異世界もふもふ食堂〜僕と爺ちゃんと魔法使い仔カピバラの味噌スローライフ〜

山いい奈

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#136 朝食タイムと、擂り鉢の評判

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 さて、茂造が戻って来たので、食事を始める。

「いただきます」

「いただくかの」

「いただくカピ」

 さて、まずは味噌汁から。スープボウルのふちに口を付け、熱いのを耐えながら一口すする。ああ、うん、やはり味噌は良い。壱は眼を閉じ、その旨味をじっくりと味わう。

 懐かしい。たった1日食べられなかっただけなのに。

「ほっほっほ、やはり味噌汁は旨いのう。壱のお陰でまた味噌が食べられる様になって、本当に感謝じゃな」

「そう言って貰えると嬉しいよ。俺も助かった、この世界に大豆、と言うか枝豆があって。じいちゃんの前の代の人に感謝だね」

「それは勿論もちろんそうじゃが、壱がおらんかったら、味噌の材料が大豆じゃと言う事も、枝豆の種が大豆じゃと言う事も判らんかったからのう。儂も色々と出来る様になったつもりでおったが、まだまだ知らない事が沢山あるのう」

 ……おや、以前にも同じ様な話をした様な気がするが。まぁ良いか。

 じゃがいももほっくりと煮えている。出汁も染みていて美味しい。

 次に、人参と玉ねぎのおかか炒め。鰹節の味に助けられ、風味が良い。歯応えもシャキシャキしていて美味しい。

 続けて鮭の塩焼き。箸を入れると、ほろりと身が解れる。口に入れると程良い塩加減。そしてしっとりと焼きあがっていた。

 弱火でじっくりと焼いたのが良かった様だ。パサついてしまった魚は美味しく無くなってしまう。それは悲しい出来事である。

 最後に白米。まずは何も付けずに白いまま口に運ぶ。ふっくらと艶やか、味わい深い。

 次に佃煮を乗せて。甘くて香りの強い白米と味噌味の佃煮の相性は素晴らしい。

 やはり米と味噌は毎日食べなければならないと、昨日食べなかったからこそしみじみ思う。

 日本人だからでは無い。単に壱が好きなだけである。

「我もお前たちの味覚にすっかりと慣れたカピよ。日本のご飯カピ? 米だ味噌だのと、習慣になって来たカピ」

「これからもいろいろ作るよ。でさ、今日の昼休憩に赤味噌作れないかなと思ってるんだけど。材料は大豆と麹菌きくきんと塩。豆味噌だから米とか麦はいらないんだ。大豆で豆麹まめこうじを作るんだよ」

「おお、味噌の種類が増えるのは嬉しいのう。構わんぞい」

「うむ、ではまた我の時間魔法の出番カピか」

 茂造が嬉しそうに眼を細め、サユリが鼻を鳴らす。

「サユリの魔法には本当に助けられてるよ。あれが無かったら、味噌なんて年単位だからね。またよろしくね」

「構わないカピ」

 サユリは得意げに言い、また鼻を鳴らした。

「ありがとう」

 壱が言うと、サユリは心なしか嬉しそうに眼を伏せた。



 朝食の洗い物を茂造に任せ、壱とサユリは裏庭へ。

 ガイたちとともに、育成中である米の種籾たねもみの植木鉢に水をく。まだ芽は出ていない。

 それが終わると、以前の職場の手伝いに向かうガイたちを見送り、昼営業の仕込みに加わる。

 先日から昼限定でフレンチトーストがメニューに加わったので、パンの量が増え、サントは少し大変そうである。

 壱が持ち込んだメニューなので、汗を拭きながらパンを捏ねるサントに詫びると、サントは笑みを浮かべて言ってくれる。

「構わない。あれは旨いから。俺もまた食べたいと思っている」

「そう言ってくれたら嬉しいよ。夜の賄いの時で良かったら、また作るね」

 サントは嬉しそうに小さく笑みを浮かべると、またパン作りに集中する。

 壱も仕込みを続けなければ。

 先日陶製工房で作って貰ったり鉢を出す。そこにパジルを入れ、擂り粉木すりこぎつぶして行く。

「やっぱりそれ凄いな! 便利だよな擂り鉢!」

「うん。作って貰って良かったよ」

 擂り鉢を受け取った翌日、壱は早速厨房に持ち込んで、バジルソース作りに使ってみた。

 その日の朝に使い心地は試していたので不安は無かったが、肝心のバジルソース作りに役立てなければ意味が無い。

 しかしそんな心配も何のその。擂り粉木を動かして行けば、バジルは底からあっという間に細かくなって行った。

 カリルとサントは歓喜の声を上げた。

「すげー! これだったらすんげー楽になるじゃん! イチありがとうな!」

「……凄いな」

 そうして細かくなったバジルをボウルに移し、それを何回か繰り返す。そこにオリーブオイルとにんにくの微塵みじん切り、塩胡椒こしょうで調味をし、バジルソースの完成である。

 包丁で叩いて作るより余程早い。これは小さな革命である。



 さて、昼営業も終わり、休憩に入る。

「じゃあ俺、大豆貰って来る!」

 壱は威勢良く言うと、畑に向かって食堂を飛び出して行った。
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