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雪女、vs“RIN”
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ローグ先生が一連の事件の黒幕であるようだった。ユキは鈴子のおかげで、それを見抜くことが出来た。
…だが、分からないことが山ほどあった。
「…リンはどこに
いるんですか…?」
ユキはもうローグのことを先生とは思っていなかった。だが、態度を一変させると会話がこじれるかもしれない。
ユキは今すぐにでもローグの顔面を氷の拳でぶん殴ってやりたかったが、それを堪え、平静を保ちつつ、自分の聞きたいことを聞き出そうと思っていた。
「ユキさんはリンさんを
付けてきたんですよね?」
「ならここのどこかに
いますよ…。」
ローグは薄い笑顔を浮かべながら適当なことを言っている。なら、こいつをぶっ飛ばした後で自力で探し出せばいい…。ユキはそう思い、質問を変える。
「…リンに何を
したんですか…?」
正直、この質問はしたくなかった。聞きたくなかった。絶対ロクなことはされていない…。だが、自分がしっかり聞かなければならないと思った。
事情を全て把握し、リンを助けた後に、しっかり心のケアをしたいと思っていた…。
「そうですねぇ…。」
「…多すぎて少し
長くなるのですが、
よろしいでしょうか?」
ユキは鳥肌が立った。なんなんだこの男は…。何を言っているんだ…?寒さに震えたことのないユキが、寒気で体が震えていた…。
「まず、私は
とある目的で、
Sランクの学生を
集めていたのですが、」
「なかなか優秀な
生徒がいなくて…。
困りましたねぇ…。」
「ちゃんと真面目に
お勉強して欲しい
ものです…。」
一つ一つの言葉を個別で拾えば、真面目な教師の言葉に聞こえるような口調で淡々と語るローグ。
「だから少し刺激の
強い体験をしてもらい、
多くを学んで欲しかった
のです…。」
「Aランクの生徒を
Sランクの生徒に
少し指導してもらい、」
「ランクを上げて
もらおうと思ったのです。」
それがあのエレナが襲撃した事件の真相だった。エレナはローグの指示でリンたちを襲撃したのだ。
「なんでエレナさんは
あなたの言うことを
聞いたんですか…?」
「親切に教えて
あげただけですよ。」
「Sランクの人間は
魔物化しやすいと。」
「……えっ!?」
ユキは思わず声を上げてしまう。魔物化!?それは一体どういうことですか!?とローグに聞き返そうとしていた時だった。
「あ~~っ!
すみません…!」
「それは私が作った
嘘の設定でした…!
うっかりしていましたね。」
う、嘘…?ユキはこの男が何を言っているのか訳が分からなかった。
「その嘘を話したらみんな
信じてしまいまして、
純粋な生徒ばかりで
可愛らしいですねぇ。」
「でも念の為、
薬を用意したんですよ。」
「幻覚を見せる薬を。
それを毎晩飲んで
もらいました…!」
「怖かったでしょうねぇ…。
自分の体が魔物化する
幻覚を見せられて…。」
「それで、私の言うことを
聞いてくだされば、
薬を定期的に提供しましょう!
そう約束してあげたのです。」
「リンさんなんかもう
大変でしたね…。
私の前で泣き出して
しまって…。」
「お願いします…っ!
なんでも言うこと
聞きますから…!」
「だから薬をください!って
幻覚薬を必死に欲しがって
可哀想でしたねぇ~!」
ユキは吐き気を催していた…。こいつの話を聞いていると頭が変になりそうだった…。
「私はSランクの力の
研究がしたかったので、
あらゆるデータが
欲しかったんですよぉ。」
「だからSランクの
皆さんの体を
いろいろと調べさせて
もらいたかったのです…!」
「特にリンさんは
なんでも言うことを
聞いてくれると
おっしゃってくれたので、」
「それならばと、
隅々まで調べさせて
もらいましたねぇ。」
「恥ずかしがって
泣いていたので、
少し申し訳なかった
ので…」
『ドカァァァァァンッ!!』
ローグが話し終わる前に、ユキの氷の大剣が地面を抉っていた。ローグはそれをひらりとかわしながらヘラヘラ笑っている。
「ロォーグッ!!」
ユキの髪は逆立ち、口からは冷気が漏れていた。もう怒りが隠せなかった。こいつをぶっ殺す…!そう思っていた。
「おお~怖い怖い…。
ユキさん?人の話は
最後まで聞かないと
駄目だって学校で
習わなかったんですか?」
「あっ。私はそんなことは
教えていませんでしたね!
失礼しましたぁ…。」
ユキは大量の氷のクナイを作る…!それを一斉にローグへ向けて放った…!無数のクナイが次々と岩肌に突き刺さる。
ローグはまるで攻撃を気にしていないかのように、ユキの方に顔を向けたままクナイを全てかわしている。
「ユキさん…。
あなた“妖怪”なんじゃ
ないですか?」
「……ッ!!」
ユキはもうローグの言葉は全て無視するつもりだったが、この世界に転生してから初めて“妖怪”というワードを聞いたので、思わず体が反応してしまう。
「おとぎ話のような
話なんですが、
この世界とは別の
世界には」
「“妖怪”と呼ばれる
魔物のような存在が
いるとかいないとか。」
「だってユキさんの力は
“魔力”ではないじゃ
ないですか?」
「“妖力”なんじゃない
でしょうかねぇ…?」
ユキは初めて自分の力の正体が分かったかもしれない…。“妖力”、それが自分の力の真実…。
…だが、今のユキには魔力だろうが妖力だろうがなんでも良かった。ローグをぶちのめせる力ならなんでも良かったのだ。…しかし。
ユキは殺すつもりでローグを攻撃し続けていたが、ぶちのめすどころか、ローグはいとも簡単にそれを全てかわしていた…。
(なんなんだこいつは…!?)
何もかも不気味な男。ローグ・マグワイアに、ユキは恐れを抱き始めていた…。だが、リンはこいつに脅され、利用され、…辱めを受けたのだ。
関係ない。殺す。私がリンの分も殺す。今のユキは人間であることを辞め、妖怪に戻っていた。
「ユキさんは、
あなたはSランクを
超える力を持つ
素晴らしい逸材です。」
「…せっかくリンさんに
協力してもらったんです。
この子の相手をして
もらいましょうか…。」
すると、ローグは懐から紫の魔石を取り出すと、魔力を込め輝かせた。ユキはあの魔石があんなに強く発光しているのを見たことがなかった。…ローグの魔力の高さを伺わせた。
『ウオオオオオンッ!!』
どこからか、魔物と人間の少女の声が混ざったような声が響いてくる…。ユキは嫌な予感がした。ここに入る前からずっと感じていた“気配”はこれなのかと思った…。
『バグァァァンッ!!』
空洞の中の鉄の扉のひとつが粉々に破壊され、砂埃を撒き散らしている。…煙幕が晴れていく。
『シュウウウアアア…。』
ユキは体の震えが止まらなかった…。こんなに恐ろしい物をユキは見たことがなかった。
ユキの前には、“裸のリンの姿を持つ魔物”が浮遊していた。全身ライトグリーンの人間離れした見た目をしているが、その体型はスラッとしたスタイルの良いリンの体そのものだった…。
ユキは胃からこみ上げてしまう物を必死で飲み込む…。こんな物を作るためにリンは心を壊されたのか…!!悔しくて涙もこみ上げてきてしまう。
「美しいでしょう…?
リンさんの魔力を元に
作った私の自信作…。
人工魔物“RIN”です。」
ローグは左手の魔石にRINが気を取られているのを良いことに、右手であちこち好き放題に触りまくっている…。ユキの神経を逆撫でするのを楽しんでいるかのようだった。
「……ッ!!」
ユキはローグとRINをまとめて叩き潰すつもりで氷のハンマーを振りかぶる…!
『パシッ。』
「…くっ!?」
RINはそれを片手で受け止める。そのままハンマーごとユキを岩肌に叩き付けた…!
「がはっ…!!」
『エアルフェイト。』
人工魔物からリンの声が発せられると、右手に風の剣を形成していた。リンの魔法だ…。ユキは急いで氷の剣を作り上げる…!
『バキィン…ッ!!』
「……うぅっ!!」
風の剣と氷の剣がぶつかり合い火花を散らす。ユキはリンと戦っているような気持ちになり心が折れそうになる。
(こいつはリンじゃない…ッ!!
しっかりしろ私ッ…!!)
剣と剣のぶつかり合いが続く。ローグはそれを観察するかのような目で、岩肌に寄り掛かりながら眺めている。
RINは風の剣を構えたまま空中で回転を始める。凄まじい速さの回転でRINの姿は竜巻に変化する。
「……っ!!」
『ビュオオオオオッ!!』
暴風の音を轟かせながら、RINはそのままユキに突撃する。激しい衝撃を剣で受け止めながら、ユキは足に力を込め必死に踏ん張っている…!
「うぅっ…!!」
このままでは持ち堪えられない…!そう判断したユキは剣を傾け、竜巻の軌道を逸した。
「うああああッ!!」
ユキの肩に少し竜巻が触れてしまい、斬り裂かれていた。血がポタポタと滴り落ちる。…ユキが戦闘で負傷したのはこれが初めてだった。
「い…痛いッ…うぅッ…!」
慣れていない痛みの感覚にユキの心は一気に弱る。そんなことはお構いなしにRINはユキに襲い掛かる。ユキはなんとか剣で応戦するが、このままではやられるのは時間の問題だった。
(約束したじゃないかッ!!)
(絶対帰るから
心配しないでってッ!!)
(約束を破るのか…!?
ふざけるな私…ッ!!)
ユキは自分にキレる。モエに誓った約束を破りそうになっている自分にブチギレた。
RINがユキの頭上から勢いよく剣を振り下ろしながら急降下してきた。
ユキはRINを睨み付ける。そして威嚇する。
「殺すぞ…。」
ユキは手のひらから冷気を大量に放出する。それを鋭く尖らせ大きな槍を作った。
『ズドンッ!!』
『ギャアアアアアアッ!!』
リンと魔物が混ざった声で絶叫するRIN。大きな槍は彼女の体を貫いていた。…そのままRINは消滅してしまった。
「ハァッ…ハァッ…。」
ユキはもう心身共にボロボロだった…。ここまで消耗した戦いは初めてだった…。
『ぱちぱちぱちぱち。』
拍手が聞こえた。ローグだ。自信作とのたまっていたRINを倒されたというのに、何も感じていないかのような態度だった。
「やれやれ…。
やられてしまい
ましたね…。」
「失敗作ですね。あれ。」
ユキはもう怒る気力も失せていた…。
…だが、分からないことが山ほどあった。
「…リンはどこに
いるんですか…?」
ユキはもうローグのことを先生とは思っていなかった。だが、態度を一変させると会話がこじれるかもしれない。
ユキは今すぐにでもローグの顔面を氷の拳でぶん殴ってやりたかったが、それを堪え、平静を保ちつつ、自分の聞きたいことを聞き出そうと思っていた。
「ユキさんはリンさんを
付けてきたんですよね?」
「ならここのどこかに
いますよ…。」
ローグは薄い笑顔を浮かべながら適当なことを言っている。なら、こいつをぶっ飛ばした後で自力で探し出せばいい…。ユキはそう思い、質問を変える。
「…リンに何を
したんですか…?」
正直、この質問はしたくなかった。聞きたくなかった。絶対ロクなことはされていない…。だが、自分がしっかり聞かなければならないと思った。
事情を全て把握し、リンを助けた後に、しっかり心のケアをしたいと思っていた…。
「そうですねぇ…。」
「…多すぎて少し
長くなるのですが、
よろしいでしょうか?」
ユキは鳥肌が立った。なんなんだこの男は…。何を言っているんだ…?寒さに震えたことのないユキが、寒気で体が震えていた…。
「まず、私は
とある目的で、
Sランクの学生を
集めていたのですが、」
「なかなか優秀な
生徒がいなくて…。
困りましたねぇ…。」
「ちゃんと真面目に
お勉強して欲しい
ものです…。」
一つ一つの言葉を個別で拾えば、真面目な教師の言葉に聞こえるような口調で淡々と語るローグ。
「だから少し刺激の
強い体験をしてもらい、
多くを学んで欲しかった
のです…。」
「Aランクの生徒を
Sランクの生徒に
少し指導してもらい、」
「ランクを上げて
もらおうと思ったのです。」
それがあのエレナが襲撃した事件の真相だった。エレナはローグの指示でリンたちを襲撃したのだ。
「なんでエレナさんは
あなたの言うことを
聞いたんですか…?」
「親切に教えて
あげただけですよ。」
「Sランクの人間は
魔物化しやすいと。」
「……えっ!?」
ユキは思わず声を上げてしまう。魔物化!?それは一体どういうことですか!?とローグに聞き返そうとしていた時だった。
「あ~~っ!
すみません…!」
「それは私が作った
嘘の設定でした…!
うっかりしていましたね。」
う、嘘…?ユキはこの男が何を言っているのか訳が分からなかった。
「その嘘を話したらみんな
信じてしまいまして、
純粋な生徒ばかりで
可愛らしいですねぇ。」
「でも念の為、
薬を用意したんですよ。」
「幻覚を見せる薬を。
それを毎晩飲んで
もらいました…!」
「怖かったでしょうねぇ…。
自分の体が魔物化する
幻覚を見せられて…。」
「それで、私の言うことを
聞いてくだされば、
薬を定期的に提供しましょう!
そう約束してあげたのです。」
「リンさんなんかもう
大変でしたね…。
私の前で泣き出して
しまって…。」
「お願いします…っ!
なんでも言うこと
聞きますから…!」
「だから薬をください!って
幻覚薬を必死に欲しがって
可哀想でしたねぇ~!」
ユキは吐き気を催していた…。こいつの話を聞いていると頭が変になりそうだった…。
「私はSランクの力の
研究がしたかったので、
あらゆるデータが
欲しかったんですよぉ。」
「だからSランクの
皆さんの体を
いろいろと調べさせて
もらいたかったのです…!」
「特にリンさんは
なんでも言うことを
聞いてくれると
おっしゃってくれたので、」
「それならばと、
隅々まで調べさせて
もらいましたねぇ。」
「恥ずかしがって
泣いていたので、
少し申し訳なかった
ので…」
『ドカァァァァァンッ!!』
ローグが話し終わる前に、ユキの氷の大剣が地面を抉っていた。ローグはそれをひらりとかわしながらヘラヘラ笑っている。
「ロォーグッ!!」
ユキの髪は逆立ち、口からは冷気が漏れていた。もう怒りが隠せなかった。こいつをぶっ殺す…!そう思っていた。
「おお~怖い怖い…。
ユキさん?人の話は
最後まで聞かないと
駄目だって学校で
習わなかったんですか?」
「あっ。私はそんなことは
教えていませんでしたね!
失礼しましたぁ…。」
ユキは大量の氷のクナイを作る…!それを一斉にローグへ向けて放った…!無数のクナイが次々と岩肌に突き刺さる。
ローグはまるで攻撃を気にしていないかのように、ユキの方に顔を向けたままクナイを全てかわしている。
「ユキさん…。
あなた“妖怪”なんじゃ
ないですか?」
「……ッ!!」
ユキはもうローグの言葉は全て無視するつもりだったが、この世界に転生してから初めて“妖怪”というワードを聞いたので、思わず体が反応してしまう。
「おとぎ話のような
話なんですが、
この世界とは別の
世界には」
「“妖怪”と呼ばれる
魔物のような存在が
いるとかいないとか。」
「だってユキさんの力は
“魔力”ではないじゃ
ないですか?」
「“妖力”なんじゃない
でしょうかねぇ…?」
ユキは初めて自分の力の正体が分かったかもしれない…。“妖力”、それが自分の力の真実…。
…だが、今のユキには魔力だろうが妖力だろうがなんでも良かった。ローグをぶちのめせる力ならなんでも良かったのだ。…しかし。
ユキは殺すつもりでローグを攻撃し続けていたが、ぶちのめすどころか、ローグはいとも簡単にそれを全てかわしていた…。
(なんなんだこいつは…!?)
何もかも不気味な男。ローグ・マグワイアに、ユキは恐れを抱き始めていた…。だが、リンはこいつに脅され、利用され、…辱めを受けたのだ。
関係ない。殺す。私がリンの分も殺す。今のユキは人間であることを辞め、妖怪に戻っていた。
「ユキさんは、
あなたはSランクを
超える力を持つ
素晴らしい逸材です。」
「…せっかくリンさんに
協力してもらったんです。
この子の相手をして
もらいましょうか…。」
すると、ローグは懐から紫の魔石を取り出すと、魔力を込め輝かせた。ユキはあの魔石があんなに強く発光しているのを見たことがなかった。…ローグの魔力の高さを伺わせた。
『ウオオオオオンッ!!』
どこからか、魔物と人間の少女の声が混ざったような声が響いてくる…。ユキは嫌な予感がした。ここに入る前からずっと感じていた“気配”はこれなのかと思った…。
『バグァァァンッ!!』
空洞の中の鉄の扉のひとつが粉々に破壊され、砂埃を撒き散らしている。…煙幕が晴れていく。
『シュウウウアアア…。』
ユキは体の震えが止まらなかった…。こんなに恐ろしい物をユキは見たことがなかった。
ユキの前には、“裸のリンの姿を持つ魔物”が浮遊していた。全身ライトグリーンの人間離れした見た目をしているが、その体型はスラッとしたスタイルの良いリンの体そのものだった…。
ユキは胃からこみ上げてしまう物を必死で飲み込む…。こんな物を作るためにリンは心を壊されたのか…!!悔しくて涙もこみ上げてきてしまう。
「美しいでしょう…?
リンさんの魔力を元に
作った私の自信作…。
人工魔物“RIN”です。」
ローグは左手の魔石にRINが気を取られているのを良いことに、右手であちこち好き放題に触りまくっている…。ユキの神経を逆撫でするのを楽しんでいるかのようだった。
「……ッ!!」
ユキはローグとRINをまとめて叩き潰すつもりで氷のハンマーを振りかぶる…!
『パシッ。』
「…くっ!?」
RINはそれを片手で受け止める。そのままハンマーごとユキを岩肌に叩き付けた…!
「がはっ…!!」
『エアルフェイト。』
人工魔物からリンの声が発せられると、右手に風の剣を形成していた。リンの魔法だ…。ユキは急いで氷の剣を作り上げる…!
『バキィン…ッ!!』
「……うぅっ!!」
風の剣と氷の剣がぶつかり合い火花を散らす。ユキはリンと戦っているような気持ちになり心が折れそうになる。
(こいつはリンじゃない…ッ!!
しっかりしろ私ッ…!!)
剣と剣のぶつかり合いが続く。ローグはそれを観察するかのような目で、岩肌に寄り掛かりながら眺めている。
RINは風の剣を構えたまま空中で回転を始める。凄まじい速さの回転でRINの姿は竜巻に変化する。
「……っ!!」
『ビュオオオオオッ!!』
暴風の音を轟かせながら、RINはそのままユキに突撃する。激しい衝撃を剣で受け止めながら、ユキは足に力を込め必死に踏ん張っている…!
「うぅっ…!!」
このままでは持ち堪えられない…!そう判断したユキは剣を傾け、竜巻の軌道を逸した。
「うああああッ!!」
ユキの肩に少し竜巻が触れてしまい、斬り裂かれていた。血がポタポタと滴り落ちる。…ユキが戦闘で負傷したのはこれが初めてだった。
「い…痛いッ…うぅッ…!」
慣れていない痛みの感覚にユキの心は一気に弱る。そんなことはお構いなしにRINはユキに襲い掛かる。ユキはなんとか剣で応戦するが、このままではやられるのは時間の問題だった。
(約束したじゃないかッ!!)
(絶対帰るから
心配しないでってッ!!)
(約束を破るのか…!?
ふざけるな私…ッ!!)
ユキは自分にキレる。モエに誓った約束を破りそうになっている自分にブチギレた。
RINがユキの頭上から勢いよく剣を振り下ろしながら急降下してきた。
ユキはRINを睨み付ける。そして威嚇する。
「殺すぞ…。」
ユキは手のひらから冷気を大量に放出する。それを鋭く尖らせ大きな槍を作った。
『ズドンッ!!』
『ギャアアアアアアッ!!』
リンと魔物が混ざった声で絶叫するRIN。大きな槍は彼女の体を貫いていた。…そのままRINは消滅してしまった。
「ハァッ…ハァッ…。」
ユキはもう心身共にボロボロだった…。ここまで消耗した戦いは初めてだった…。
『ぱちぱちぱちぱち。』
拍手が聞こえた。ローグだ。自信作とのたまっていたRINを倒されたというのに、何も感じていないかのような態度だった。
「やれやれ…。
やられてしまい
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「失敗作ですね。あれ。」
ユキはもう怒る気力も失せていた…。
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