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#71 米農家の精鋭誕生

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 昼営業が終わり、そろそろ米農家希望者の面接の時間になろうとしている。

 昨日形成し、乾燥させた煉瓦れんがは、これまでも作業を手伝ってくれていた男衆が、荷車に積んで陶芸工房に持って行ってくれていた。後は工房にお任せしてしまう事になる。

 壱たちは食堂のフロアのテーブルに着き、希望者を待っていた。

「さぁて、誰が来るじゃろうなぁ。楽しみじゃのう」

「俺、まだ話した事の無い人沢山いるから、それも楽しみかも」

「米作りはこちらの指導が必要だカピ。それを壱に任せたいと思っているカピ。なので顔と名前を良く覚えておくカピよ」

「そうじゃの。この村には元の世界の様な履歴書とか顔写真とかは無いからの。とは言えの、そう身構える事は無いぞい。サユリさんも儂も教えてやれるからの」

「うん。ありがとう」

 その時、食堂の扉が開いた。

「店長、そろそろ良いですかー? 米農家の面接なんですがー」

 そうゆったりとした口調で言いながら顔を覗かせたのは、体力に自身がありそうな、若い屈強くっきょうな男性。これはなかなか幸先さいさきが良い。

「はいはい、大丈夫じゃぞ」

 さて、訪れた順番に面接開始である。



 面接に来た数人の中から選ばれたのは4人だった。そこにはこれまで煉瓦作りを手伝ってくれた男衆が含まれていた。煉瓦を届けてくれた後、走って戻って来たのだ。

 恐れながらお断りしてしまった村人はとうに食堂を辞し、壱とサユリと茂造、そして4人は食堂で一番大きな8人掛けのテーブルを囲んでいる。

「ではの、あらためて自己紹介を頼むぞい」

「はい」

 金髪を短く刈り上げた青年が立ち上がる。

「ガイです。麦を作ってました。煉瓦作りから手伝ってて、なら米作りも続けられたらと思って希望しました。よろしくお願いします」

 煉瓦作りの時、壱にいろいろと教えてくれた人だった。爽やか好青年のイメージを持っている。

 次に立ち上がるのは黒髪の青年。ガイ程では無いが、すっきり短く切られている。体格のイメージと違い、物静かな印象。

 煉瓦作りの際も殆ど喋らなかった。カリル同様無口キャラなのだろうか。

「リオンです。牧場にいました。俺もガイと同じで、米作り続けたいなって。よろしくお願いします」

 次は錆びた様な髪色のショートカットヘアの青年。ややパサついている感じがするが。

「ジェンっす。漁師やってましたっす。俺もガイとリオンと一緒っす。よろしくっす!」

 ああ、成る程、毎日海風にさらされて来たから、水分不足なのだと納得する。煉瓦作りでは、気合いの声を上げながらも黙々と作業してくれていたので、真面目そうな人柄は解っているつもりだ。

 次に立ったのは、ウエーブ掛かった赤いショートカットヘアで、少し軽薄そうな印象。しかし口を開くと温和なイメージに変わった。

「ナイルですー。僕も麦作ってましたー。ええとー、新しい食べ物に興味があってー。どうせなら自分で作ってみたいと思ってー。どうぞよろしくお願いしますー」

 そしてどうやら食いしん坊らしい。面接に一番乗りはこのナイルだった。

 みんな、程度の差はあれど筋肉質の男性だった。あまり人数をけない事もあって、少数精鋭しょうすうせいえいが狙いだ。この人員なら、田んぼもあっという間に出来そうな気がした。
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