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第四幕
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翌年4月、ついに沖縄に敵軍が侵略を開始した。既に多くの制海権を失っていた日本は陸海軍と共に苦肉の策として航空特攻を開始し、どうにか反撃を続けていた。瀬戸内海西武に結集していた第二水雷戦隊は水上部隊を解散、本土作戦に備える段取りとなった。しかし、同月5日沖縄本島を守る第32軍司令部より
「4月7日夜、嘉手納(かでな)と読谷(よみたん)の飛行場を占領される前に、全軍で総攻撃の予定である。」
という内容の電報が飛び込んできた。これを受け、軍は6日より航空特攻の強化を決定した。同じく大和以下の第二艦隊も沖縄に向けて出撃すべしという命令が下る。
4月7日午前6時大和は鹿児島県の坊の岬を沖縄に向けて順調に航海していた。しかし念のため、零戦が2個航空隊から派遣された。これで、より遠くの敵艦や敵機の存在を感知することが可能のはずだった。しかし事は上手くいかなかった。零戦の交代時に偶然、敵母艦より発艦していた偵察機に発見されてしまったのである。午前10時過ぎ、敵母艦より2波、合計386機もの攻撃隊が発艦した。午後12時40分順次来襲した攻撃機は戦闘機にも約225kgの爆弾を2発搭載し、全機が攻撃任務を遂行可能という編成で第二艦隊に殺到してきた。しかもその日の天候は雲が低く対空射撃には不向きな天候で、主砲による三式弾の射撃は3斉射のみだった。第1波の攻撃は約100機、大和には爆弾4発と左舷に魚雷1本が命中した。しかし、大和は何事もないかの如く戦闘を続行した。正しく浮沈艦である。その時、二郎は右舷の機銃の弾薬を取りに行っていた。その時偶然側にいた同僚が
(大和が魚雷なんかで沈むものか。)
と呟いた。二郎も大和は何があっても沈むわけがないと思っていた。しかし、午後1時18分から始まった第2波の攻撃でさらに5本の魚雷が左舷に受けてしまう。これにより、左舷側の応急注水区画は満水となり、大和は左舷に大きく傾いていた。しかし、損害を受けていない右舷の機関室にも注水することで水平に持ち直した。だが、右舷の機関室が使えなくなり12ノットまで速力が低下した。速力が落ちた大和に午後2時より第3波36機による攻撃が開始された。速力が落ちた大和は格好の的となり爆弾3発と右舷に魚雷1発が命中。速度は6ノットにまで低下していた。それでも進み続ける大和に攻撃を行ったのが第4波の54機だった。その時の甲板上は正に地獄絵図だった。二郎は余りにも現実離れしたその中で吐きそうになりながらもどうにか正気を保ち、1人機銃を操っていた。その時、近くに着弾し爆発が起きた。二郎はどうにか事なきを得たが、隣にいた同僚が重症を負っていた。二郎はいよいよ気の滅入る一歩手前だった。午後2時12分から17分にかけて3本の魚雷が左舷に命中した。しかもその中の1本が艦尾付近に命中したため浸水が増大し、注排水システムが追い付かなくなってしまった。そしてそれからわずか6分後、大和は転覆、爆沈した。
二郎は転覆する寸前にどうにか脱出することができたが、大和沈没をまだ認識できずにいた。無理もない、大和という二郎にとってかけがえのない艦がこの世から消失したのだ。それも、多数の友人達と共に。さっきまで、共に戦っていた友人達は今は誰もいない。もう生きる気力を失いながら死ぬこともできない二郎の下に救助船が到着し救助され、二郎は実家へと戻った。
「4月7日夜、嘉手納(かでな)と読谷(よみたん)の飛行場を占領される前に、全軍で総攻撃の予定である。」
という内容の電報が飛び込んできた。これを受け、軍は6日より航空特攻の強化を決定した。同じく大和以下の第二艦隊も沖縄に向けて出撃すべしという命令が下る。
4月7日午前6時大和は鹿児島県の坊の岬を沖縄に向けて順調に航海していた。しかし念のため、零戦が2個航空隊から派遣された。これで、より遠くの敵艦や敵機の存在を感知することが可能のはずだった。しかし事は上手くいかなかった。零戦の交代時に偶然、敵母艦より発艦していた偵察機に発見されてしまったのである。午前10時過ぎ、敵母艦より2波、合計386機もの攻撃隊が発艦した。午後12時40分順次来襲した攻撃機は戦闘機にも約225kgの爆弾を2発搭載し、全機が攻撃任務を遂行可能という編成で第二艦隊に殺到してきた。しかもその日の天候は雲が低く対空射撃には不向きな天候で、主砲による三式弾の射撃は3斉射のみだった。第1波の攻撃は約100機、大和には爆弾4発と左舷に魚雷1本が命中した。しかし、大和は何事もないかの如く戦闘を続行した。正しく浮沈艦である。その時、二郎は右舷の機銃の弾薬を取りに行っていた。その時偶然側にいた同僚が
(大和が魚雷なんかで沈むものか。)
と呟いた。二郎も大和は何があっても沈むわけがないと思っていた。しかし、午後1時18分から始まった第2波の攻撃でさらに5本の魚雷が左舷に受けてしまう。これにより、左舷側の応急注水区画は満水となり、大和は左舷に大きく傾いていた。しかし、損害を受けていない右舷の機関室にも注水することで水平に持ち直した。だが、右舷の機関室が使えなくなり12ノットまで速力が低下した。速力が落ちた大和に午後2時より第3波36機による攻撃が開始された。速力が落ちた大和は格好の的となり爆弾3発と右舷に魚雷1発が命中。速度は6ノットにまで低下していた。それでも進み続ける大和に攻撃を行ったのが第4波の54機だった。その時の甲板上は正に地獄絵図だった。二郎は余りにも現実離れしたその中で吐きそうになりながらもどうにか正気を保ち、1人機銃を操っていた。その時、近くに着弾し爆発が起きた。二郎はどうにか事なきを得たが、隣にいた同僚が重症を負っていた。二郎はいよいよ気の滅入る一歩手前だった。午後2時12分から17分にかけて3本の魚雷が左舷に命中した。しかもその中の1本が艦尾付近に命中したため浸水が増大し、注排水システムが追い付かなくなってしまった。そしてそれからわずか6分後、大和は転覆、爆沈した。
二郎は転覆する寸前にどうにか脱出することができたが、大和沈没をまだ認識できずにいた。無理もない、大和という二郎にとってかけがえのない艦がこの世から消失したのだ。それも、多数の友人達と共に。さっきまで、共に戦っていた友人達は今は誰もいない。もう生きる気力を失いながら死ぬこともできない二郎の下に救助船が到着し救助され、二郎は実家へと戻った。
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