異世界もふもふ食堂〜僕と爺ちゃんと魔法使い仔カピバラの味噌スローライフ〜

山いい奈

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#146 米の種籾の芽吹き

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 米の種籾たねもみが芽吹き始めた。土の中からひょっこりと覗いた緑の芽は、しっかりと、艶々つやつやとそびえ立っていた。

「おおー!」

 壱はガイたちとともに表情を輝かせて歓声を上げる。

「芽が出ましたね!」

 ガイが嬉しそうに言う。ジェンたちも嬉しそうだ。

「これが15センチほどになるまで育てます。そしたら田んぼに植えますよ。後一息です!」

「じゃあそれまでまた水をりますかー。楽しみですねー」

「そうっすね! 半年で刈り取れるんすよね? うわー楽しみだな!」

 ナイルとジェンが笑顔で言い、リオンも口角を上げて頷く。

「芽が出たら結構早いと思います。まだ水遣りの毎日で退屈かも知れないですけど、もう少し、よろしくお願いします」

 壱が言い頭を下げると、ガイたちはやや慌てた様に壱に寄る。

「勿論ですよイチくん。それに退屈なんて事もありません。これからが楽しみです」

「そうっすよ! 育つのが楽しみっすよ!」

「ですよねー。新しいものが食べられるかと思うと、楽しみでならないですよねー」

 ジェンもナイルも楽しそうに言い、リオンも頷いた。

「俺も食べて貰えるのが楽しみです。頑張って美味しい米を育てましょう!」

「おー!」

 みんなは意気揚々と拳を振り上げた。



 食堂の昼営業が終わり、壱とサユリは陶製工房へと向かう。フジノに話を聞く為だ。

「ねぇサユリ、俺が一緒に行っても大丈夫かな。サユリひとり、ひとり? 1匹? なら話してくれるかも知れないけど、俺が一緒じゃ、話してくれるものもくれないんじゃ無い?」

 壱が心配して訊くと、サユリは済ました顔で応える。

「大丈夫カピよ。壱は不思議と人に警戒心を抱かせないカピ。以前にも言ったカピが。我の横でにこにこしていたら良いカピよ」

「そ、そんなものなのかなぁ……」

 壱の懸念けねんは完全に拭えないが、サユリがそう言うのなら、信じるしか無い。

 さて、陶製工房に到着。ドアから壱が「こんにちは!」と声を掛けると、中から聞こえてきた「どうぞー!」と言う声は、お馴染みシルルのもの。

 ドアを開ける。

「こんにちは」

「邪魔するカピ」

「いらっしゃい! 今日は何を作ろうか!」

 威勢の良い事である。

「違うカピよ。今日はフジノに用があるのだカピ」

「あらそうなの? ちょっと待ってて。フジノー」

 シルルは言うと奥のドアを開けて、声を掛ける。するとそこからひとりの女性が顔を覗かせた。

「はい」

 小さな声の返事。だがただ小さなだけで、語尾もはっきりしていて、やはりただ大人しい女性なのだと言う印象。気弱だとか、その様な感じはしない。

 眼も輝いていて、意思の強さが見て取れた。

「サユリさんとイチくんがご用だって」

「ありがとうございます。じゃあ少し出て来ますね」

「はーい。ゆっくりで大丈夫だからね!」

「はい。ありがとうございます」

 フジノはシルルに小さく頭を下げると、小走りで壱たちの元へ。

「お待たせしました。では外へ」

 フジノにうながされ、壱たちは外へ。建物の脇に置かれているベンチに、壱、サユリ、フジノの並びで腰掛けた。

「どうしました? 何かありましたか?」

 フジノの静かな問いに、壱とサユリは眼を見合わせ、サユリが口を開いた。

「昨夜、マルタから相談があったカピよ」

「ああ……」

 それだけで思い至った様で、フジノは右手で口を押さえた。
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