紋章最強の転生者はほのぼの生活したい(希望形)

燕上ゆうき(旧名:クゲルブ)

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1章【緑の竜と新しき伝説】

6話─決闘

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 20分かけて学校内を周り終えると、時間はもうすぐ授業が始まるくらいまで時間がたった。

 リュークは急いで教室へ入る。するとちょうどホームルームが始まった。


「…まあギリギリだし大丈夫とするか。全員出席だな?さて、今日から授業が始まるから頑張るように。以上」


 ホームルームはすぐに終わり、授業が始まった。

 だが、授業と言っても先生との顔合わせと自己紹介だけだったわ


 すべての授業が終えてクラスのみんなが帰ろうとした時、リュークにとって思いもよらぬことが起きた。


「まてリューク!」

「……えっと、だれだっけ?」


 リュークの目の前には一人の男が立っている。

 名前思い出せないな…と頭を抱えつつ考えていると、エマがいきなり出てきて説明した。


「カルスだよ、カルス・バールカン。覚えてない?昨日リューク君と言い争いみたいなのしてたじゃん」

「そうだ、カルスだ。どうしたんだ?」

「平民風情が…!……まあいい、今日はこれを渡しに来た!」


 そう言ってカルスは木の小さな板を投げつける。

 それをリュークは回避した。


「かわすな!」

「なんでだよ、当たると痛いじゃん」

「あー、リューク君は校則よんでない?」

「読んでないな…板を投げることがなんの関係があるんだ?」

「入学式に名前代わりに配られた木の板があるでしょ?あれを相手に投げると挑戦状って意味になるんだよ」

「ふーん、そんな意味があったんだ」


 昔のどこかに白い手袋を相手に投げると決闘の申し出の意味を成すところがあったと聞いたことがある。それとおなじことか?


「くれてやる!」


 カルスはかわされた木の板を拾い、再び投げつけた。

 だがリュークは再び回避した。


「回避するな!」

「受けてあげようよ…」

「だって絶対めんどくさいじゃん」

「受けた方がいいよ。クラス内では裏口入学なんじゃないかとか言われてるから実力を見せるいい機会じゃない?」

「たった2日目で裏口入学言われるもんなのか?」


 裏口入学、と噂されているのはBクラス内だけである。

 噂を作ったのはカルスだ。彼がリュークを気に入らないという理由でそのようなデマを作り、噂とした。


 だが、彼はクラス外に親しい人はいないし、カルス以外の人が他のクラスに広めたとしても、その噂のほうがデマと思えるのだ。

 理由としては、歴史が0で算数が100なんて裏口として入学するには、疑ってくださいといっているようなものだ。

 そんなものを証拠もないのに裏口入学だ、など、信じる人は少なかった。

 Bクラス内でも噂となっているだけで、信じては居なかった。カルス以外は。

 リュークは彼の流したこの噂を消すべく、決闘を受けた。




☆☆☆




 その日の放課後、3人は決闘場にいた。

 リューク、カルス、そして彼らの担任であるクルエルだ。


 なぜクルエルがいるのか、それは決闘には担任が審判としていなくてはならないためだ。


「決闘…はぁ……めんどくせぇ」


 そんなことを言いつつ審判をしているクルエル。

 当事者である2人は別々のことを考えていた。


(こいつに勝って、俺が1位に…)


 カルスは入学前、Aクラス並みの実力があると言われていた。

 それはカルスがいままで頑張った事実があったためだ。お膳立てするものにはSクラスではないかと言われたが、彼は自分の実力は知っており、Aクラスは確実だろうが、Sクラスはありえないと思っていた。

 カルスは本当であれば自分で思っている以上の実力者だ。Sクラスはありえないと思っている彼だが昨年であればAクラスの上位、またはSクラスの下位にはついていただろう。


 だが、それは昨年であれば。の話だ。今年は違った。

 今年はかなりの実力者が集まり、彼達にSクラス・Aクラスを独占されている。

 そのため、結果はB。しかもBクラス1位ではない。


 名前から分かる通り、カルスはバールカンの貴族の息子だ。

 貴族の中にはバールカンの家系をよく思ってない人達もいる。彼らからバーンカルのことを「自分の息子はAクラスに行けると自惚れていたバカだ」など言っている者もいる。だがそれは情弱貴族の言い分だ。

