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雪女、最後の戦い。
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RINはなんとか倒すことが出来た。しかし、ユキは消耗し切っている上に、強大な魔力を持つであろうローグはまだピンピンしていた。絶望的な状況だった。
「ユキさん。本当に
あなたは素晴らしい…。
その強さSSランクです。」
「いや、それ以上です。」
当たり前だが、ユキはこんな奴に褒められても全く嬉しくなかった。今はどうローグを倒すか…。その方法を必死で組み立てるようとする。
だが、相手は全く手の内を見せていない。下手に攻撃を仕掛ければ返り討ちにされる。ユキは攻撃したいのに攻撃出来ない。
その時だった。
『バチッ。』
稲妻が走る音が聞こえた瞬間、ローグは身を捻って雷を回避した。
「おや。エレナさん。
どうしたんですか?
そんなに怖い顔をして。」
エレナだった。もうローグの操り人形ではない。リン班だった頃のエレナの姿がそこにあった。
「もうお薬は
いらないんですか?」
「…馬鹿に付ける薬でも
作ったらどうですか?」
そう返すとエレナはローグを静かに睨む。ローグは相変わらずヘラヘラと薄気味悪い笑顔を浮かべている。
「サンディラヴァー。」
雷をバチバチと弓に変化させる。そしてさらに。
「エレクション。」
雷で分身を2体作る。本体のエレナを含めた3人による弓矢の一斉掃射。エレナが使えるもっとも強力な魔法がローグを襲う!
凄まじい数の雷の矢がローグに向かって飛んでいく。ローグは両手を前にかざす。
「インヘルト。」
ローグが呪文を唱えると、無数の光の矢が両手に出現した白い渦の中に吸収されていく。
「あれは…。」
ユキは初めて見せるローグの魔法をしっかり観察する。
攻撃を全て吸収し終えたローグは、人差し指に小さな白い球を発生させる。そしてそれをエレナに向けて放つ。
「……ッ!!」
白い球が飛んで来るのは分かっていた。それなのにエレナは反応が遅れてしまった。それほどの速度で球はエレナの元へ飛んで来たのだ。
エレナは2体の分身を自分の前へと操り、ローグの白い球を受けさせる。
『ドパアアアアンッ!!』
「うあッ…!!」
凄まじい爆発が起き、エレナは吹っ飛び岩肌に叩き付けられてしまった。
「エレナ…ッ!!」
ユキはエレナに駆け寄る。意識が朦朧とするエレナは気を失う前にユキに告げる…。
「あ…あれがローグの…。
…魔法…はぁ…。
吸収した力を…はぁ…。
白い球に変えて相手に…
はぁ…返す…。」
「わ、分かった…!
ありがとう…ッ!」
それを伝えるとエレナは微かに微笑みながら意識を失った。エレナはユキのために自ら体を張って、ローグの魔法を伝えたのだ…。
「私の魔法が分かって
良かったですねユキさん。」
「でもだからと言って、
あなたに攻略出来る
んですか?」
「……。」
攻略出来るかどうか、そんなの分からない。だけど、必ずローグを倒す。ユキはそう目で宣言する。
「私が…!!」
「リン班の私が…!!
みんなを助ける…ッ!!」
ユキはさっきまで妖怪として戦おうと思っていた。だが、違う。今の自分は魔法学生のユキだ…!ユキとして、みんなを助けたい。純粋な気持ちに瞳に灯る炎は燃え上がった。
「うおおおおおっ!!」
ユキは大きな氷の壁を作る。それを氷のブーツで蹴り砕き、氷塊の雨でローグを攻撃する。
ユキはエネルギーのような物でなければローグは力を吸収出来ないのではないかと、その可能性に賭けた。
「インヘルト。」
だが、ユキのそんな思惑虚しく、ローグの両手の中に氷塊は全て吸収されていく。ならば、次の手を使う…!
ブーツを解除すると今度はグローブを装着するユキ。そのまま地面を砕く。宙を舞う岩をローグへ殴り飛ばした…!
これは岩だ。魔法ではない。完全なる物理攻撃。さすがに吸収出来ない…!ユキはしてやったりの顔をしていた。
『ズオオオオオオッ!!』
…飲み込まれた。あっさり岩も飲み込まれてしまった。なんでも吸収するローグの魔法にユキは焦り始める。ならば次だ…!
ユキは氷の剣を作る。そのままローグへ斬り掛かる。武器による近距離攻撃。これなら…。
「うっ…!?」
ローグに剣を向けると一気に両手の中へ引き寄せられる。凄まじい引力に、剣を自分の元へ引き戻すことが出来ない…!
ユキは自分までローグの中に吸い込まれてしまうような恐怖を感じ、剣を離してしまった。そのまま氷の剣も吸い込まれていく。
「はぁっ…はぁっ…。」
「おや?もう終わりですか?」
ユキは思い付く限りの戦法でローグに立ち向かうが全て通じない。ユキの表情がこわばる。ローグはまだ白い球を作っていないのだ。
「次は私の番ですね。」
ローグの人差し指に白い球が浮かぶ。ユキは急いで最高強度の壁を作りその後ろに身を隠す。ローグの放った白い球が壁に触れた。
『ボグアアアアアアッ!!』
「うわあああああっ!!」
凄まじい爆発が壁を破壊する。氷の破片がユキの体に突き刺さる。その激しい衝撃で地面に叩き付けられた。
ユキは血塗れになっていた。ダメージは深い。もう立ち上がれる力が残っていない。
目が霞む。ぼんやりとした視界の中には、口を三日月のように尖らせながら笑うローグの姿が映った。
「ユキさん。あなたを
ここで殺すのは惜しい。」
「実験動物として、
飼育してあげますよ。」
「一生。リンさんと一緒に。」
ユキは震える右手の人差し指でローグを指す。ローグはこんな状態でまだ戦うつもりなのかと呆れながらインヘルトを唱えようとしていた。
「フロウ…。」
ユキが魔法を唱えた。その瞬間にはもう小さな風の弾丸はローグの眼鏡を砕き、その破片が右目に突き刺っていた。
「ぎぃああああああッ!!」
ローグは絶叫する。両手で右目を押さえ、激痛でもがいている。その隙にユキは巨大な氷山をローグの上に作った。
「……あ。」
『ドゴオオオオッ!!』
大きな音を立て、氷山はローグを押し潰した。下敷きになったローグは気を失っていた。
勝った。友達を苦しめていた男は倒した。これで、みんな、助かるんだ…。
「う…うぅっ…。」
ユキは倒れたまま涙を零していた。もう一歩も動くことが出来ないユキは、泣くことしか出来なかった。
「ユキさん。本当に
あなたは素晴らしい…。
その強さSSランクです。」
「いや、それ以上です。」
当たり前だが、ユキはこんな奴に褒められても全く嬉しくなかった。今はどうローグを倒すか…。その方法を必死で組み立てるようとする。
だが、相手は全く手の内を見せていない。下手に攻撃を仕掛ければ返り討ちにされる。ユキは攻撃したいのに攻撃出来ない。
その時だった。
『バチッ。』
稲妻が走る音が聞こえた瞬間、ローグは身を捻って雷を回避した。
「おや。エレナさん。
どうしたんですか?
そんなに怖い顔をして。」
エレナだった。もうローグの操り人形ではない。リン班だった頃のエレナの姿がそこにあった。
「もうお薬は
いらないんですか?」
「…馬鹿に付ける薬でも
作ったらどうですか?」
そう返すとエレナはローグを静かに睨む。ローグは相変わらずヘラヘラと薄気味悪い笑顔を浮かべている。
「サンディラヴァー。」
雷をバチバチと弓に変化させる。そしてさらに。
「エレクション。」
雷で分身を2体作る。本体のエレナを含めた3人による弓矢の一斉掃射。エレナが使えるもっとも強力な魔法がローグを襲う!
凄まじい数の雷の矢がローグに向かって飛んでいく。ローグは両手を前にかざす。
「インヘルト。」
ローグが呪文を唱えると、無数の光の矢が両手に出現した白い渦の中に吸収されていく。
「あれは…。」
ユキは初めて見せるローグの魔法をしっかり観察する。
攻撃を全て吸収し終えたローグは、人差し指に小さな白い球を発生させる。そしてそれをエレナに向けて放つ。
「……ッ!!」
白い球が飛んで来るのは分かっていた。それなのにエレナは反応が遅れてしまった。それほどの速度で球はエレナの元へ飛んで来たのだ。
エレナは2体の分身を自分の前へと操り、ローグの白い球を受けさせる。
『ドパアアアアンッ!!』
「うあッ…!!」
凄まじい爆発が起き、エレナは吹っ飛び岩肌に叩き付けられてしまった。
「エレナ…ッ!!」
ユキはエレナに駆け寄る。意識が朦朧とするエレナは気を失う前にユキに告げる…。
「あ…あれがローグの…。
…魔法…はぁ…。
吸収した力を…はぁ…。
白い球に変えて相手に…
はぁ…返す…。」
「わ、分かった…!
