだけど、ロイクさんの腕にお尻を乗せてもぐらぐらしなくて安定してる。
上から見下ろすと、穏やかな顔で笑っているからぴとっとくっついた。
ぼくの旦那様って優しすぎる。
「……大丈夫か?」
「はい。ロイクさんは……?」
「このくらいどうってことはない。このまま連れて行くがいいか?」
「はい、そっと下ろしてくださいね!」
海の中に入ったロイクさんにぎゅっと掴まってそろそろと足を下ろす。
ぼくの足首が完全に隠れるくらいの深さだけど、波が動くたびに足の裏の砂が動いて体も引っ張られそうになった。
「ロイクさんっ、転びそうっ!」
ぼくが叫ぶとしっかり腰を抱いてくれて海の中に倒れずにすんだ。
海って、砂浜って、生きているみたい!
「もう少し深くまで入ってみるか?」
ロイクさんは膝までのハーフパンツだからか笑いながら誘ってくる。
「濡れちゃうからだめです! これ以上濡れたらロイクさんのせいですよ!」
「…………、す、スカートを少し持ち上げて押さえれば大丈夫なんだが……」
波がさっきより勢いよくはねて、ふくらはぎを濡らしている。
旅行の間はロイクさんが用意してくれた可愛いワンピースばかりだから汚したくない。
いつもの服だったらもっと自由にできたけど。
「ロイクさん、ここって夜に来たら危ないですか?」
「海へ? 一緒なら大丈夫だと思うが……」
「暗くなっていたら、服を脱いじゃえば海に入れるかなって……」
ロイクさんが何か考え込むような顔をするから慌てて話す。
「あっちのほうでほら、子ども達が楽しそうに水をかけあっているからぼくもロイクさんと遊んでみたいです」
小さな子ども達が両親に見守られながらキャッキャッて楽しそうに笑っていた。
山には池があったけど、ばあちゃんに危ないから入るなって言われていたから釣りしかしたことがない。
「……暗いと間違って岩や貝殻を踏むかもしれないし、毒を持った魚に刺されるかもしれないからやめたほうがいい」
残念……。
でもロイクさんが言うなら仕方ないなぁ。
「じゃあ、ぼく達の子どもが海で遊びたくなるまでお預けですね。その時は子どもと一緒に海に入りましょう! 想像したらすごく楽しそうです」
「……う、ウム。そうだな。それなら早く叶えないと……」
ロイクさんがモゴモゴなにか言っていたけど、ぼくはスカートのすそが気になって仕方ない。
「ロイクさん、海はまた今度にしましょう」
頷いたロイクさんが、ぼくを抱き上げる。
「ロイクさんが濡れちゃいますよ!」
「これくらい大丈夫だ。それに、砂浜は熱いからこのまま行くぞ」
ロイクさんは二人分の靴を持って波打ち際を歩き出した。
「海って大きいんですね。反対側が全然見えないです」
潮の匂いも波の音も、こうしてロイクさんに運んでもらうのも全部海に関することはいい思い出になりそう!
「次の休みはジョゼの山へ行くつもりだが、また長い休みがとれたら、海の向こう側へ出かけよう」
「はい、ぜひ! ロイクさんと一緒にいると毎日が楽しいです……大好き!」
ぼくは笑顔を浮かべるロイクさんの首にぎゅっと抱きついた。
1
あなたにおすすめの小説
私、異世界で獣人になりました!
星宮歌
恋愛
昔から、人とは違うことを自覚していた。
人としておかしいと思えるほどの身体能力。
視力も聴力も嗅覚も、人間とは思えないほどのもの。
早く、早くといつだって体を動かしたくて仕方のない日々。
ただ、だからこそ、私は異端として、家族からも、他の人達からも嫌われていた。
『化け物』という言葉だけが、私を指す呼び名。本当の名前なんて、一度だって呼ばれた記憶はない。
妹が居て、弟が居て……しかし、彼らと私が、まともに話したことは一度もない。
父親や母親という存在は、衣食住さえ与えておけば、後は何もしないで無視すれば良いとでも思ったのか、昔、罵られた記憶以外で話した記憶はない。
どこに行っても、異端を見る目、目、目。孤独で、安らぎなどどこにもないその世界で、私は、ある日、原因不明の病に陥った。
『動きたい、走りたい』
それなのに、皆、安静にするようにとしか言わない。それが、私を拘束する口実でもあったから。
『外に、出たい……』
病院という名の牢獄。どんなにもがいても、そこから抜け出すことは許されない。
私が苦しんでいても、誰も手を差し伸べてはくれない。
『助、けて……』
救いを求めながら、病に侵された体は衰弱して、そのまま……………。
「ほぎゃあ、おぎゃあっ」
目が覚めると、私は、赤子になっていた。しかも……。
「まぁ、可愛らしい豹の獣人ですわねぇ」
聞いたことのないはずの言葉で告げられた内容。
どうやら私は、異世界に転生したらしかった。
以前、片翼シリーズとして書いていたその設定を、ある程度取り入れながら、ちょっと違う世界を書いております。
言うなれば、『新片翼シリーズ』です。
それでは、どうぞ!
