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3章 チョコレートコスモスを添えて
第9話 フルーツゼリーの窘め
「ママ、ココナ、ゼリーたべたい!」
ココナちゃんの元気な声が、カウンタ内側の厨房にいる世都に届く。そろそろかな? そう思ったのだが。
「ゼリーはごはんの後やで」
奥さまの嗜める声が聞こえる。テーブルをちらりと見ると、まだお料理は少しだが残されている。
「でも、もうおなかいっぱいやもん」
ココナちゃんの少し拗ねた様な声。お酒を飲んでいる大人は、そのお供としてお食事もゆっくりになるが、子どもはそうもいかない。身体も小さいのだから量もそんなに食べられないだろうし、大人より早く終わるのは当たり前だった。
だからと言って、注文も無いのに勝手にゼリーを持って行くわけにはいかない。世都は調理台下の冷蔵庫に伸ばし掛けていた手を引っ込めた。
「まぁええやん。ゼリー持って来てもらおうや。ココナ、手持ち無沙汰になるんとちゃう?」
「ほな、食べ終わってココナがここに飽きてしもたら、パパが連れて帰ってくれる?」
「私が? それはええけど。ママは?」
「私、久々にひとりで飲みたいわ。ええやろ?」
「もちろんええで。ほな、私もごはん食べてしまわな」
勝川さんは言って、お箸を取った。
「ココナ、ゼリーもらおか」
「うん!」
奥さまの言葉に、ココナちゃんは満面の笑顔になった。
「すいませーん」
奥さまに呼ばれ、龍平くんが伝票を手に向かった。世都は今度こそ冷蔵庫を開けて、ラップが掛かったグラスを出した。
フルーツゼリーは小さなグラスにひとつずつ作っている。使っているフルーツはいちごと温州みかん、缶詰のパイナップルである。小さな子でも食べやすい様に小さめの一口大に切ったフルーツをグラスにバランス良く詰め、ゼラチン液を流し入れる。
ゼラチン液にはパイナップル缶のジュースも使っている。ジュースに水を足して、お砂糖で味を補い、粉ゼラチンを溶かす。粗熱が取れてとろみが出たらフルーツのグラスにそっと注いで、冷蔵庫で冷やし固めるのだ。
ゼラチン液はつるりと食べられる様に、あまり固くはしない。少し前、固めのこんにゃくゼリーが幼児の喉に詰まってしまうなんて、痛ましい事故もあった。このゼリーはスプーンですくって食べてもらうからそんなことにはならないと思いたいが、美味しく安全に食べてもらえる様に念には念を入れた。
「世都さん、勝川さんにフルーツゼリーみっつ」
「あら、勝川さんと奥さまも食べはるんやね。はーい」
世都は冷蔵庫から追加のフルーツゼリーを出して、ラップを剥がした。グラスを小皿に乗せ、スプーンを添えて。
「私、持ってくわ」
世都はトレイにフルーツゼリーを乗せて、カウンタを出た。世都が近付くと、急ピッチでお食事を口に運んでいた勝川さんが頭を上げた。奥さまもせっせとお箸を動かしている。
「お待たせしました。フルーツゼリーです」
「わぁい!」
ココナちゃんが歓喜の声を上げる。世都は最初にココナちゃん、そして勝川さん、奥さまの前にゼリーを置いた。
ココナちゃんはさっそくスプーンを取り、ゼリーにそれを突き刺した。大きくすくって口に入れる。
「んふー、おいしーい!」
ココナちゃんに満足してもらえたら、このフルーツゼリーは成功だ。便宜上今日の日替わりのひとつではあるが、ココナちゃんのために作ったのだから。世都はほっと安堵する。
「ほんまや。甘さがほんのりで、果物たっぷりでええわぁ」
奥さまもゼリーを口にして、目を細めた。
「ママ、先にごはん食べてまわんと」
「こうゆうんは冷たいうちに食べな。パパも食べてみ。美味しいで」
「それもそうか」
勝川さんはお箸を置いて、天狗舞山廃のハイボールで口の中を流したら、フルーツゼリーを持ち上げた。スプーンでぱくんと口に入れて。
「あ、ほんまや。甘いん苦手な人でも食べられそうな甘さやな」
それも心掛けたところだ。ココナちゃんのために作ったとはいえ、他のお客さまにも出すものだ。特に飲兵衛は辛党が多い傾向にある。ゼラチン液が水っぽくならない様にお砂糖で調整はしたが、甘さはフルーツの糖度だけで充分だ。
「ありがとうございます。ごゆっくりどうぞ」
世都は厨房に戻る。そのころにはココナちゃんはフルーツゼリーを平らげていた。オレンジジュースも飲み干して。
「パパ~、帰るぅ~」
お腹が満足し、場に飽き出したのだろうココナちゃんがぐずり始めた。小さな子はひとところでじっとしているのが苦手だ。
「ん、ちょっと待ってや」
勝川さんはぱぱっと最後に残ったモッツァレラチーズのおかか和えを口に放り込み、天狗舞山廃のハイボールを流し込んだ。
「ココナお待たせ。パパと帰ろうか」
「うん」
ココナちゃんは身軽にソファからひらりと降りる。勝川さんも立ち上がり、コートやマフラーを着けた。ココナちゃんに着付けるのは奥さまだ。
「ママばいばーい」
「はーい。ちゃんと大人しく寝るんやで」
「はーい」
「ママ、気ぃ付けて帰っておいでな。ココナおるから迎えには来れんから」
「ありがとう、大丈夫。そんな遅くはならん様にするから」
岡町の治安は良いと思うし、早めの時間なら人通りもあるが、用心に越したことは無い。
勝川さんは着込んでもこもこになったココナちゃんの手を引いて、カウンタ内の世都に声を掛けた。
「慌ただしくてすいません。このお礼はまたあらためて。またゆっくり来ますね。お代は妻からお願いします」
「とんでも無いですよ。ありがとうございました。またお越しくださいね」
ココナちゃんはすっかりとお店に慣れてくれたのか、世都にも手を振ってくれた。
「おねえちゃん、バイバイ」
「はぁい、バイバイ。また来てね」
世都が笑顔で手を振ると、ココナちゃんは嬉しそうにはにかんだ。満足してくれた様だと、世都はほっと胸を撫で下ろした。
ココナちゃんの元気な声が、カウンタ内側の厨房にいる世都に届く。そろそろかな? そう思ったのだが。
「ゼリーはごはんの後やで」
奥さまの嗜める声が聞こえる。テーブルをちらりと見ると、まだお料理は少しだが残されている。
「でも、もうおなかいっぱいやもん」
ココナちゃんの少し拗ねた様な声。お酒を飲んでいる大人は、そのお供としてお食事もゆっくりになるが、子どもはそうもいかない。身体も小さいのだから量もそんなに食べられないだろうし、大人より早く終わるのは当たり前だった。
だからと言って、注文も無いのに勝手にゼリーを持って行くわけにはいかない。世都は調理台下の冷蔵庫に伸ばし掛けていた手を引っ込めた。
「まぁええやん。ゼリー持って来てもらおうや。ココナ、手持ち無沙汰になるんとちゃう?」
「ほな、食べ終わってココナがここに飽きてしもたら、パパが連れて帰ってくれる?」
「私が? それはええけど。ママは?」
「私、久々にひとりで飲みたいわ。ええやろ?」
「もちろんええで。ほな、私もごはん食べてしまわな」
勝川さんは言って、お箸を取った。
「ココナ、ゼリーもらおか」
「うん!」
奥さまの言葉に、ココナちゃんは満面の笑顔になった。
「すいませーん」
奥さまに呼ばれ、龍平くんが伝票を手に向かった。世都は今度こそ冷蔵庫を開けて、ラップが掛かったグラスを出した。
フルーツゼリーは小さなグラスにひとつずつ作っている。使っているフルーツはいちごと温州みかん、缶詰のパイナップルである。小さな子でも食べやすい様に小さめの一口大に切ったフルーツをグラスにバランス良く詰め、ゼラチン液を流し入れる。