 今年のAクラス・Sクラスの生徒にはそれなりの実力者が集まっている。それを知っているものは敵対していたとしても「彼はしょうがなかった」「運が悪かった」などと言われている。


 だが、後者の貴族がカルスのプライドにダメージを与えた。

 しょうがない。運が悪かった。

 俺は今まであんなにも頑張ったのに。なぜそう言われなければならないのだ。

 そう彼は考えていた。


 そのプライドをいくらか回復させるためにも、彼はこの決闘で勝たなければならなかった。



 対するリュークはというと。


(あー、やっべ。明日の夕食用に煮込もうとした肉買うの忘れてた)


 全くどうでもいいことを考えていた。


「それでは、試合始め」


 開始早々、カルスは火の玉をだしてリュークに当てようとする。

 だがリュークは遅い遅いと言いながら軽々と躱していく。


「回避するなぁ!」

「嫌だね誰が当たるか!」


 飛んでくる火の玉をひょいひょいと回避する。


「遅い遅い遅い」


 無駄だと分かったのか、カルスは放つのをやめた


「ならば回避できないものをくれてやる!」


 そして天に手をやった。

 その手の先には火が集まり、段々と大きくなっていく。


「ま、まさか複合魔法!?」


 観客がざわつき始める。


 複合魔法とは、同じ性質を持つ魔法を任意的に合わせたものの総称だ。

 ちなみにだが、強化魔法の重ねがけも複合魔法となる。


 複合魔法が使えれば、魔法使いとしては一人前と言われた時代もあった。それほど重要であり、この学校に入学している人で使える人は少ないだろう。

 普通であれば、合わせれば威力があがるためうろたえたりするのだが、リュークは大して動じない。


 そして3分ほど経ち、カルスは行動に出た。


「くらえぇ!」


 小さな家ほどの大きさまで大きくなった火は、カルスが手を前にすると同時にリュークめがけ飛んでいく。


 そして、リュークに当たると同時に煙を上げた。


「はぁ、はぁ、どう、だ。生意気、してるから、こうなったんだ…先生!俺様の、勝ちです!」







「は?…バカ言え。どこにぶつけたら白い煙の出てくる火があるんだよ」

「………!?」


 すると、白い煙は風を上げて消えた。


「あーああ、期待したのが馬鹿だった」


 そこにはリュークが傷一つなく立っていた。


「なっ!?」


 なぜカルスの魔法を無傷で要られたのか、それは火属性魔法が当たる寸前に自分を氷で覆い、それを盾にしたためだ。

 ぎりぎりまでカルスにバレなかったのがリュークの魔法技術の高さを示している。


「発動までに時間がかかりすぎるし、威力が思ったよりも低すぎる。これは範囲攻撃っぽいけどこんな低火力じゃあ雑な対処で軽い火傷を起こす程度しかないだろ」


 そしてリュークはカルスと同じく、天に手をやった。


「お手本を見せてやる」


 そして、リュークの上にはカルスの倍近くの火の玉が現れた。


「な、、そ、そんなもの、死んでしまうぞ、こ、殺すつもりか!」

「お前知らねぇのか?ここには幻実げんじつ結界が貼られてるんだぞ?てかお前だって殺す気でやっただろ」


 リュークは天にやっている手を握った。

 すると上にある火が小さくなった。


「くらえ!」


 そしてそれをカルスへと放った。


「なぜ小さくしたか意味わからねえがこれぐらい簡単に躱せるぞ」


 カルスは火の玉の着地地点から少し離れたところへ移動。

 そして、火の玉は地面へと衝突──


───刹那──大爆発が起こった。



 カルスと同じ魔法を使ったのになぜ爆発が起きたのか、それはリュークの魔法操作によるものだ。

 魔法操作とは、無詠唱魔法でしかできない技術であり、もう作用の起こった魔法に手を加えて変えるものだ。

 昔にリュークが氷を消したのもこの魔法操作に含まれる。


 彼の魔法操作により、火の塊であったものは圧縮され、ひとつの小さな塊となった。

 圧縮された火は床に残っていたリュークの氷の欠片に当たった。

 その火は氷から大量の水素を吸収。これもリュークの魔法操作により吸収させたのだ。