番が逃げました、ただ今修羅場中〜羊獣人リノの執着と婚約破壊劇〜
く〜いっ
恋愛
「私の本当の番は、 君だ!」 今まさに、 結婚式が始まろうとしていた
静まり返った会場に響くフォン・ガラッド・ミナ公爵令息の宣言。
壇上から真っ直ぐ指差す先にいたのは、わたくしの義弟リノ。
「わたくし、結婚式の直前で振られたの?」
番の勘違いから始まった甘く狂気が混じる物語り。でもギャグ強め。
狼獣人の令嬢クラリーチェは、幼い頃に家族から捨てられた羊獣人の
少年リノを弟として家に連れ帰る。
天然でツンデレなクラリーチェと、こじらせヤンデレなリノ。
夢見がち勘違い男のガラッド(当て馬)が主な登場人物。
獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。
真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。
狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。
私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。
なんとか生きてる。
でも、この世界で、私は最低辺の弱者。
婚約破棄された夜、最強魔導師に「番」だと告げられました
有賀冬馬
恋愛
学院の祝宴で告げられた、無慈悲な婚約破棄。
魔力が弱い私には、価値がないという現実。
泣きながら逃げた先で、私は古代の遺跡に迷い込む。
そこで目覚めた彼は、私を見て言った。
「やっと見つけた。私の番よ」
彼の前でだけ、私の魔力は輝く。
奪われた尊厳、歪められた運命。
すべてを取り戻した先にあるのは……
ただの新米騎士なのに、竜王陛下から妃として所望されています
柳葉うら
恋愛
北の砦で新米騎士をしているウェンディの相棒は美しい雄の黒竜のオブシディアン。
領主のアデルバートから譲り受けたその竜はウェンディを主人として認めておらず、背中に乗せてくれない。
しかしある日、砦に現れた刺客からオブシディアンを守ったウェンディは、武器に使われていた毒で生死を彷徨う。
幸にも目覚めたウェンディの前に現れたのは――竜王を名乗る美丈夫だった。
「命をかけ、勇気を振り絞って助けてくれたあなたを妃として迎える」
「お、畏れ多いので結構です!」
「それではあなたの忠実なしもべとして仕えよう」
「もっと重い提案がきた?!」
果たしてウェンディは竜王の求婚を断れるだろうか(※断れません。溺愛されて押されます)。
さくっとお読みいただけますと嬉しいです。
こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果
てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。
とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。
「とりあえずブラッシングさせてくれません?」
毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。
そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。
※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。
ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~
cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。
同棲はかれこれもう7年目。
お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。
合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。
焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。
何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。
美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。
私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな?
そしてわたしの30歳の誕生日。
「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」
「なに言ってるの?」
優しかったはずの隼人が豹変。
「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」
彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。
「絶対に逃がさないよ?」
【完結】2番目の番とどうぞお幸せに〜聖女は竜人に溺愛される〜
雨香
恋愛
美しく優しい狼獣人の彼に自分とは違うもう一人の番が現れる。
彼と同じ獣人である彼女は、自ら身を引くと言う。
自ら身を引くと言ってくれた2番目の番に心を砕く狼の彼。
「辛い選択をさせてしまった彼女の最後の願いを叶えてやりたい。彼女は、私との思い出が欲しいそうだ」
異世界に召喚されて狼獣人の番になった主人公の溺愛逆ハーレム風話です。
異世界激甘溺愛ばなしをお楽しみいただければ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる