紋章最強の転生者はほのぼの生活したい(希望形)

燕上ゆうき(旧名:クゲルブ)

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1章【緑の竜と新しき伝説】

9話─紋章魔法について/クラス長

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「ここをご利用になる場合は使用料がかかります」

「これでいいですか?」

「…はい、ちょうど受け取りました。どうぞご利用ください」


 リュークは今、図書館を訪れていた。


「あの、紋章魔法に関する書物、またはそれが出ている本などはどこにありますか?」

「紋章魔法でしたら魔法欄の7にあります。紋章魔法魔法の作成ですか?」

「…まあそのような感じです」

「最近は新しい紋章魔法が完成されていないらしいので、頑張ってくださいね」

「あ、ありがとうございます」


 リュークは気になることを調べている。

 それは紋章魔法に関連することだ。


 ちなみにだが、ここ数十年は新しい紋章魔法は作られていないらしい・・・

 既に新しい魔法はリュークが作成している。

 既出魔法であれば、最近であれば数ヶ月前に作成に成功した人がいる。

 ただ、リュークを除いてであればの話だが。


「……やはりここにも書かれてない…か…」


 リュークが調べているのは紋章魔法がなぜ作られたか…だ。


「結局、学校にあった書物にしか書かれていなかったか」


 紋章魔法がなぜ作られたか。それが書かれていたのは学校の書庫にある「魔法の起源」という本だった。

 その本にはこう書かれていた。


『紋章魔法──魔法陣は、本来魔法使いそのものを魔法化させる為に開発された』


 魔法化───そうとしか書かれていなかったが、これを読んだ時リュークは寒気がするのを感じた。


(魔法化…つまり人そのものを魔法の媒体として使って魔法を発動するってことだろ?簡単に言えば人を生贄にして魔法を発動するタイプだ…よく今の段階で留まったからいいけど、魔法化のやつが完成されていたらと思うと…)


 そして思考の中でしかもと続ける。


(本来紋章魔法は魔法化を目的としてだから、何かの拍子に魔法化が完成して………いや、それはないか)


 なぜないといいきれるか、それは紋章魔法の開発時期にあった。


(今の形の紋章魔法が1700年前に完成されて、それから今までそんな事があったとは書かれていない…魔法化が完成されてたら何かの記事になってるはずだ)


 リュークは魔法化は未完成ということで結論付けた。

 そうでないと、怖くて紋章魔法が使えなくなるためだ。


「………む?」


 リュークは一つの本を開いた時、手が止まった。


 その本の目次にはこう書かれているところがある。

───紋章魔法。名前の由来。


 これはリュークも気になっていたことだ。


 紋章魔法。これは魔法陣を頭で覚え、その魔法陣を思い出して使う。これは殆どの本で書かれていた。

 だが、名前の由来が書かれている本はなかった。


 紋章。この言葉の意味は団体だったり集団だったりの印だ。クランや各ギルドの旗みたいなもの。それが紋章という意味だ。

 だが、紋章魔法にそのような意味はリュークが知っている限りではない。そのため、なぜ「紋章」という文字を使うのかがわからなかった。


 そして目次に書かれているページまでめくる。


(紋章魔法、その名前の由来には1500年前まで遡る───か)


 1500年前、当時の魔法は現代より遥かに栄えていたとされている。

 この時代に作られた魔法具の一部は未だに解析出来ていないものや用途すら不明な物も多い。

 そしてその魔法具の4割ほどに共通しているもの。それは魔法陣がある。ということだ。

 しかも、その魔法陣は設置や儀式のために使う魔法陣ではなく、紋章魔法のような魔法陣の形をしている。

 そして、一部の古代文献を解析したところ、とうとう紋章魔法の名前の由来を見つけることとなった。


 紋章魔法の名前の由来、それは───家紋である。


(家紋…?)


 紋章魔法の魔法陣、それを作るには魔語だけではなく魔法陣の形などを理解しないといけない。

 そのため、魔法陣を作るのには1から自分で作るか、作成者にどのように作ったのかを聞く必要性がある。

 そのように、他者に盗まれにくいもの。それが現代でいう家紋の代わりとなった。

 だが、この家紋も使っている人たちは厳選されているようで、「紋章」の家紋を使えるのは、豊富な名声・栄誉・富などを得たものとされている。

 現代にも名を連ねる英雄や、初代ギルドマスター、大商会の建設者などがこれに当てはまっている。

 このような者達が自分を、または自分の家族だと証明として紋章魔法の魔法陣を用いたとのこと。


「……これは…発見した人はすごいな」


 他人からしたらどうでもいい情報かもしれない。

 だが、リュークからしたら大いに興味を引く内容だった。


 その本の著者をみると、オールナ・タルと書かれていた。


(たしか学校にあった本の著者もこんな名前だった気が…他の本も見てみるか)


 リュークはオールナ・タルの本を読んでみようと思ったが、いくら探してもどこにも無かった。


(書いてる本が少ない…?)


 他の図書館も訪れたが、オールナ・タルの本はなかった。





☆☆☆




「帰ろうとしている所悪いが、もうそろそろクラス長を決めなければならない」


 授業開始から1週間が経ったとある日。

 授業をすべて終えて皆が帰りの支度をしている中、クルエルが唐突にそう言った。


「というか本来ならもっと前に決めなければいけなかったらしいが……今日まで完全に忘れてた」


 忘れるなよ…という誰かのつぶやきが聞こえる中、クルエルはリュークを見た。


「普通であればクラス長はクラス1位がやるんだが…」

「先生!こんな平民にクラス長なんか務まりません!」


 リュークをクラス長にしようとした時、カルスが抗議の声を上げた。

 クルエルはやはりなと言いながらカルスを無視した。


「こんな平民にクラス長をやられては、クラスの品が問われます!」

「…どうする?リュークがやりたくないなら…アルアミーラにでもやらせるけども」

「先生!」

「…えっ?」


 アルアミーラとは、クラス3位の少女だ。

 リュークと同じく貴族ではない。

 まさか自分の名前が出るとは思わなかった彼女は、小さな驚きの声を上げた。


「い、いや…です…」


 彼女がクラス長を拒否するにはささいな理由があった。

 彼女は他者からしたら物静かで一人が好きな性格に見える──だけであり、本人としては他人とどんな話をすればいいのかわからなかったり、その話をした時、自分がどう思われてるかの変化を恐れているのだ。

 地球の言葉でいえば、いわゆるコミュ障だ。

 ここまで言えばわかるだろう。

 自分にはできない。向かないとわかるからこそ、拒否をしたのだ。


「嫌…か…まあ、リュークはどうするんだ?」

「僕も嫌ですね…」

「先生!私がいるではないですか!」

「はぁ?カルス、お前だけはクラス長なんかダメだ」


 クルエルがカルスをクラス長にしたくないのにはちゃんとした理由があった。


「お前さ、校則にある『本校はどの国、団体、種族にも属さず、争いが起きた場合には本校及び本校に属する者は第3者とする。また、生徒がどの国、団体、種族に属しても、その時の名誉などは皆同じとする』の意味わかってるのか?」

「はい、例えばこの学校の生徒がなにか特別なことをした場合、その名誉は学園の名誉となり、学園の名誉は全生徒の名誉となる──ということですよね?」

「合ってるが足りない」


 そして癖のようにため息をつく。


「それだけじゃない、お前のような貴族だの、英雄だのそういうのはこの学校に持ち込むなっつー事だ。品が問われる?お前の校則無視の行動の方が品が問われるぞ」

「ぐっ…!」


 クルエルとカルスが会話を終えると同時、リュークから提案があった。


「先生、カルスをクラス長にしてみてはどうですか?」

「……!?」

「なに…?…お前人の話聞いてたか?」

「はい、聞いてました。だからですよ」


 クルエルだけではない。当事者であるカルスも、その他クラスメイトも、頭にハテナマークを浮かべていた。


「抑止力にするんですよ」

「抑止力に?」

「はい。2人が言ってた『品』というのは、クラス長の行動はクラスの行動と思われるからですよね?」

「そうだが…それがどうした?」

「クラス長とすれば、下手な行動はできないと思います。ましてや、自分で『品が問われる』などという人です。品が悪くなるような行動はとらないでしょう」

「そういうことか…」


 リュークは「それだけではありません」と続けた。


「僕ではちゃんとした敬語などが使えませんから、必要になった場合は僕より知っているカルスの方がいいと思います」

「そういうことか…ほかの者はどうだ?リュークの意見に賛成でいいな?」


 だれも拒否する人はいなかった。

 拒否はしないが、カスルだけはリュークの思惑に嵌められたようで満足せず、他の人にクラス長をやれ!という目で見ていた。

 だが、それでも手を上げる人はいなかった。


 なぜそんな目をしても上げないか。クラスメイトには二通りの考えがあった。

 まずはカルスが気に入らない。という人だ。

 カルスはリューク以外にも「平民の癖に!」などと平民の人を侮辱し、自分より下の貴族には「弱小貴族が何を言っているんだ」と見下し、自分より上の貴族は「さすがです!」などと誰にでも目に見えるように媚を売る。

 そんな奴が人から好かれる訳がなかった。

 そしてリュークの意見に賛成し、手を挙げなかった。


 そしてもう一つはクラス長の面倒くささだ。

 カルスは気づいてないようだが、クラス長というのは忙しい。それは自分の時間がなくなる程だ。

 そんなものを好き好んでやる人なんていなかった。カルスを除いて。


「誰もいないな。ならクラス長はカルスで決まりだ」


 クラス長はカルスに決まった。

 カルスはというと、忌々しいものを見ているような目でリュークを見ていた。
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