ありがとう…ッ!」
それを伝えるとエレナは微かに微笑みながら意識を失った。エレナはユキのために自ら体を張って、ローグの魔法を伝えたのだ…。
「私の魔法が分かって
良かったですねユキさん。」
「でもだからと言って、
あなたに攻略出来る
んですか?」
「……。」
攻略出来るかどうか、そんなの分からない。だけど、必ずローグを倒す。ユキはそう目で宣言する。
「私が…!!」
「リン班の私が…!!
みんなを助ける…ッ!!」
ユキはさっきまで妖怪として戦おうと思っていた。だが、違う。今の自分は魔法学生のユキだ…!ユキとして、みんなを助けたい。純粋な気持ちに瞳に灯る炎は燃え上がった。
「うおおおおおっ!!」
ユキは大きな氷の壁を作る。それを氷のブーツで蹴り砕き、氷塊の雨でローグを攻撃する。
ユキはエネルギーのような物でなければローグは力を吸収出来ないのではないかと、その可能性に賭けた。
「インヘルト。」
だが、ユキのそんな思惑虚しく、ローグの両手の中に氷塊は全て吸収されていく。ならば、次の手を使う…!
ブーツを解除すると今度はグローブを装着するユキ。そのまま地面を砕く。宙を舞う岩をローグへ殴り飛ばした…!
これは岩だ。魔法ではない。完全なる物理攻撃。さすがに吸収出来ない…!ユキはしてやったりの顔をしていた。
『ズオオオオオオッ!!』
…飲み込まれた。あっさり岩も飲み込まれてしまった。なんでも吸収するローグの魔法にユキは焦り始める。ならば次だ…!
ユキは氷の剣を作る。そのままローグへ斬り掛かる。武器による近距離攻撃。これなら…。
「うっ…!?」
ローグに剣を向けると一気に両手の中へ引き寄せられる。凄まじい引力に、剣を自分の元へ引き戻すことが出来ない…!
ユキは自分までローグの中に吸い込まれてしまうような恐怖を感じ、剣を離してしまった。そのまま氷の剣も吸い込まれていく。
「はぁっ…はぁっ…。」
「おや?もう終わりですか?」
ユキは思い付く限りの戦法でローグに立ち向かうが全て通じない。ユキの表情がこわばる。ローグはまだ白い球を作っていないのだ。
「次は私の番ですね。」
ローグの人差し指に白い球が浮かぶ。ユキは急いで最高強度の壁を作りその後ろに身を隠す。ローグの放った白い球が壁に触れた。
『ボグアアアアアアッ!!』
「うわあああああっ!!」
凄まじい爆発が壁を破壊する。氷の破片がユキの体に突き刺さる。その激しい衝撃で地面に叩き付けられた。
ユキは血塗れになっていた。ダメージは深い。もう立ち上がれる力が残っていない。
目が霞む。ぼんやりとした視界の中には、口を三日月のように尖らせながら笑うローグの姿が映った。
「ユキさん。あなたを
ここで殺すのは惜しい。」
「実験動物として、
飼育してあげますよ。」
「一生。リンさんと一緒に。」
ユキは震える右手の人差し指でローグを指す。ローグはこんな状態でまだ戦うつもりなのかと呆れながらインヘルトを唱えようとしていた。
「フロウ…。」
ユキが魔法を唱えた。その瞬間にはもう小さな風の弾丸はローグの眼鏡を砕き、その破片が右目に突き刺っていた。
「ぎぃああああああッ!!」
ローグは絶叫する。両手で右目を押さえ、激痛でもがいている。その隙にユキは巨大な氷山をローグの上に作った。
「……あ。」
『ドゴオオオオッ!!』
大きな音を立て、氷山はローグを押し潰した。下敷きになったローグは気を失っていた。
勝った。友達を苦しめていた男は倒した。これで、みんな、助かるんだ…。
「う…うぅっ…。」
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