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#80 ペペロンチーノをじっくりと
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さて、食堂に到着した。荷車は交通などの邪魔にならない様に裏庭に置く。
ナイルがいの一番に食堂のドアを開けた。
「こんにちはー!」
「いらっしゃーい!」
「いらっしゃあい」
「い、いらっしゃい、ませ」
ホール係の3人が明るい笑顔で迎えてくれた。最後に壱が顔を覗かせた時には、1番近くにいたマユリが小さく駆け寄って来てくれた。
「い、イチさん、お疲れ様です。あ、あの、あの、こ、このままお米農家さんに、な、なられるんですか?」
やや不安げな表情。確かにこの食堂は忙しい。壱も一応戦力に数えて貰っているのだ。壱は笑みを浮かべた。
「ううん。米農家になってくれた人にいろいろと伝えたりしてるだけだよ。今のところ、知ってるの俺だけだからね。落ち着いたらまたここに戻るからさ」
「そ、そうですか。よ、良かった」
マユリは安堵した様な表情を浮かべ、その後我に返った様に眼を軽く開いた。
「ご、ごめんなさい、お邪魔してしまって。ど、どうぞ!」
「ありがとう」
壱は既にテーブルに掛けているサユリやガイたちに合流する。
メニューを見る。普段はここの食堂にいるのだから、あまり多く無いメニューは勿論全て把握している。しかしこうして見る事もあまり無かったので、新鮮だった。
この食堂のメニューは、木版に書かれていた。インクで書かれているからか、あちらこちら滲んでいる。
そしてやはり、何が書かれているのかさっぱり判らない。壱はまだこの世界の文字を判読出来ないのだ。
そうしながら、壱は注文する品を決める。
「イチくん、サユリさん、決まりました?」
「はい」
「うむカピ」
ガイが良いタイミングで訊いてくれたので頷く。ガイが呼んだのは、1番近くにいたメリアンだった。
「あ、イチ! サユリさん! 今日はお客さんなんだね! 何にする? うちは何でも美味しいよ!」
相変わらず元気である。壱は笑いながら応えた。
「知ってるよ。ええと、まず皆さん注文してください」
「じゃーお言葉に甘えてー。僕はねー」
このランチタイムを心待ちにしていたナイルから注文して行く。壱は最後だった。
料理が来るまでの間、米や田んぼの話をしつつ待つ。
やはりみんな、新たな食物に関して興味津々だった。食べた事の無いもの。そもそもこの世界には無いものだ。惹かれるのも当然だろう。
数ヶ月後、無事に穂が成った時には是非みんなに食べて貰いたいと思っている。その時の反応が今から楽しみである。
さて、そうしているうちに料理に運ばれて来た。壱が頼んだものも、眼の前に置かれる。
ペペロンチーノとパンである。今日のペペロンチーノの具材は、ベーコンとカリフラワだった。メリアンに内容を確認せずに頼んでいた。彩りにパセリの微塵切りが振られている。
壱はみんなが注文した品が揃うのを待って、と言ってもすぐなのだが、そのタイミングでフォークをペペロンチーノに入れた。
器用に巻いて、口に運ぶ。うん、これはやはり素晴らしく安定した味。
この村で製造されている新鮮なオリーブオイルをベースに、輪切りのにんにくと唐辛子がアクセント。ベーコンの旨味も滲み出ていて甘い。臭いを気にしながらにんにくも口にするが、香ばしくて美味しい。全体の塩加減も絶妙だ。
カリフラワも旨味の詰まったオイルと絡まって美味しかった。淡白なカリフラワにコクが生まれている。
この村に来て10日足らず、これまでも食べた事があったが、いつも仕事の合間に気持ち慌てながら掻っ込んでいた様なものだ。
勿論味わってはいたつもりなのだが、時間を掛けて、とは行かなかった。なのでこうして落ち着いて頂く事が出来たのは幸運だったかも知れない。
「イチくん、この村に来て、確かもう10日ほどになるんじゃ無いですか? 慣れました?」
ガイが話を振ってくれる。
「そうですね、確かそんなもんかと。皆さんのお陰で大分慣れました。この村の人々は良い人ばかりですね」
「たまーにトラブルはあるっすけどね。異性問題とか」
ああ、そうだった。ジェンの言葉に、壱は来て間も無く起こったシェムスとボニーの修羅場を思い出す。そう言えば結婚したいと言っていたカルとミルはどうしたのだろうか。
「でも大概大事にならずに片付いているみたいだよねー 店長さんとサユリさんが上手く仲裁とかしているのかなー 僕はその現場に居合わせた事無いけどー」
ナイルの台詞に、壱はサユリたちがボニーの好きにさせていた事を思い出す。これは黙って置くべきなのだろうか。つい遠い眼をしてしまう。
リオンは相槌を打ちながら、黙々とバジルソースのパスタを口に運んでいた。今日の具材は鶏肉とじゃがいもだった。
サユリも話は聞いているのだろうが、しれっとした表情でミネストローネを啜っていた。
