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#72 バジルソース改善への道その2
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「この村、と言うか、この世界で初めて作る作物じゃからの。正直どうなるか判らん。じゃがお前たちなら多分大丈夫じゃろう。田んぼ作りと米の育て方なんかを指導するのは壱じゃ。みんな、よろしく頼むぞい」
茂造が言うと、全員の視線が壱に集まった。壱はそれにやや緊張し、しかしひとつ咳払いをすると立ち上がった。
「壱です。俺も、田んぼ作りも米作りも知識しか無いので、みんなで探りつつ、協力して、美味しい米を育てられたらいいなと思います。よろしくお願いします」
そう言って頭を下げた。するとどこからともなく拍手が聞こえて来て、壱は照れてしまい、顔を上げるのが恥ずかしかった。「では、明日から早速田んぼ作りじゃ。朝には煉瓦が焼きあがっておる筈じゃから、よろしく頼むぞい。壱も明日は朝から田んぼ予定地に行ってくれの」
「食堂は大丈夫なの?」
「大丈夫じゃ。最近は壱やみんなのお陰で大分楽をさせて貰うてたからの、体力が有り余っとるんじゃ」
じいちゃん、年寄り扱いしたくは無いが、齢を考えてくれ。
「では、今日はこれで解散じゃの。明日、まずはここに集まっとくれ。煉瓦を引き上げに行かねばならんからの」
「はい!」
各々返事をし、挨拶をしながらぞろぞろと食堂を出て行った。
「さて壱よ、申し訳無いカピが、田んぼは広い方の1面だけにして良いカピか?」
「うん、それは良いけど」
サユリが言うのだから、何か理由があるのだろう。
「もうひとつの土地では、砂糖黍を育てたいのだカピ。砂糖は腐敗しないから街で大量買いしていたカピが、やはり村で作りたいと思っているカピ。子ども達が学校を卒業したら、ふとりふたりではあるが人手が増えるカピ。そうしたら作れると思うのだカピ」
「作ると言えば、ちょっと考えていた事があるんだけど」
「何じゃ?」
「胡桃、育てられないかな」
壱の提案に、サユリと茂造はやや困った様に顔を見合わせた。
「ふむ、そうしたいのは山々なのカピが、やはり嗜好品はどうしても後回しになってしまうカピ」
「そうじゃのう。エールやワインに胡桃は最高じゃと思うが、今は難しいかのう」
「裏庭に1本とかで充分だと思うんだ。俺が育てる。昼に作ってるバジルソース、あれ、俺らの世界では、松の実を砕いて入れるんだよ」
スマートフォンで育て方を調べてみたら、情報元に寄って育て方に多少の違いはあった。だがそれらを参考にどうにかなると思う。
「松の実? あの、米粒を大きくした様なナッツの事かの? 確かたまにつまみに食べておった様な。それが入っておるのか?」
「そう。それを胡桃で代用してみたくて」
それが先日、壱が考えていたバジルソースの改善案である。これもスマートフォンで調べてみたら、胡桃で作るバジルソースもちゃんとあった。
松の実より柔らかいので、フードプロセッサなどが無くとも包丁などで細かく出来る。ローストして香ばしさをプラスすれば、より美味しくなるだろう。
「バジルソースと言えばじいちゃん、擂り鉢って作れるかな」
「擂り鉢? 儂は使った事は無いが、確か圭子さんがとろろなんかを作る時に使っておったかの」
先述したが、圭子は茂造の細君で、故人である。
「多分それ。それがあったら、バジルソース作るのもっと楽になる」
「成る程の。それは作ってみる価値はあるのう」
「作り方は判るカピか?」
「うん。この村だと陶器で作るのが良いかな。ボウルの形にして、底に細い溝を全方向から掘るんだ。溝の彫り方があるから、それはまた調べておくよ」
「では陶器工房に言っておくかの。いろいろと改善や作るものがあって、大忙しじゃ」
そう言いながら、茂造は楽しそうである。元来働き者なのだろう。
「胡桃は街に行かんと苗が手に入らんからの、ちょいと待ってくれの。さて、儂らも仕込みに入るぞい。カリルとサントに任せっぱなしじゃからの」
