異世界もふもふ食堂〜僕と爺ちゃんと魔法使い仔カピバラの味噌スローライフ〜

山いい奈

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#124 お米の育て方(その2、苗作り)その2

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「イチさん、どうしたっすか?」

「い、いえ、何でも無いです」

 ここまで来ておいて、何と言う事。米を育てる事だけに焦ってしまったか、すっかりと忘れてしまっていた。

 種籾は給水させる前に、60度程度の湯に浸けて消毒しなければならなかったのだ。それを抜かしてしまった。

 これは一大事。壱は如雨露を手にしたままサユリの元に駆け寄り、耳元で小声で言う。

「種籾の消毒忘れてた」

「うむ、言おうかどうしようか迷ったカピが、壱の世界の食べ物だカピ、我が口を出すのはどうかと思って黙っていたカピ。今思い出したカピか」

「大丈夫かな、ちゃんと育つかな」

「大丈夫カピ。種籾を浸水させる前に、我が魔法で消毒しておいたカピ」

 サユリは言い、鼻を鳴らした。

流石さすがサユリ! ありがとう!」

 壱は笑顔になると、如雨露を放り出してサユリに抱き付いた。

「感謝するカピよ」

「本当に感謝だよ。俺、みんなに言って来る。サユリの魔法で何とかなるって言っても大丈夫かな」

「これぐらいなら大丈夫カピ」

「ありがとう」

 壱は言うと如雨露を拾い上げ、みんなの元に駆け寄る。

「みなさん、すいません。行程が抜けてました」

 そう言って頭を下げる。

「実は、種籾を水に浸ける前に、お湯で消毒しなきゃならなかったんです。今回はサユリが魔法で何とかしてくれる事になったので、大丈夫なんですが、本当にごめんなさい」

「そうなんですね。大丈夫なら、問題無いですよ」

 ガイが笑みを浮かべてくれる。

「そうですねー。次植える分からやれば良いですしー」

 ナイルものんびりと言う。

「言い訳になっちゃうんですけど、俺も米を育てるのって初めてで。この世界に来る前に調べたりしてみての中途半端な知識しか無いんです」

 実際はサユリが壱たちの世界からきっちり持ち込んでくれているのだが、種籾をこの世界に持ち込んだのは壱と言う事になっており、サユリの関与は無い事になっている。

 なので、この言い分が妥当なのだ。

「そんな状態の俺が仕切る時点でどうかとは思うんですが、みなさん凄く協力してくれて、本当に助かってます」

 言うと、ジェンたちは声を上げて笑う。

「何言ってんすかイチくん! オレらの方が米の事全く何も知らないっすし、むしろイチくんに知識がある方が凄いんじゃ無いっすか? だって育てた事無いんすよね?」

「そうですよ。俺は元々麦農家だったんで、例えばいきなり家畜とか育ててみろって言われても、知識も経験も無いですから無理ですよ。みんな初めてなんですから、手探りでやって行きましょう」

 いつも感じているが、この村はどうしてこんなにも良い人たちばかりなのか。壱は有り難くて仕方が無い。

「ありがとうございます。これからもよろしくお願いします」

「こちらこそー」

 ナイルたちはそう言って、笑みを浮かべてくれた。



 植木鉢に水を撒き終え、如雨露を片付け、以前の職場の手伝いに向かうガイたちを見送りながら、壱はサユリにポツリと言う。

「凄いよね。あの人たち余りにも良い人過ぎて、恐縮するレベルだよ」

「当然カピ。耐火煉瓦れんが作りの手伝いの時点で、そういう人間が集まる様に根回しいていたカピ」

「そうなの!?」

 壱は驚いてサユリを見る。

「我も茂造も、当たり前カピが村人全員を把握しているカピ。あの4人をセレクトしたのは我たちカピ。特に性格が良く、好奇心が強めで、責任感がある働き者。煉瓦作りの時はそれぞれの職場のおさにガイたちが来る様にして貰っていたのだカピ。そのまま米農家にスライドするであろう事も織り込み済みだったカピ」

「それって、長の人たちに拒まれなかったの? 凄い貴重な戦力だろうに」

「だから従業員が多い職場から選んだカピよ。それだとそういう人間も多いカピから然程さほど痛手では無いカピ。そこはちゃんと考えているカピ」

「そっかぁ」

 成る程、それもそうか。そうだ、サユリは聡明なカピバラだった。壱が及ばない事もきちんと配慮したりしている筈だ。

 先程の米の種籾も消毒の件についてもそうだった。

「さて壱、のんびりしている場合では無いカピよ。厨房に入るカピ。もうすぐ昼営業も始まるカピ」

「そうだった! 結局仕込み時間殆ど使っちゃったなぁ」

 壱は慌てて厨房へのドアを開けた。
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