Pierre mystérieuse

桃白 時夜

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第一章

第三話

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ミュリエルが去って行った後、私はそのまま幹部の居たはずの広間を目指した。

OPが最後、ここで彼らが何か大魔法を使っていた。その影響と考えるなら、一度は行ってみるべきだろう。

「…と言うか、ミュリエルはあんな声だったのかぁ。…いいなあ」

初めて聞いた自分の配下の声に思いを馳せながら、他の配下たちはどんなだろうかと考える。
もしかしたら最初のアリアの所で配下の声を変えられたのかもしれない。

まあ、後の祭りだからランダム性もあっていいと思おう。

「それよりも、今の状況は最悪と考えておいた方がいいな…」

ボタンの消失、物の感触、匂い、キャラクターの反応。どれをとっても、一つの結論にたどり着く。
中でも決定的なのはミュリエルだ。アリアは機械的な対応だったのに比べて彼女は本当の普通のニンゲンのような対応だった。

たしかに猪突猛進型の従順キャラに設定した覚えはあるのだが、如何せんキャラが確立されすぎている。
瞳の揺れ方や髪の毛一本一本、胸の揺れ方まで現実的。――喜ぶべきなのだろうか。

「…とりあえずここが現実世界だと仮定して、だ。命の石を誰に使うかな…。戦力はなるべく整えておきたい」

ミュリエルも強者の部類ではあるが生憎上の下、といったところだ。高レベルプレイヤーが居たらほぼ歯は立たないだろう。

――一応このゲームのレベル上限は100となっている。プレイヤーも配下も一律だ。
しかし限界突破アイテム『原初の果実プミアフリート』を使うことで上限レベルを10上げることができるが、その際の配下アンアミーの上限は200で、プレイヤーは300。

これも勿論課金アイテムだ。

滅多にイベント報酬でも手に入らないため金で物を言うしかなかったので満足に使えていたとは言い難い。
まあ、だからミュリエルはレベルが150で止まっている訳だ。

それなら、と私は扉の目の前で足を止める。
レベルは高い者、そして私のお気に入り達を覚醒させる方がいい。

その扉は一際際立っていた。黒の壁に黒の扉。赤の宝石で飾られたそれは触ることすら戸惑ってしまう。
今思うと扉までレイアウトできた神秘の塔は凄いと思う。

「…ここに、」

皆が、あの子たちがいるはずだ。
私の、最初の配下―――『ガルディアン』

静かに扉を押すと、重そうな見た目とは裏腹に軽く扉は動いた。
音が鳴ることも無くスムーズに扉は開く。

そこは広間と言う名の会議室。よく、皆が居た場所だ。

「誰も、居ない…?」

暗い室内には何の気配も感じられない。一歩室内へ足を踏み入れると、瞬間部屋の明かりが一斉につき始める。

「ッ…。—―ああ、やっぱり」

予想通りの状況への落胆と、目の前に肉体を持って存在する喜びが入り混じった言葉が漏れる。
そこには椅子に座ったまま目を閉じて意識を失っている配下アンアミーがいた。







やはり状況は最初に思い至った通りらしい。
俺はこれから配下たちアンアミーを覚醒させるために神秘の塔トアミステユーズを攻略して命の石ピア・ド・レヴィを手に入れなければならない。

ゲームならば最初は雑魚相手というのが定番だが、もしこれが現実ならそんな悠長なことは言ってられない。
少なくとも死んだら、きっと死ぬのだろうから。

最初から過剰戦力で行っても悪いことはあるまい。

アイテムから命の石を選択。すると手の中に小さな丸い、真っ赤な宝石のような石が現れた。

「…これが、命の石ピア・ド・レヴィ。―――――綺麗」

数える程しか宝石なんて見たことも無いが、それでも純粋に綺麗だと思った。
吸い込まれるような赤だけの世界に、らしくもなく魅せられる。

すぐに我に返って、自分自身に思わず苦笑した。
本当に、らしくない。

それよりも誰に使うか、だ。
配下は100人、その中でも私の初期メンバーであるガルディアンは強化の度合いが別格だ。
しかし石の数は3。まるで足りない以上先に使う配下を決めなくてはならない。

しかし現状の不安、私の立場を考えるとやはり限られてくるものはある。

塔の攻略が目的なわけだが、その塔の場所にも関係してくる。一応有数の高レベルプレイヤーだったと自負している私は、配下のほとんどが限定種族だ。つまり、人間ではない。私に至ってはたった一度の実装で、試験的に導入された種族なのでオンリーワンだ。意地と金の力で勝ち取った。
すると必然的に塔が人街などにあった時、姿を隠せるか種族を隠せる奴じゃなきゃ問題が発生するだろう。


そう考える事数分、私はまず2人を覚醒させてあとの2つは取っておく事にした。
別に一気に3つ使わなくてもいいのだ。後で後悔してもやり直せる程度に手は残しておきたい。
それに三人いれば、現状は事足りる、と思いたい。

まずは――

「…どうやって、使うんだろ?」

配下に近づいて、はたと気づく。石の使い方が分からない。
飲み込むか、取り込むかってところだろうか。

しかし近づけてみてもなにも起こらない。この会社は使い方のガイドも一緒に入れて置くべきだと思う。
数分考えて、ある考えに至った。

一通りの動作を試して、それでも何も起こらないので一端椅子に座って考える。

そう、これは、今がもし現実だとしても元々はゲームの設定だったはずだ。つまり、ゲーム的に考えるべきで、ゲームでの石のお約束の立ち位置と言えば―――

ああ―――これはガチャだ。確定ガチャ。
つまり、一度の覚醒で石が一つだなんて安い訳がなかったのだ。ゲームにはよるが、どんなガチャでも大体石は5~50ぐらいが一度のガチャに必要な石の数ではないだろうか。

何ともゲーム脳な結論に至り、石を持っているだけ全て取り出す。といっても3個しかないのだが。

「あ」

そう思いながら石を体に近づけていくと、急に3個の石が色を失い始める。
突然の出来事に何も出来ないでいると、ついに石が透明の石へとなり果てた。その瞬間、パリンッと小さく音を立てて石は砕け散る。
どうやら、3個で確定らしい。なんて都合のいい。

「…ん、」

「―-コクマー」

「…っ!?王、生きていらしたのですね!?」

瞼を震わせ、目を開いたかと思うとすぐに椅子から立ち上がり、臣下の礼をするコクマー。
その俊敏な動きに思わずポカンとしてしまう。

ミュリエルの時も思ったが、どうしてこう彼らは私が生きている事に過剰反応を示すのだろう。いや、悪い気はしないのだけれど。

「ん、おはよう」

「…おはようございます。失礼ながら、私は一体何を…。確か敵勢力と対応しつつ、王のご無事を考え…っ」

私の少し場違いな挨拶にもしっかりと返してくれたコクマー。
自分で状況の整理をしていると、突然頭を押さえて顔を顰めた。
どうしたのか聞くと、何やら記憶が曖昧らしい。

「申し訳ありません。どうやら王を転移させた、と言うのは分かるのですが私たちの中にそのような魔法を使える者は居なかったはず。その上城ごとの転移など正気の沙汰では―――。…それしか案が無かったとしても何故そのような結論に至ったのでしょう…?」

確かにコクマーの言う通りガルディアンに限らず、私の配下の100人には転移魔法を使える者は居ても城ごとだとか異世界に、なんて規格外なものでは無かったはずだ。

つまり、私を転移させるよう仕組んだナニカがあった、と考えられる。

「…声を聞いた、とか体が勝手に、というのは良く聞くな」

「いえ…しかし、確か…あの時一番初めに言い出したのは…ティファレトだった気がします。それ以外は何とも…」

「ティファレト…」

彼を覚醒させるのは少し憚られる。いや、会いたくない訳ではないのだが、如何せん主張が激しすぎる上に制御が難しい。
しかし彼が一番乗りというのはどうだろう。確か、彼は魔法が一切使えなかったと思うのだが。

「いや、これは後にしておこう。コクマー、とりあえず私の私室に」

「はっ」
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