二郎と大和

伊藤

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第三幕

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一方、大和はトラックにて応急修理を行っていた。日本へ陸兵を輸送中に敵潜水艦より魚雷を受けてしまったためである。しかし、トラックではまともな修理ができず、一度本格的な修理と改修のために、日本への回航を余儀なくされた。日本へ着いた大和は修理と並行して左右にあった副砲を撤去し高角砲と機銃を大幅に増やし、対空火力の大幅な増強を図った。また、電探も艦橋部の左右に追加搭載された。これにより、大和は対空に対してもかなりの防御力を有することになる。これらの改修を終えた大和は、リンガを経てナウイナウイ泊地に移動した。そこで、訓練を重ねながら次の作戦を待ったのである。そんなある日、作戦本部より「あ号作戦」の発令の知らせが入る。(「あ号作戦」とはソマリア諸島のサイパン島西方沖が決戦の部隊で日本が持てる全戦力を投入する大作戦である。)サイパンは戦前より日本の領土となっており、「絶対国防圏」とされていた。もし、サイパンが陥落することがあれば、B29による日本本土空襲が可能になってしまう。そのため日本は大和を各戦艦と共に前衛部隊に所属させ、敵陣に最も近い小型空母の護衛にあたらせた。その中で、大和は艦隊の最先端で空母の直衛となった。このあ号作戦で大和は主砲から対空三式弾を発射した。大和が初め敵に向けて主砲を打った瞬間である。激戦の末、日本は3隻の空母と搭載機の大半を失う大敗を決してしまう。しかし、日本にも意地かある。大和をはじめ前衛部隊は夜線の計画をし、敵への進撃を開始した。しかし、同時に行われる予定だった、夜間航空爆撃が失敗したため、作戦の中止を余儀なくされた。
 この頃、二郎は18歳の誕生日を迎えていた。この頃になると当初の予想と反して長期化する戦争と物資の不足、そして何より人員の不足が顕著に現れ始める。そして二郎の下にも「あれ」が届いた。軍が在郷の予備員として召集するために発布する令状。通称「赤紙」である。それも、所属は大日本帝国海軍の旗艦、大和である。二郎は歓喜のあまり大声で叫んだ。普段が大人しいだけに家族の誰もが驚いた。ふと我に返った二郎は赤面した。それほどに嬉しかったのだ。ついに夢が叶ったのだ。それが嬉しくないはずがない。しかも、二郎がずっと憧れていた大和への乗艦が決まったのだ。二郎はこれまでの苦労が全て報われた気がしていた。思い返せば、簡単な理由で海軍入隊を夢見て、それに向かって我武者羅に勉強し、徐々に結果が出始め、それと同時に友達に疎まれ、夢を諦めかけて母親に叱られたこともあった。思い返せば色々あった。しかし、夢は現実になった。ならば為すべきことは1つである。これまで支えてくれた家族のために何があっても日本を守ること。これが自分にできる最大の親孝行だと少年は考えていた。そして二郎は家族や近所住民に見送られながら大和が停泊している港へと向かって行った。そしてそこに有ったのは紛れもなく大和だった。ここで二郎は大和の構造とシステム、搭載武器の詳細などを聞かされた。
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