136 / 190
#136 朝食タイムと、擂り鉢の評判
しおりを挟む
さて、茂造が戻って来たので、食事を始める。
「いただきます」
「いただくかの」
「いただくカピ」
さて、まずは味噌汁から。スープボウルの淵に口を付け、熱いのを耐えながら一口啜る。ああ、うん、やはり味噌は良い。壱は眼を閉じ、その旨味をじっくりと味わう。
懐かしい。たった1日食べられなかっただけなのに。
「ほっほっほ、やはり味噌汁は旨いのう。壱のお陰でまた味噌が食べられる様になって、本当に感謝じゃな」
「そう言って貰えると嬉しいよ。俺も助かった、この世界に大豆、と言うか枝豆があって。じいちゃんの前の代の人に感謝だね」
「それは勿論そうじゃが、壱がおらんかったら、味噌の材料が大豆じゃと言う事も、枝豆の種が大豆じゃと言う事も判らんかったからのう。儂も色々と出来る様になったつもりでおったが、まだまだ知らない事が沢山あるのう」
……おや、以前にも同じ様な話をした様な気がするが。まぁ良いか。
じゃがいももほっくりと煮えている。出汁も染みていて美味しい。
次に、人参と玉ねぎのおかか炒め。鰹節の味に助けられ、風味が良い。歯応えもシャキシャキしていて美味しい。
続けて鮭の塩焼き。箸を入れると、ほろりと身が解れる。口に入れると程良い塩加減。そしてしっとりと焼きあがっていた。
弱火でじっくりと焼いたのが良かった様だ。パサついてしまった魚は美味しく無くなってしまう。それは悲しい出来事である。
最後に白米。まずは何も付けずに白いまま口に運ぶ。ふっくらと艶やか、味わい深い。
次に佃煮を乗せて。甘くて香りの強い白米と味噌味の佃煮の相性は素晴らしい。
やはり米と味噌は毎日食べなければならないと、昨日食べなかったからこそしみじみ思う。
日本人だからでは無い。単に壱が好きなだけである。
「我もお前たちの味覚にすっかりと慣れたカピよ。日本のご飯カピ? 米だ味噌だのと、習慣になって来たカピ」
「これからもいろいろ作るよ。でさ、今日の昼休憩に赤味噌作れないかなと思ってるんだけど。材料は大豆と麹菌と塩。豆味噌だから米とか麦はいらないんだ。大豆で豆麹を作るんだよ」
「おお、味噌の種類が増えるのは嬉しいのう。構わんぞい」
「うむ、ではまた我の時間魔法の出番カピか」
茂造が嬉しそうに眼を細め、サユリが鼻を鳴らす。
「サユリの魔法には本当に助けられてるよ。あれが無かったら、味噌なんて年単位だからね。またよろしくね」
「構わないカピ」
サユリは得意げに言い、また鼻を鳴らした。
「ありがとう」
壱が言うと、サユリは心なしか嬉しそうに眼を伏せた。
朝食の洗い物を茂造に任せ、壱とサユリは裏庭へ。
ガイたちとともに、育成中である米の種籾の植木鉢に水を撒く。まだ芽は出ていない。
それが終わると、以前の職場の手伝いに向かうガイたちを見送り、昼営業の仕込みに加わる。
先日から昼限定でフレンチトーストがメニューに加わったので、パンの量が増え、サントは少し大変そうである。
壱が持ち込んだメニューなので、汗を拭きながらパンを捏ねるサントに詫びると、サントは笑みを浮かべて言ってくれる。
「構わない。あれは旨いから。俺もまた食べたいと思っている」
「そう言ってくれたら嬉しいよ。夜の賄いの時で良かったら、また作るね」
サントは嬉しそうに小さく笑みを浮かべると、またパン作りに集中する。
壱も仕込みを続けなければ。
先日陶製工房で作って貰った擂り鉢を出す。そこにパジルを入れ、擂り粉木で潰して行く。
「やっぱりそれ凄いな! 便利だよな擂り鉢!」
「うん。作って貰って良かったよ」
擂り鉢を受け取った翌日、壱は早速厨房に持ち込んで、バジルソース作りに使ってみた。
その日の朝に使い心地は試していたので不安は無かったが、肝心のバジルソース作りに役立てなければ意味が無い。
しかしそんな心配も何のその。擂り粉木を動かして行けば、バジルは底からあっという間に細かくなって行った。
カリルとサントは歓喜の声を上げた。
「すげー! これだったらすんげー楽になるじゃん! イチありがとうな!」
「……凄いな」
そうして細かくなったバジルをボウルに移し、それを何回か繰り返す。そこにオリーブオイルとにんにくの微塵切り、塩胡椒で調味をし、バジルソースの完成である。
包丁で叩いて作るより余程早い。これは小さな革命である。
さて、昼営業も終わり、休憩に入る。
「じゃあ俺、大豆貰って来る!」
壱は威勢良く言うと、畑に向かって食堂を飛び出して行った。
「いただきます」
「いただくかの」
「いただくカピ」
さて、まずは味噌汁から。スープボウルの淵に口を付け、熱いのを耐えながら一口啜る。ああ、うん、やはり味噌は良い。壱は眼を閉じ、その旨味をじっくりと味わう。
懐かしい。たった1日食べられなかっただけなのに。
「ほっほっほ、やはり味噌汁は旨いのう。壱のお陰でまた味噌が食べられる様になって、本当に感謝じゃな」
「そう言って貰えると嬉しいよ。俺も助かった、この世界に大豆、と言うか枝豆があって。じいちゃんの前の代の人に感謝だね」
「それは勿論そうじゃが、壱がおらんかったら、味噌の材料が大豆じゃと言う事も、枝豆の種が大豆じゃと言う事も判らんかったからのう。儂も色々と出来る様になったつもりでおったが、まだまだ知らない事が沢山あるのう」
……おや、以前にも同じ様な話をした様な気がするが。まぁ良いか。
じゃがいももほっくりと煮えている。出汁も染みていて美味しい。
次に、人参と玉ねぎのおかか炒め。鰹節の味に助けられ、風味が良い。歯応えもシャキシャキしていて美味しい。
続けて鮭の塩焼き。箸を入れると、ほろりと身が解れる。口に入れると程良い塩加減。そしてしっとりと焼きあがっていた。
弱火でじっくりと焼いたのが良かった様だ。パサついてしまった魚は美味しく無くなってしまう。それは悲しい出来事である。