ゼラチン液にはパイナップル缶のジュースも使っている。ジュースに水を足して、お砂糖で味を補い、粉ゼラチンを溶かす。粗熱が取れてとろみが出たらフルーツのグラスにそっと注いで、冷蔵庫で冷やし固めるのだ。
ゼラチン液はつるりと食べられる様に、あまり固くはしない。少し前、固めのこんにゃくゼリーが幼児の喉に詰まってしまうなんて、痛ましい事故もあった。このゼリーはスプーンですくって食べてもらうからそんなことにはならないと思いたいが、美味しく安全に食べてもらえる様に念には念を入れた。
「世都さん、勝川さんにフルーツゼリーみっつ」
「あら、勝川さんと奥さまも食べはるんやね。はーい」
世都は冷蔵庫から追加のフルーツゼリーを出して、ラップを剥がした。グラスを小皿に乗せ、スプーンを添えて。
「私、持ってくわ」
世都はトレイにフルーツゼリーを乗せて、カウンタを出た。世都が近付くと、急ピッチでお食事を口に運んでいた勝川さんが頭を上げた。奥さまもせっせとお箸を動かしている。
「お待たせしました。フルーツゼリーです」
「わぁい!」
ココナちゃんが歓喜の声を上げる。世都は最初にココナちゃん、そして勝川さん、奥さまの前にゼリーを置いた。
ココナちゃんはさっそくスプーンを取り、ゼリーにそれを突き刺した。大きくすくって口に入れる。
「んふー、おいしーい!」
ココナちゃんに満足してもらえたら、このフルーツゼリーは成功だ。便宜上今日の日替わりのひとつではあるが、ココナちゃんのために作ったのだから。世都はほっと安堵する。
「ほんまや。甘さがほんのりで、果物たっぷりでええわぁ」
奥さまもゼリーを口にして、目を細めた。
「ママ、先にごはん食べてまわんと」
「こうゆうんは冷たいうちに食べな。パパも食べてみ。美味しいで」
「それもそうか」
勝川さんはお箸を置いて、天狗舞山廃のハイボールで口の中を流したら、フルーツゼリーを持ち上げた。スプーンでぱくんと口に入れて。
「あ、ほんまや。甘いん苦手な人でも食べられそうな甘さやな」
それも心掛けたところだ。ココナちゃんのために作ったとはいえ、他のお客さまにも出すものだ。特に飲兵衛は辛党が多い傾向にある。ゼラチン液が水っぽくならない様にお砂糖で調整はしたが、甘さはフルーツの糖度だけで充分だ。
「ありがとうございます。ごゆっくりどうぞ」
世都は厨房に戻る。そのころにはココナちゃんはフルーツゼリーを平らげていた。オレンジジュースも飲み干して。
「パパ~、帰るぅ~」
お腹が満足し、場に飽き出したのだろうココナちゃんがぐずり始めた。小さな子はひとところでじっとしているのが苦手だ。
「ん、ちょっと待ってや」
勝川さんはぱぱっと最後に残ったモッツァレラチーズのおかか和えを口に放り込み、天狗舞山廃のハイボールを流し込んだ。
「ココナお待たせ。パパと帰ろうか」
「うん」
ココナちゃんは身軽にソファからひらりと降りる。勝川さんも立ち上がり、コートやマフラーを着けた。ココナちゃんに着付けるのは奥さまだ。
「ママばいばーい」
「はーい。ちゃんと大人しく寝るんやで」
「はーい」
「ママ、気ぃ付けて帰っておいでな。ココナおるから迎えには来れんから」
「ありがとう、大丈夫。そんな遅くはならん様にするから」
岡町の治安は良いと思うし、早めの時間なら人通りもあるが、用心に越したことは無い。
勝川さんは着込んでもこもこになったココナちゃんの手を引いて、カウンタ内の世都に声を掛けた。
「慌ただしくてすいません。このお礼はまたあらためて。またゆっくり来ますね。お代は妻からお願いします」
「とんでも無いですよ。ありがとうございました。またお越しくださいね」
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