さて、そろそろ食べ終える。昼からは煉瓦積みだ。また壱がした事の無い作業で、誰かに教えて貰わなければならないが、頑張るとしよう。
ナイルがいの一番に食堂のドアを開けた。
「こんにちはー!」
「いらっしゃーい!」
「いらっしゃあい」
「い、いらっしゃい、ませ」
ホール係の3人が明るい笑顔で迎えてくれた。最後に壱が顔を覗かせた時には、1番近くにいたマユリが小さく駆け寄って来てくれた。
「い、イチさん、お疲れ様です。あ、あの、あの、こ、このままお米農家さんに、な、なられるんですか?」
やや不安げな表情。確かにこの食堂は忙しい。壱も一応戦力に数えて貰っているのだ。壱は笑みを浮かべた。
「ううん。米農家になってくれた人にいろいろと伝えたりしてるだけだよ。今のところ、知ってるの俺だけだからね。落ち着いたらまたここに戻るからさ」
「そ、そうですか。よ、良かった」
マユリは安堵した様な表情を浮かべ、その後我に返った様に眼を軽く開いた。
「ご、ごめんなさい、お邪魔してしまって。ど、どうぞ!」
「ありがとう」
壱は既にテーブルに掛けているサユリやガイたちに合流する。
メニューを見る。普段はここの食堂にいるのだから、あまり多く無いメニューは勿論全て把握している。しかしこうして見る事もあまり無かったので、新鮮だった。
この食堂のメニューは、木版に書かれていた。インクで書かれているからか、あちらこちら滲んでいる。
そしてやはり、何が書かれているのかさっぱり判らない。壱はまだこの世界の文字を判読出来ないのだ。
そうしながら、壱は注文する品を決める。
「イチくん、サユリさん、決まりました?」
「はい」
「うむカピ」
ガイが良いタイミングで訊いてくれたので頷く。ガイが呼んだのは、1番近くにいたメリアンだった。
「あ、イチ! サユリさん! 今日はお客さんなんだね! 何にする? うちは何でも美味しいよ!」
相変わらず元気である。壱は笑いながら応えた。
「知ってるよ。ええと、まず皆さん注文してください」
「じゃーお言葉に甘えてー。僕はねー」
このランチタイムを心待ちにしていたナイルから注文して行く。壱は最後だった。
料理が来るまでの間、米や田んぼの話をしつつ待つ。
やはりみんな、新たな食物に関して興味津々だった。食べた事の無いもの。そもそもこの世界には無いものだ。惹かれるのも当然だろう。
数ヶ月後、無事に穂が成った時には是非みんなに食べて貰いたいと思っている。その時の反応が今から楽しみである。
さて、そうしているうちに料理に運ばれて来た。壱が頼んだものも、眼の前に置かれる。
ペペロンチーノとパンである。今日のペペロンチーノの具材は、ベーコンとカリフラワだった。メリアンに内容を確認せずに頼んでいた。彩りにパセリの微塵切りが振られている。
壱はみんなが注文した品が揃うのを待って、と言ってもすぐなのだが、そのタイミングでフォークをペペロンチーノに入れた。
器用に巻いて、口に運ぶ。うん、これはやはり素晴らしく安定した味。
この村で製造されている新鮮なオリーブオイルをベースに、輪切りのにんにくと唐辛子がアクセント。ベーコンの旨味も滲み出ていて甘い。臭いを気にしながらにんにくも口にするが、香ばしくて美味しい。全体の塩加減も絶妙だ。
カリフラワも旨味の詰まったオイルと絡まって美味しかった。淡白なカリフラワにコクが生まれている。
この村に来て10日足らず、これまでも食べた事があったが、いつも仕事の合間に気持ち慌てながら掻っ込んでいた様なものだ。
勿論味わってはいたつもりなのだが、時間を掛けて、とは行かなかった。なのでこうして落ち着いて頂く事が出来たのは幸運だったかも知れない。
「イチくん、この村に来て、確かもう10日ほどになるんじゃ無いですか? 慣れました?」
ガイが話を振ってくれる。
「そうですね、確かそんなもんかと。皆さんのお陰で大分慣れました。この村の人々は良い人ばかりですね」
「たまーにトラブルはあるっすけどね。異性問題とか」
ああ、そうだった。ジェンの言葉に、壱は来て間も無く起こったシェムスとボニーの修羅場を思い出す。そう言えば結婚したいと言っていたカルとミルはどうしたのだろうか。
「でも大概大事にならずに片付いているみたいだよねー 店長さんとサユリさんが上手く仲裁とかしているのかなー 僕はその現場に居合わせた事無いけどー」
ナイルの台詞に、壱はサユリたちがボニーの好きにさせていた事を思い出す。これは黙って置くべきなのだろうか。つい遠い眼をしてしまう。
リオンは相槌を打ちながら、黙々とバジルソースのパスタを口に運んでいた。今日の具材は鶏肉とじゃがいもだった。
サユリも話は聞いているのだろうが、しれっとした表情でミネストローネを啜っていた。
さて、そろそろ食べ終える。昼からは煉瓦積みだ。また壱がした事の無い作業で、誰かに教えて貰わなければならないが、頑張るとしよう。
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