 そして火は水素と氷に残された酸素との化学反応を起こし爆発。

 地面の砂を巻き上げ、煙が起きた。


「……勝者リューク」


 煙が消えると、そこに立っているのはリュークだけとなっていた。

 カルスは爆発をもろに喰らい、倒れている。


 なぜ爆発を受けたのに倒れるだけで済んだのか、それはリュークが言った幻実げんじつ結界の効果だ。


 この結界を作るには、楔と言われる柱が必要な上、指定できる範囲は狭い。だが、その中で死亡判定までの攻撃を受けると、それが幻のごとくその傷がなくなるというものだ。

 しかも、その結界から出た場合も傷はなくなる上、結界の外から中、または中から外へ攻撃ができないという優れた結界だ。


 こんな有能な結界でも、戦争では使われない。

 使えないわけではない。使えるなら使った方がいいだろう。


 だが、禊を設置するための時間、労働力、そして代償─範囲にもよるが、狭ければ食べ物など。広ければ最悪人の命などを要求される─が必要になる上、結界を発動させるには100人以上の魔道士(魔法使いの最上位の職業。名乗るには国から認められなければならない)が必要なのだ。

 そんな訳あって、この結界は戦争では使われないのだ。


 話を戻すと、つまりカルスは死亡判定の攻撃を受けたことになる。


「…先生、彼はどうすればいいですか?」


 リュークは足元で倒れてるカルスを見てそういった。


「ん?救護班が来るから大丈夫だぞ」

「そうですか、では帰っていいですか?」

「大丈夫だぞ。お疲れ様」


 そしてリュークは寮へと帰っていった。




☆☆☆




 医療室の1つのベッドの上でカルスは横になっていた。

 彼は決闘に負け、ベッドで今の今まで寝ていたのだ。


 起きた時、負けたということは一瞬でわかった。わかったが、なぜという思いが残っていた。


 それはそうだろう。リュークの魔法は躱したはずだ。それなのに俺が気絶し、負けた。なぜ。そう考えるのは必然的といえる。

 爆発はリュークが回避した刹那の間におきたことだ。相当慣れているものでなければ爆発が起きたことなんて理解できるはずがない。


「お?おきたかい?」


 ベッドの横にあるカーテンを開けてそこから出てきたのは、医療室にいる保健医の女性だ。

 女性の平均身長より少し高い彼女は、年齢に見合わない棒付きキャンディを舐めていた。


「…なぜ負けたか、そんなことを考えているね」

「そりゃそうですよ!あいつの魔法は躱したはずだ!なのに俺はこうやって倒れている!なんでだって考えるのは普通だ!」

「リューカだっけ?あれ、リュークだっけ?まあいい。あいつの魔法が地面に付いたと同時に爆発が起こった。あんたはそれを至近距離で受けた。これでいいかい?」

「まさか…爆発魔法!?」


 爆発魔法とは火属性を極めたものが使えるとされている魔法だ。

 リュークのように化学反応を起こして爆発させるのではなく、『爆発』を魔法で創り出すのだ。

 これは未だにリュークは使えない魔法の一つでもある。


「あいつがそんな大層な魔法は使ってないさね。あれは単に火を集めて圧縮しただけさよ」

「火を圧縮…それだけでできるもんなのか!?」

「そんなもんアタイが知っていると?アタイは保健医だし光と水しか使えないから火のことなんさ知ってることなんざお前も知ってることぐらいさよ」

「そう…ですか」


 カルスは立ち上がり、医療室を出ようとした。


「もう大丈夫なんかい?」

「はい、ありがとうございました」

「そうか、まあ頑張りなされ」


 カルスはお辞儀をして部屋を出た。


「…魔法のことはこれっぽっちしか知らないよ。ただ…カルスの攻撃から守るのに氷、圧縮に闇、攻撃に火。3属性も使えるなんて…アタイの知ってる限りじゃ数える限りしか知らないさよ。その知ってるやつも…あんな歳で使えるようになったやつなんさいないさよ」


 そして窓の外を見る。

 窓の外には決闘場が映っていた。


「リューク…お前は何者さよ?」


 そのつぶやきは誰も聞かなかった。
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