「おっと、そうだ。急がなきゃ」
面接が何時に終わるかはっきり判らなかったので、カリルとサントには時間になったら仕込みを始めて貰う様に頼んでいた。
壱たちは慌てて厨房に入った。
茂造が言うと、全員の視線が壱に集まった。壱はそれにやや緊張し、しかしひとつ咳払いをすると立ち上がった。
「壱です。俺も、田んぼ作りも米作りも知識しか無いので、みんなで探りつつ、協力して、美味しい米を育てられたらいいなと思います。よろしくお願いします」
そう言って頭を下げた。するとどこからともなく拍手が聞こえて来て、壱は照れてしまい、顔を上げるのが恥ずかしかった。「では、明日から早速田んぼ作りじゃ。朝には煉瓦が焼きあがっておる筈じゃから、よろしく頼むぞい。壱も明日は朝から田んぼ予定地に行ってくれの」
「食堂は大丈夫なの?」
「大丈夫じゃ。最近は壱やみんなのお陰で大分楽をさせて貰うてたからの、体力が有り余っとるんじゃ」
じいちゃん、年寄り扱いしたくは無いが、齢を考えてくれ。
「では、今日はこれで解散じゃの。明日、まずはここに集まっとくれ。煉瓦を引き上げに行かねばならんからの」
「はい!」
各々返事をし、挨拶をしながらぞろぞろと食堂を出て行った。
「さて壱よ、申し訳無いカピが、田んぼは広い方の1面だけにして良いカピか?」
「うん、それは良いけど」
サユリが言うのだから、何か理由があるのだろう。
「もうひとつの土地では、砂糖黍を育てたいのだカピ。砂糖は腐敗しないから街で大量買いしていたカピが、やはり村で作りたいと思っているカピ。子ども達が学校を卒業したら、ふとりふたりではあるが人手が増えるカピ。そうしたら作れると思うのだカピ」
「作ると言えば、ちょっと考えていた事があるんだけど」
「何じゃ?」
「胡桃、育てられないかな」
壱の提案に、サユリと茂造はやや困った様に顔を見合わせた。
「ふむ、そうしたいのは山々なのカピが、やはり嗜好品はどうしても後回しになってしまうカピ」
「そうじゃのう。エールやワインに胡桃は最高じゃと思うが、今は難しいかのう」
「裏庭に1本とかで充分だと思うんだ。俺が育てる。昼に作ってるバジルソース、あれ、俺らの世界では、松の実を砕いて入れるんだよ」
スマートフォンで育て方を調べてみたら、情報元に寄って育て方に多少の違いはあった。だがそれらを参考にどうにかなると思う。
「松の実? あの、米粒を大きくした様なナッツの事かの? 確かたまにつまみに食べておった様な。それが入っておるのか?」
「そう。それを胡桃で代用してみたくて」
それが先日、壱が考えていたバジルソースの改善案である。これもスマートフォンで調べてみたら、胡桃で作るバジルソースもちゃんとあった。
松の実より柔らかいので、フードプロセッサなどが無くとも包丁などで細かく出来る。ローストして香ばしさをプラスすれば、より美味しくなるだろう。
「バジルソースと言えばじいちゃん、擂り鉢って作れるかな」
「擂り鉢? 儂は使った事は無いが、確か圭子さんがとろろなんかを作る時に使っておったかの」
先述したが、圭子は茂造の細君で、故人である。
「多分それ。それがあったら、バジルソース作るのもっと楽になる」
「成る程の。それは作ってみる価値はあるのう」
「作り方は判るカピか?」
「うん。この村だと陶器で作るのが良いかな。ボウルの形にして、底に細い溝を全方向から掘るんだ。溝の彫り方があるから、それはまた調べておくよ」
「では陶器工房に言っておくかの。いろいろと改善や作るものがあって、大忙しじゃ」
そう言いながら、茂造は楽しそうである。元来働き者なのだろう。
「胡桃は街に行かんと苗が手に入らんからの、ちょいと待ってくれの。さて、儂らも仕込みに入るぞい。カリルとサントに任せっぱなしじゃからの」
「おっと、そうだ。急がなきゃ」
面接が何時に終わるかはっきり判らなかったので、カリルとサントには時間になったら仕込みを始めて貰う様に頼んでいた。
壱たちは慌てて厨房に入った。
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