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#125 擂り鉢の完成
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食堂の昼営業が終わり、壱とサユリは陶製工房に向かう。擂り鉢が出来上がっている筈だ。
着くと、ノックをしてドアを開ける。
「こんにちは」
「邪魔するカピ」
「あ、サユリさんイチくんこんにちは! 擂り鉢出来てるよ!」
シルルは立ち上がり、棚に向かうと白いボウル状のものを取り出して来た。
「どうかな。貰ったイラスト通りに溝掘ったつもりなんだけど」
壱はシルルから受け取ったそれを両手で包む様に持ち、上から溝を凝視する。その流れは壱の書いたイラストとほぼ相違無い様に思える。
次に溝を指で触れてみると、壱が家で使っていた擂り鉢と変わらない感触だと思った。説明した通り、その部分だけ素焼きにしてくれている。
これはいける。壱は大きく頷いた。
「素晴らしいですシルルさん! ありがとうございます」
壱が笑顔で言うと、シルルは安堵したかの様に小さく息を吐き、笑みを浮かべた。
「本当? 良かったー! 初めて作るものだからさ、櫛作って貰う時にもロビンとああだこうだ角度がー先端がーなんて言いながらさぁ。用途は聞いてたから、それに合う様にとは思って作ったけど」
「はい。これでバジルソースの仕込みが格段に楽になります」
「なら良かった。ユミヤ食堂にはこれからも美味しいご飯を作って貰わなきゃならないからねぇ。朝ご飯だけは自分で卵ぐらい焼くけど、どうやらさ、私料理不得意みたい。今朝も目玉焼きの目玉は潰れるわ塩っ辛いわで」
シルルは言うと、可笑しそうに笑い声を上げた。
それはなかなか。茂造でも綺麗な片面焼きの目玉焼きを作っていたのに。塩加減も良かった。
「……もしかしてシルルさん、目玉焼き作る時は両面焼きにしてます?」
両面焼きならひっくり返す時に、力加減に寄っては黄身が割れてしまうかも知れない。
「え、うん。私生の卵って苦手でー」
「半熟でも?」
「作ろうとしたんだけど、時間が掛かるから苛々しちゃって。両面焼きだと早いでしょ? もうあれかな、洗い物増えるけど、スクランブルエッグとかにした方が良いのかな」
シルルは腕を組むと、考える様に眉を顰めて首を傾げた。
「フライパンに直接卵を割って、掻き回しちゃう作り方もありですよ。白身と黄身が混ざり合わないのも、食べる度に味が変わって面白いですよ」
「あ、そうね。それ良いかもね! 今度やってみよう」
「そして塩は控え目に」
「はぁい。気を付けます」
笑顔のシルルに見送られ、壱とサユリは陶製工房を出た。擂り鉢は持参して来た布の袋に大切に入れてある。
これで明日の昼営業の仕込みから使用出来る。みんなが喜んでくれると嬉しいのだが。
その前に明日の朝ご飯に使えないだろうか。使い心地も試してみたい。
壱は持ち得るレシピを頭で開き、擂り鉢が使えそうなものを考えてみる。しかしそれらの中では思い浮かばなかった。
それでも熟考していると、かなり乱暴だがひとつ思い付いた。
要は擂り鉢を使えれば良いのだ。
味は悪く無い筈だ。よし、一か八かではあるが、これで行こう。壱は決めた。
着くと、ノックをしてドアを開ける。
「こんにちは」
「邪魔するカピ」
「あ、サユリさんイチくんこんにちは! 擂り鉢出来てるよ!」
シルルは立ち上がり、棚に向かうと白いボウル状のものを取り出して来た。
「どうかな。貰ったイラスト通りに溝掘ったつもりなんだけど」
壱はシルルから受け取ったそれを両手で包む様に持ち、上から溝を凝視する。その流れは壱の書いたイラストとほぼ相違無い様に思える。
次に溝を指で触れてみると、壱が家で使っていた擂り鉢と変わらない感触だと思った。説明した通り、その部分だけ素焼きにしてくれている。
これはいける。壱は大きく頷いた。
「素晴らしいですシルルさん! ありがとうございます」
壱が笑顔で言うと、シルルは安堵したかの様に小さく息を吐き、笑みを浮かべた。
「本当? 良かったー! 初めて作るものだからさ、櫛作って貰う時にもロビンとああだこうだ角度がー先端がーなんて言いながらさぁ。用途は聞いてたから、それに合う様にとは思って作ったけど」
「はい。これでバジルソースの仕込みが格段に楽になります」
「なら良かった。ユミヤ食堂にはこれからも美味しいご飯を作って貰わなきゃならないからねぇ。朝ご飯だけは自分で卵ぐらい焼くけど、どうやらさ、私料理不得意みたい。今朝も目玉焼きの目玉は潰れるわ塩っ辛いわで」
シルルは言うと、可笑しそうに笑い声を上げた。
それはなかなか。茂造でも綺麗な片面焼きの目玉焼きを作っていたのに。塩加減も良かった。
「……もしかしてシルルさん、目玉焼き作る時は両面焼きにしてます?」
両面焼きならひっくり返す時に、力加減に寄っては黄身が割れてしまうかも知れない。
「え、うん。私生の卵って苦手でー」
「半熟でも?」
「作ろうとしたんだけど、時間が掛かるから苛々しちゃって。両面焼きだと早いでしょ? もうあれかな、洗い物増えるけど、スクランブルエッグとかにした方が良いのかな」
シルルは腕を組むと、考える様に眉を顰めて首を傾げた。
「フライパンに直接卵を割って、掻き回しちゃう作り方もありですよ。白身と黄身が混ざり合わないのも、食べる度に味が変わって面白いですよ」
「あ、そうね。それ良いかもね! 今度やってみよう」
「そして塩は控え目に」
「はぁい。気を付けます」
笑顔のシルルに見送られ、壱とサユリは陶製工房を出た。擂り鉢は持参して来た布の袋に大切に入れてある。
これで明日の昼営業の仕込みから使用出来る。みんなが喜んでくれると嬉しいのだが。
その前に明日の朝ご飯に使えないだろうか。使い心地も試してみたい。
壱は持ち得るレシピを頭で開き、擂り鉢が使えそうなものを考えてみる。しかしそれらの中では思い浮かばなかった。
それでも熟考していると、かなり乱暴だがひとつ思い付いた。
要は擂り鉢を使えれば良いのだ。
味は悪く無い筈だ。よし、一か八かではあるが、これで行こう。壱は決めた。
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