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2章 勿忘草を咲かせるために
第10話 パプリカの心配事
夫婦の関係もさることながら、嫁姑の間柄も、良いものにしようと思ったら、互いの思いやりが必要だ。
だが、畠山さんのお母さまは相川さんを良く思っていない。それが本当に相川さんの家庭の事情からなのかは分からない。と言うのも、女親はことさら息子を溺愛する傾向にあると聞いたことだあるからだ。
息子を別の女性に取られてしまう。そんな嫉妬の様な心理で嫁いびりに発展するなんて話も聞く。
それとも本当に、相川さんの背景を疎んでいるのかも知れない。お母さまは箱入り娘だということだから、相川さんの状況は価値観に無いのだと思う。就職せずにお父さまと結婚したとも言っていたので、学校、そしてママ友界隈などの狭い世界でしか世間を見ていないのかも知れないのだ。
失礼を承知で言うと、視野が狭いのだ。だがそんな人は珍しく無い。自分の知っていることだけが世にあるものだと思っている人は大勢いる。
ただ、そこに頑なさが加わるかどうかが大きな鍵になって来る。畠山さんのお母さまにはその傾向があるのでは、と世都は思った。プライドが高いとも言える。お父さまは歓迎していると言うのに、そのお話もきっと耳に入っていない。
となると、懐柔は難しいだろう。畠山さんは守ってくれる人だけど、それでも相川さんが嫌な思いをすることは避けられないかも知れない。
世都は、どうか相川さんにとって良い結果となりますようにと、願いながらタロットカードを混ぜる。
相川さんも畠山さんも大人なのだから、結婚をするのなら、極端なことを言えば両親の許しですら必要無いのだ。それでもおめでたいことなのだから、特に家族になる人には祝って欲しい、歓迎されたいと思うのは普通のことである。
相川さんはこうも言っていた。
「母のお相手はともかく、母は私のこと多分どうでもええて思ってると思うんで、私の結婚も無関心やと思うんですよ」
相川さんの実家は無いのと同じだ。さすがにお母さまの今の住まいを実家とは言えない。実のお父さまが誰なのかも知らされていないし、相川さんは自分のルーツとは縁が薄い。ならこれから築いて行くものを大事にしようと思って当然なのでは無いか。
みっつの山に分けたカードをひとつにまとめる。1枚をぺらりとめくって。
「ペンタクルの8の、正位置ですね」
意味は着実な努力、大器晩成など。努力を怠らなければ成功する、そういう解釈ができる。
「時間は掛かるかも知れませんけど、じっくりとお母さまと向き合っていけば、きっと分かってもらえると思いますよ。それに、相川さんや畠山さん、占ってる私にも思わん様なことを、お母さまが抱えてはる可能性かてあります。相川さんが嫌な思いをすることもあるかも知れませんけど、長い目で見ることが大事なんやと思います」
相川さんはごくりと喉を鳴らす。今はまだ難しいけれど、きっといつかは。それは希望としては儚いものかも知れない。それでも受け入れてもらうために諦めなければ。
「そう、ですね。頑張ってみます。俗に言う嫁いびりとか、もしかしたらあるかも知れませんけど、結婚できたとしてもあの様子やったら畠山くんが同居とか止めてくれると思うんで、それを思うと少しは気が楽です。お母さまも私の顔なんて見たく無いでしょうしね」
それは違う、と世都は言いそうになった。世都は年齢的にも結婚している友人も多いから、その手の話はちょいちょいと入ってくるのだが、嫁いびりをする人は、わざわざ会いに来ていびるのだ。だがそれは相川さんには言うまい。余計な心配を掛けさせてしまう。
それに畠山さんのお母さまがそのパターンに沿うかどうかは、分からないのだし。
お食事を終えた高階さんは、お惣菜のパプリカのナムルを食べて「白ごまええわぁ」なんてほっこりと呟く。
「しっかし、結婚て大変なんやなぁ。相川さんとこはちょっと特殊かも知れんけど」
「そうですねぇ」
しかしこの高階さんも、誰かの息子と言う立場である。
「そう言えば、高階さんてご結婚してはるんですか?」
「いや、俺は独身。まだ母さんは元気やし、自分の親がそんなんするてなったら、あ、嫁いびりな、どう思うんやろ」
「どうなんでしょうねぇ」
世都は曖昧に応えておく。
実は先日、怖い話を聞いた。大阪の男性の7割ほどがマザコンを患っている可能性があるというのだ。結婚して、大事にしなければならない人がお嫁さんになっても、実母を優先するのだと。
世都の友人も、マザコン男性と結婚してしまい、ことごとくないがしろにされてしまっているらしい。別居だしお子さんもいるので、どうにか思い留まっていると愚痴っていた。
子が親を大事にするのは素晴らしいことだと思うが、それでお嫁さんが嫌な思いをするのは世都は受け入れたがった。自分がその立場になったことが無いから、言えるのかも知れないが。
相川さんの場合、畠山さんは無茶を言うお母さまに言い返してくれたとのことだから、大丈夫だと思うのだが。
だが、畠山さんのお母さまは相川さんを良く思っていない。それが本当に相川さんの家庭の事情からなのかは分からない。と言うのも、女親はことさら息子を溺愛する傾向にあると聞いたことだあるからだ。
息子を別の女性に取られてしまう。そんな嫉妬の様な心理で嫁いびりに発展するなんて話も聞く。
それとも本当に、相川さんの背景を疎んでいるのかも知れない。お母さまは箱入り娘だということだから、相川さんの状況は価値観に無いのだと思う。就職せずにお父さまと結婚したとも言っていたので、学校、そしてママ友界隈などの狭い世界でしか世間を見ていないのかも知れないのだ。
失礼を承知で言うと、視野が狭いのだ。だがそんな人は珍しく無い。自分の知っていることだけが世にあるものだと思っている人は大勢いる。
ただ、そこに頑なさが加わるかどうかが大きな鍵になって来る。畠山さんのお母さまにはその傾向があるのでは、と世都は思った。プライドが高いとも言える。お父さまは歓迎していると言うのに、そのお話もきっと耳に入っていない。
となると、懐柔は難しいだろう。畠山さんは守ってくれる人だけど、それでも相川さんが嫌な思いをすることは避けられないかも知れない。
世都は、どうか相川さんにとって良い結果となりますようにと、願いながらタロットカードを混ぜる。
相川さんも畠山さんも大人なのだから、結婚をするのなら、極端なことを言えば両親の許しですら必要無いのだ。それでもおめでたいことなのだから、特に家族になる人には祝って欲しい、歓迎されたいと思うのは普通のことである。
相川さんはこうも言っていた。
「母のお相手はともかく、母は私のこと多分どうでもええて思ってると思うんで、私の結婚も無関心やと思うんですよ」
相川さんの実家は無いのと同じだ。さすがにお母さまの今の住まいを実家とは言えない。実のお父さまが誰なのかも知らされていないし、相川さんは自分のルーツとは縁が薄い。ならこれから築いて行くものを大事にしようと思って当然なのでは無いか。
みっつの山に分けたカードをひとつにまとめる。1枚をぺらりとめくって。
「ペンタクルの8の、正位置ですね」
意味は着実な努力、大器晩成など。努力を怠らなければ成功する、そういう解釈ができる。
「時間は掛かるかも知れませんけど、じっくりとお母さまと向き合っていけば、きっと分かってもらえると思いますよ。それに、相川さんや畠山さん、占ってる私にも思わん様なことを、お母さまが抱えてはる可能性かてあります。相川さんが嫌な思いをすることもあるかも知れませんけど、長い目で見ることが大事なんやと思います」
相川さんはごくりと喉を鳴らす。今はまだ難しいけれど、きっといつかは。それは希望としては儚いものかも知れない。それでも受け入れてもらうために諦めなければ。
「そう、ですね。頑張ってみます。俗に言う嫁いびりとか、もしかしたらあるかも知れませんけど、結婚できたとしてもあの様子やったら畠山くんが同居とか止めてくれると思うんで、それを思うと少しは気が楽です。お母さまも私の顔なんて見たく無いでしょうしね」
それは違う、と世都は言いそうになった。世都は年齢的にも結婚している友人も多いから、その手の話はちょいちょいと入ってくるのだが、嫁いびりをする人は、わざわざ会いに来ていびるのだ。だがそれは相川さんには言うまい。余計な心配を掛けさせてしまう。
それに畠山さんのお母さまがそのパターンに沿うかどうかは、分からないのだし。
お食事を終えた高階さんは、お惣菜のパプリカのナムルを食べて「白ごまええわぁ」なんてほっこりと呟く。
「しっかし、結婚て大変なんやなぁ。相川さんとこはちょっと特殊かも知れんけど」
「そうですねぇ」
しかしこの高階さんも、誰かの息子と言う立場である。
「そう言えば、高階さんてご結婚してはるんですか?」
「いや、俺は独身。まだ母さんは元気やし、自分の親がそんなんするてなったら、あ、嫁いびりな、どう思うんやろ」
「どうなんでしょうねぇ」
世都は曖昧に応えておく。
実は先日、怖い話を聞いた。大阪の男性の7割ほどがマザコンを患っている可能性があるというのだ。結婚して、大事にしなければならない人がお嫁さんになっても、実母を優先するのだと。
世都の友人も、マザコン男性と結婚してしまい、ことごとくないがしろにされてしまっているらしい。別居だしお子さんもいるので、どうにか思い留まっていると愚痴っていた。
子が親を大事にするのは素晴らしいことだと思うが、それでお嫁さんが嫌な思いをするのは世都は受け入れたがった。自分がその立場になったことが無いから、言えるのかも知れないが。
相川さんの場合、畠山さんは無茶を言うお母さまに言い返してくれたとのことだから、大丈夫だと思うのだが。
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