異世界もふもふ食堂〜僕と爺ちゃんと魔法使い仔カピバラの味噌スローライフ〜

山いい奈

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#123 お米の育て方(その2、苗作り)その1

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 昼営業の仕込みに入る前に、川に米の種籾たねもみを確認しに行く。

 もうすぐ1週間。そろそろ発芽しているのでは無いだろうか。

 種籾の元に到着すると、全員揃っていた。

「おはようございます」

「おはようっす!」

「おはようございまーす」

「……おはようございます」

 ミサトの一件から、リオンの口数が増えた気がする。元々無口なのもあるだろうが、もしかしたら人見知りされていたのかも知れない。

「おはようございます」

「おはようカピ」

「さて、そろそろ種籾から芽が出てる事だと思うんですよね」

 壱は言うと、川に浸けてある種籾の袋を引き上げる。巾着きんちゃく状の口を開け、中身をそっと掴んでてのひらに広げる。

 すると種籾は浸水前よりもぷっくらと膨らんで、白い芽も出て来ていた。

「やった! 発芽してる!」

「どれどれー」

 ナイルたちが覗き込んで来て、おお、と声を上げる。

「こんな風になるんですね」

「何か凄いっすね」

 初めて見る物を前に、みんな眼を輝かせている。物が物だけに、男性特有なのかも知れない。

「これを1粒ずつ植えて、苗を作ります。食堂の裏庭に行きましょう。ここも次の種籾浸けるまでに何とかしたいですね。石を固定させて。大丈夫だと思っても、流されやしないかと結構冷や冷やして」

「確かにそうっすね! 落ち着いたら埋めてみるっすか?」

「やっぱりそれがベストですかねぇ。じゃあ今置いてあるのの倍の長さはある石を探さないと」

「それか、木製工房で加工して貰っても良いかもですよー。石削ってくれますよー」

 ナイルの台詞に、壱は眼を丸くした。

「え? ロビンさんってそんな事も出来るんですか?」

「出来るっすよ。ロビンのおやっさんだけじゃ無くて、ドワーフの人たちはみんな出来るっすよ。凄いっすよね!」

 ジェンが言い、楽しそうに笑った。壱はただただ感心するばかり。

「じゃあ後で相談してみよう。じゃ、食堂に行きましょう」

 壱とサユリが並んで先頭に立ち、食堂へと向かう。着いたら表からは入らず、そのまま裏庭に回る。厨房へと繋がる裏口を開け、顔を出した。

「じいちゃん、米の種籾から芽が出たから、今から植えるね。仕込み入るのそれが終わってからになるけどごめん」

「おお、やっとじゃの。大丈夫じゃぞい。実るのが楽しみじゃのう」

「まだまだ先だけどね。ありがとう」

 壱は裏庭に戻ると、ガイたちに指示を出し始める。サユリは隅でのんびりとくつろいでいる。

「ええと、うちにあるありったけの植木鉢がいると思います。それに植えて行きますね。土の高さは5センチもあれば充分です」

「そんなもので良いんですか?」

「はい。それなりに根張りはしますけど、苗作りですからね。その後田んぼに植えます」

「じゃ、植木鉢の準備をしますかー」

 ナイルがのんびりと言い、積んである植木鉢に手を伸ばした。壱たちもそれに続く。

 底の穴を石で埋め、土を入れる。それを何鉢も作って行く。ここにある植木鉢だけで足りたら良いのだが。

「よしっ、これでラストっす!」

 ジェンが最後の鉢に土を入れ終えた。

「では、種籾を植えて行きます。2センチほどの間隔を開けて植えて行ってください」

「解りました」

「はーい」

「はいっす!」

「……はい」

 種籾の数も多いので、根気の要る作業になる。みんなは黙々と作業を進めて行った。

 袋から種籾を掴み出し、植え、無くなれば補充する。そうして漸く、袋の中の種籾は無くなった。

「終わりました! みなさんお疲れさまでした!」

 壱が言うと、みんなは一様に息を吐いた。

「なかなか大変な作業でしたね」

「そうっすね! でも達成感あるっす!」

「そうだねー」

 各々汗を拭ったりしながら言い、リオンも同意だと言う様に頷いた。

「じゃあ、しっかりと水をきます。土が乾いちゃ駄目なんですよ」

 如雨露じょうろに水を入れて、たっぷりと撒いて行く。

「このままここで苗にするので、土の具合は俺が見ますね」

「朝はこれまで通り集まりますから、その時にみんなで水を撒いたら良いですね」

「そうですね」

 水を撒きながらのガイの台詞に、壱は頷く。

 その時、壱は思い出してしまった。つい「あっ!」と声を上げた。
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