最後に白米。まずは何も付けずに白いまま口に運ぶ。ふっくらと艶やか、味わい深い。
次に佃煮を乗せて。甘くて香りの強い白米と味噌味の佃煮の相性は素晴らしい。
やはり米と味噌は毎日食べなければならないと、昨日食べなかったからこそしみじみ思う。
日本人だからでは無い。単に壱が好きなだけである。
「我もお前たちの味覚にすっかりと慣れたカピよ。日本のご飯カピ? 米だ味噌だのと、習慣になって来たカピ」
「これからもいろいろ作るよ。でさ、今日の昼休憩に赤味噌作れないかなと思ってるんだけど。材料は大豆と麹菌と塩。豆味噌だから米とか麦はいらないんだ。大豆で豆麹を作るんだよ」
「おお、味噌の種類が増えるのは嬉しいのう。構わんぞい」
「うむ、ではまた我の時間魔法の出番カピか」
茂造が嬉しそうに眼を細め、サユリが鼻を鳴らす。
「サユリの魔法には本当に助けられてるよ。あれが無かったら、味噌なんて年単位だからね。またよろしくね」
「構わないカピ」
サユリは得意げに言い、また鼻を鳴らした。
「ありがとう」
壱が言うと、サユリは心なしか嬉しそうに眼を伏せた。
朝食の洗い物を茂造に任せ、壱とサユリは裏庭へ。
ガイたちとともに、育成中である米の種籾の植木鉢に水を撒く。まだ芽は出ていない。
それが終わると、以前の職場の手伝いに向かうガイたちを見送り、昼営業の仕込みに加わる。
先日から昼限定でフレンチトーストがメニューに加わったので、パンの量が増え、サントは少し大変そうである。
壱が持ち込んだメニューなので、汗を拭きながらパンを捏ねるサントに詫びると、サントは笑みを浮かべて言ってくれる。
「構わない。あれは旨いから。俺もまた食べたいと思っている」
「そう言ってくれたら嬉しいよ。夜の賄いの時で良かったら、また作るね」
サントは嬉しそうに小さく笑みを浮かべると、またパン作りに集中する。
壱も仕込みを続けなければ。
先日陶製工房で作って貰った擂り鉢を出す。そこにパジルを入れ、擂り粉木で潰して行く。
「やっぱりそれ凄いな! 便利だよな擂り鉢!」
「うん。作って貰って良かったよ」
擂り鉢を受け取った翌日、壱は早速厨房に持ち込んで、バジルソース作りに使ってみた。
その日の朝に使い心地は試していたので不安は無かったが、肝心のバジルソース作りに役立てなければ意味が無い。
しかしそんな心配も何のその。擂り粉木を動かして行けば、バジルは底からあっという間に細かくなって行った。
カリルとサントは歓喜の声を上げた。
「すげー! これだったらすんげー楽になるじゃん! イチありがとうな!」
「……凄いな」
そうして細かくなったバジルをボウルに移し、それを何回か繰り返す。そこにオリーブオイルとにんにくの微塵切り、塩胡椒で調味をし、バジルソースの完成である。
包丁で叩いて作るより余程早い。これは小さな革命である。
さて、昼営業も終わり、休憩に入る。
「じゃあ俺、大豆貰って来る!」
壱は威勢良く言うと、畑に向かって食堂を飛び出して行った。
11
あなたにおすすめの小説
目立ちたくない召喚勇者の、スローライフな(こっそり)恩返し
gari@七柚カリン
ファンタジー
突然、異世界の村に転移したカズキは、村長父娘に保護された。
知らない間に脳内に寄生していた自称大魔法使いから、自分が召喚勇者であることを知るが、庶民の彼は勇者として生きるつもりはない。
正体がバレないようギルドには登録せず一般人としてひっそり生活を始めたら、固有スキル『蚊奪取』で得た規格外の能力と(この世界の)常識に疎い行動で逆に目立ったり、村長の娘と徐々に親しくなったり。
過疎化に悩む村の窮状を知り、恩返しのために温泉を開発すると見事大当たり! でも、その弊害で恩人父娘が窮地に陥ってしまう。
一方、とある国では、召喚した勇者(カズキ)の捜索が密かに行われていた。
父娘と村を守るため、武闘大会に出場しよう!
地域限定土産の開発や冒険者ギルドの誘致等々、召喚勇者の村おこしは、従魔や息子(?)や役人や騎士や冒険者も加わり順調に進んでいたが……
ついに、居場所が特定されて大ピンチ!!
どうする? どうなる? 召喚勇者。
※ 基本は主人公視点。時折、第三者視点が入ります。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~
サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。
ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。
木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。
そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。
もう一度言う。
手違いだったのだ。もしくは事故。
出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた!
そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて――
※本作は他サイトでも掲載しています
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい
ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。
強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。
ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる