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#11 営業準備をしましょう。その1
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「こんにちはー!」
壱たちがご飯を堪能しているところに、元気な声が響く。壱たちは綺麗に空いたサラダボウルを調理台に置いて、フロアに出た。
「夜もよろしくお願いしまーす! あれ、何か良い匂い? あ、新顔いた!」
食堂のドアから飛び込んで来た女の子は、鼻をひくつかせたが、壱を見ると間髪入れず飛び付いて来た。バランスを崩しそうになるが、踏ん張ってそれに耐える。
「これこれメリアン、壱が驚いておるじゃろが」
「ごめんなさーい。で、この子が店長さんの孫?」
言葉では詫びているが、軽い調子であまり反省は感じられない。
「そうじゃ。壱と言う。儂の元の世界からサユリさんが連れて来てくれたんじゃよ」
「さっきシェムスから聞いたんだー よろしくね、イチ! ボクはメリアン!」
ここはよろしくと応えるところなのだろうか。そう考える程に壱は混乱した。突然見知らぬ女の子に抱き付かれて、冷静にいられる人間がいるものか。
「あの、ごめん、離してもらえるかな」
壱はようやくそれだけを言えた。
「あはは、ごめーん」
やはり軽く言われ、しかし離してはくれた。
顎で切り揃えられた茶色いボブカットが快活そうな印象で、ミニ丈の赤いタータンチェックのフレアスカートと黒のハイソックスがそれを更に強めている。すらりと伸びた、細くて長い足。
トップスは黒のチューブトップで、露出している肩も腕も華奢だった。
肌の色は白く、耳が横に長く、先が尖っている。人間では無いのだろうか。何せカピバラが喋って魔法が使える世界だ。人間以外の種族も存在するのだろう。
「ボクはメリアン。ここのホール係だよ! あ、名前はさっき言ったね。18歳だよ! 多分イチより年下かな? よろしくね! お酒が大好きなエルフの男の子だよ!」
「男!?」
すっかり女の子だと思っていたので、壱は驚いた。
「壱が間違えるのも無理は無いのう。メリアンたちエルフは、男も女も中性的な顔立ちでのう、女の子が男の格好してたり、男の子が女の格好してたりも多いんじゃ」
「男の格好してる男のエルフもいるけどさ、ま、格好良いとは思うんだけど、こっちの方が可愛いじゃん? ボクはこっちの格好の方が好き。スカートもひらひらしてて良いよね!」
「そ、そうなんだ」
昨今は壱の世界でも女装する男性や、心と身体の性が一致しない人間などが表立って来ているが、壱の周りにはいなかった。もちろん女装男子を肉眼で見た事も無かった。
しかしこのメリアンには、全く違和感が無かった。チューブトップ越しなので、胸のサイズも判りにくい。本人が言ってくれなければ、そして誰も教えてくれなければ、壱はメリアンを女の子だと疑わなかっただろう。
「どしたの? イチ。ポカンとしちゃって」
そう言いながら壱を覗き込む仕草も、女性そのものに見えた。
「いや、何でも」
一人称がボクであるのに、女装して、ヘアスタイルも仕草も女性そのもの。本人がどちらの性に見られたがっているのか判らないので、壱は触れない事に決めた。
もしかしたらエルフのメリアンにとっては、どうでも良い事なのかも知れない。種族が違えば、例え同じでも、考え方はそれぞれ。当たり前の事だ。
「ま、いいや。じゃあ、イチがこの食堂の店長さんになるんだね? 料理得意だったりするの?」
「い、いや、俺はまだこれからで」
「そっかー。じゃあ店長さんとかサントとかカリルとかに習うと良いよ。みんな料理巧いから!」
サントにカリルと、また知らない名前が出る。それにも戸惑うが、いかんせんメリアンの勢いに押されて壱は若干退くしか無かった。
「さて、そろそろ夜の仕込みを始めるかの。メリアン、お前さんこの時間に来たからには、手伝ってもらうからの」
そう言いながら茂造が厨房に向かおうとすると、メリアンの眼が泳ぐ。
「あ、あー、ボク用事を思い出しちゃった! じゃ、また後で!」
そう言いながら、颯爽と食堂を出て行ってしまった。
「相変わらずあいつはろくでも無いカピな」
「料理は苦手だと言っていたからのう」
メリアンを見送りながら、茂造とサユリは苦笑する。
本来ならメリアンが出社する時間では無かった様だ。ただの壱への好奇心か。
その時、今度は外側からドアが開いた。
壱たちがご飯を堪能しているところに、元気な声が響く。壱たちは綺麗に空いたサラダボウルを調理台に置いて、フロアに出た。
「夜もよろしくお願いしまーす! あれ、何か良い匂い? あ、新顔いた!」
食堂のドアから飛び込んで来た女の子は、鼻をひくつかせたが、壱を見ると間髪入れず飛び付いて来た。バランスを崩しそうになるが、踏ん張ってそれに耐える。
「これこれメリアン、壱が驚いておるじゃろが」
「ごめんなさーい。で、この子が店長さんの孫?」
言葉では詫びているが、軽い調子であまり反省は感じられない。
「そうじゃ。壱と言う。儂の元の世界からサユリさんが連れて来てくれたんじゃよ」
「さっきシェムスから聞いたんだー よろしくね、イチ! ボクはメリアン!」
ここはよろしくと応えるところなのだろうか。そう考える程に壱は混乱した。突然見知らぬ女の子に抱き付かれて、冷静にいられる人間がいるものか。
「あの、ごめん、離してもらえるかな」
壱はようやくそれだけを言えた。
「あはは、ごめーん」
やはり軽く言われ、しかし離してはくれた。
顎で切り揃えられた茶色いボブカットが快活そうな印象で、ミニ丈の赤いタータンチェックのフレアスカートと黒のハイソックスがそれを更に強めている。すらりと伸びた、細くて長い足。
トップスは黒のチューブトップで、露出している肩も腕も華奢だった。
肌の色は白く、耳が横に長く、先が尖っている。人間では無いのだろうか。何せカピバラが喋って魔法が使える世界だ。人間以外の種族も存在するのだろう。
「ボクはメリアン。ここのホール係だよ! あ、名前はさっき言ったね。18歳だよ! 多分イチより年下かな? よろしくね! お酒が大好きなエルフの男の子だよ!」
「男!?」
すっかり女の子だと思っていたので、壱は驚いた。
「壱が間違えるのも無理は無いのう。メリアンたちエルフは、男も女も中性的な顔立ちでのう、女の子が男の格好してたり、男の子が女の格好してたりも多いんじゃ」
「男の格好してる男のエルフもいるけどさ、ま、格好良いとは思うんだけど、こっちの方が可愛いじゃん? ボクはこっちの格好の方が好き。スカートもひらひらしてて良いよね!」
「そ、そうなんだ」
昨今は壱の世界でも女装する男性や、心と身体の性が一致しない人間などが表立って来ているが、壱の周りにはいなかった。もちろん女装男子を肉眼で見た事も無かった。
しかしこのメリアンには、全く違和感が無かった。チューブトップ越しなので、胸のサイズも判りにくい。本人が言ってくれなければ、そして誰も教えてくれなければ、壱はメリアンを女の子だと疑わなかっただろう。
「どしたの? イチ。ポカンとしちゃって」
そう言いながら壱を覗き込む仕草も、女性そのものに見えた。
「いや、何でも」
一人称がボクであるのに、女装して、ヘアスタイルも仕草も女性そのもの。本人がどちらの性に見られたがっているのか判らないので、壱は触れない事に決めた。
もしかしたらエルフのメリアンにとっては、どうでも良い事なのかも知れない。種族が違えば、例え同じでも、考え方はそれぞれ。当たり前の事だ。
「ま、いいや。じゃあ、イチがこの食堂の店長さんになるんだね? 料理得意だったりするの?」
「い、いや、俺はまだこれからで」
「そっかー。じゃあ店長さんとかサントとかカリルとかに習うと良いよ。みんな料理巧いから!」
サントにカリルと、また知らない名前が出る。それにも戸惑うが、いかんせんメリアンの勢いに押されて壱は若干退くしか無かった。
「さて、そろそろ夜の仕込みを始めるかの。メリアン、お前さんこの時間に来たからには、手伝ってもらうからの」
そう言いながら茂造が厨房に向かおうとすると、メリアンの眼が泳ぐ。
「あ、あー、ボク用事を思い出しちゃった! じゃ、また後で!」
そう言いながら、颯爽と食堂を出て行ってしまった。
「相変わらずあいつはろくでも無いカピな」
「料理は苦手だと言っていたからのう」
メリアンを見送りながら、茂造とサユリは苦笑する。
本来ならメリアンが出社する時間では無かった様だ。ただの壱への好奇心か。
その時、今度は外側からドアが開いた。
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