異世界で人間社会を裏切って何かを貫いた(I・NUN)

亜阿愛亜

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転生章

其の2 浜田まさき「異世界?近未来?に転生」

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何かわからないが、強烈な衝撃を何度も受けた。

夜なのか。闇なのか。漆黒だけが続いている。

「・・・・・・おい!起きろ!目を覚ませ!生きているのなら、こんなところに寝ていたら喰われるぞ!」

どこかで聞き覚えのある女性の声。どこだっただろうか。とても最近なような気がする。

「おい!!」

怒号とともに左の頬に強い衝撃。痛みとともに僕は目を開いた。

「ちょ、ちょっと待ってください」

横になった僕に女性が覆いかぶさるようにしていた。左手を大きく振り上げている。次は右の頬を殴るつもりでいたのだろう。僕は慌ててそれを制した。

「なぜ、こんな場所で寝ている!?」

「え?こんな場所?」

僕は女性に胸倉を掴まれながら周囲を見渡した。

何もない。

厳密には視界にはどこまでも続く砂漠とくすんだ空だけが映っていた。

「あの、ここはどこなんでしょうか?」

僕は恐る恐るそう質問してみた。

女性は大きな瞳で僕の表情をまじまじと見つめ、
「38ルートだ。一番近い街まで徒歩で15時間はかかる。どうやってここにたどり着いた?」

「38ルート?なんですか38ルートって。都内ですよね、ここ」

「都内?お前は罪人(トガ)か?都から追放されたのか?」

「トガ?追放?・・・・・・いえ、あの、確か学校に向かっていた気がします・・・・・・」

「学校か。やはりもとは貴族(アッパー)だな。名前は?どんな罪を犯した?」

「え・・・・・・えーと、名前はです」

そう答えた瞬間、通学の際の列車での一件を思い出した。痴漢に間違えられた事件だ。

(あれ?この顔に見覚えがある・・・・・・)

僕は目の前の女性に見覚えがあった。

(どこだ?年上だ。25歳くらいだろうか。学校の先生・・・・・・いや、違う。近所の住民かな・・・・・・いや、いない。でもはっきりと覚えている。どうしてだろうか・・・・・・・・)

「あ!!」

僕はその顔を思い出して驚きの声をあげた。列車で僕に痴漢行為の罪を着せた女性だったからだ。

!!」

僕はとっさにその名前を口に出していた。すると女性の表情が明らかに一変したのだ。

「どうして私の名前を知っている?」

「え?どうしてって、自分でそう言っていましたよね。昨日まで、ふ、風俗嬢していて、今日から無職だって、え?イタ!!」

僕は右の頬をおもいっきり殴られた。平手ではない。グーだ。生まれて初めて拳で殴られたのだ。もちろん親にも殴られたことはない。

「風俗嬢だと?どうやら死にたいらしいな?」

そう言うと松本ゆいは腰からナイフを抜いて、僕の首に突き付けた。勢いで刃先が僕の首にわずかに突き刺さり、痛みとともに血が流れ落ちた。

「だって、自分でそう言っていたじゃないですか。無職になってお金がないんでしょ。それで僕をターゲットにして痴漢の罪を着せて示談金をせしめようとした」

「何の話をしている?お前の顔など見たことはない。たとえどんなに貧しくてもお前たちのようなアッパーの恵みなど求めるものか!正直に話せ。なぜ私の名前を知っている?組織でも私の本名を知っている者は少ない。お前、さては政府の犬だな」

松本ゆいはゆっくりとナイフの刃先を僕の顔面に近づけてきた。左目の上でぴたりと止めた。

「アンドロイドか?」

「ア、アンドロイド?いえ、普通の人間ですよ!」

「目玉をえぐればわかる話だ」

「人間です・・・・・・や、やめてください。は、犯罪ですよ」

「犯罪だと?お前たちだけに許された権利だとでも言いたいのか?これまで何人の下級層(ロー)の目玉を喰ってきた?政府が人喰御免(ひとくいごめん)を貴族(アッパー)に認めたからといって、国民全体がそれを認めたわけではないぞ!」

「人喰御免?なんの話をしているのか、さっぱりわかりません。僕は誰の目玉も食べたことはないですよ!」

「嘘をつくと目玉をえぐっていいという法令があるのを知っているか?」

「知りませんよ、そんなの!誰が決めたんですか、そんな残酷な法」

「私だよ」

そう答えると、松本ゆいはナイフを振りかざした。


「そこまでだリャンソウ。その少年は捕虜として基地に連行する」

背後から男性の声。松本ゆいはナイフを振り下ろすのを直前で止めた。

「スパイですよ。間違いない。知るはずのない私の本名を知っていたんです。こいつを連れていけば基地が探知されます。ここで始末しましょう」

「仮にそうだとすれば聞きたい話がある。貴重な情報源になるかもしれん」

「新法令の噂ですか?」

「そうだ。あの噂が本当だとすると世界は大きく変わることになるだろう。我々は本格的に抵抗活動をしなければならない」

「こんなガキが知っているとでも?」

「見ろ、こんな物を持っていた」

松本ゆいはゆっくりと振り返った。僕も首をもたげてそちらを見た。

黒い革ジャンに身を包んだ30歳くらいの男性がバイクのような物に乗っている。掲げた右手にあったのは、僕のカバンだった。

男性はカバンから銀色の物体を取り出した。やや丸みを帯びたその物体は、僕にとって唯一の友達だった。

「DONA(ドナ)!」

僕は思わず友達の名前を叫んだ。

声に反応してDONAが鳴いた。そして手足をバタつかせる。

「なんです?それ」

松本ゆいが不審げな表情でそう問うと、男性は無精ひげの口元を緩ませて、
「犬だよ。かつてこの世界に存在していたらしい。俺も実物を見るのは初めてだ」

「犬?」

「こんな物が開発されたという情報はない。これを所有しているということは、貴族(アッパー)の中でも高級官僚に通じている可能性が高い」

「しかし罪人(トガ)ですよ」

「いや、トガであればすでに喰い殺されているはずだ。流刑などずいぶんと昔に廃れているからな。何らかの事情でここに来たのだろう。事故かもしれん」

「そんな都合のいい話が・・・・・・」

「リスクを考えて、本拠地(ホーム)には連行しない。西家(シャーケ)に向かう。あそこならば捨て拠点だ」

「シャーケ・・・・・・あそこには今、あの連中がいますよ」

「好都合だ。臨機応変な対応ができるだろう」

「クソ、あいつに会わずに済むと思っていたのに」

「向こうはリャンソウに会いたがっていたぞ」

「虫唾が走ります」

そう言って、松本ゆいは僕を強引に立たせた。まったく意味がわからないが、とりあえず目玉を取られずに済んだことは確かだった。

「俺の名前はだ。組織じゃイーソウと呼ばれている。よろしくな。後ろに乗れ。少しドライブをしてお互いのことを知り合おう」

こうして僕は砂漠の中をドライブすることになった。まるで悪夢のような出来事だ。



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