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#10 塩味も悪く無い
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壱は気になってサユリに聞いてみる。
「なぁサユリ、これ、どこの米だ?」
聞くと、口の周りに米粒を付けたサユリが顔を上げた。
「魚沼のコシヒカリカピ。この米が1番上等だと、我のリサーチ結果カピ」
そりゃ旨いはずだよ! 日本有数のブランド米だよ! 全体数も多く無いだろうに、そこから種もみを……壱は何が何でもこの世界で繋いで行こうと心に決めた。
「リサーチって、どこで」
「深夜に図書館に忍び込み、農業新聞読んだカピ。色々な品種の米を見たカピが、やはり魚沼のコシヒカリが鉄板だとあったカピ」
あああ農業新聞……某アイドルが購読しているというあの……
「うむ、これは育てたらこの村の主食になり得るものカピね。後で、まずは田んぼを作るカピ。茂造、どこかに土地はあるカピ?」
「確か東に空いてるところがあった筈じゃ。しかし田んぼにするには小さいかのう」
「2個所までなら分散しても良いカピ。他はどうカピ?」
「北かの。東よりは少し狭いがの」
「ふむ。後で見に行くカピ。茂造の言う事だから大丈夫だとは思うがカピ」
茂造とサユリは、次々とこの米を育てる算段を進めて行く。土地だの何だの、それらは持ち主あっての事だろうに。
壱は思ったままを口にすると、サユリはしれっと言った。
「問題無いカピ。なぜなら、ここの表向き村長は茂造で、真の村長は我カピ」
「はぁ!?」
いくら魔法使いで知性があっても、カピバラが、動物が村長の村!
「いいのかよそれで!」
壱が突っ込むと、サユリは溜め息を吐く。
「うむ、人間どもはやはりそういう反応をすると思ったので、表向きに人間を据えたカピ。我はそもそもこの村の創始者カピ。それ故我が選んだ人間なら、異世界人でも村人から信用してもらえるカピ」
「創始者って、え、サユリがこの村を作ったのか?」
「そうカピ」
それはさすがに驚きを禁じ得ない。いくら何でも動物が村を興し、管理するなんて、壱の常識からなら考えられない事だ。
ああ、だがさっきサユリは言っていた。魔法使いはこの国ではかなり重宝されているのだと。
「我と、もうひとりの人間で興したのだカピ。ただ人間には寿命があるカピ。だからその人間の死後は我が後を継いで、思うところあり異世界から人間を呼んで、食堂経営と村長を兼任させて、今に至るカピ」
要点を得ている様で、突っ込みどころは多い。だがこれ以上は壱の頭が処理仕切れない。おいおい聞いて行く事にしよう。
「ところでじいちゃん、母さんは今でもじいちゃんの事探してるよ」
壱が言うと、茂造はしょんぼりと項垂れた。
「そうか……三枝子には悪い事をしたのう」
そう言いつつ、ご飯を口に運ぶ手は止まらない。
三枝子は壱の母であり、茂造の娘である。家族経営で成り立っている相葉味噌の当時の長男、要は壱の父親と結婚し、家に入り、姑や舅と渡り合って来た気丈な三枝子だったが、茂造の行方不明にはさすがに取り乱した。
ちなみに茂造の細君は茂造の行方不明1ヶ月前に病気で世を去っている。だから余計に三枝子にダメージを与えたのだ。
「その上で、息子の俺まで行方不明扱いになると思うんだけど。母さん無事ならいいけど」
「それはもう、祈るしか無いのう」
あっけらかんと言われる。他人事か! そう突っ込みたいところだが、もうどうしようも無い。
とりあえず茂造の無事は確認出来たのだし、壱も元気だ。どうかそれが母親に少しでも届きます様に。柚絵……妹よ、そして父さん、どうか母さんを頼む。
壱もまた、茂造ほどにこの世界にいると、そう割り切る事が出来る様になるのだろうか。それが良い事なのか悪い事なのか、壱には判らない。
壱はまたご飯を口に含むと、呟いた。
「……旨い」
少し塩味を感じた気がした。
「なぁサユリ、これ、どこの米だ?」
聞くと、口の周りに米粒を付けたサユリが顔を上げた。
「魚沼のコシヒカリカピ。この米が1番上等だと、我のリサーチ結果カピ」
そりゃ旨いはずだよ! 日本有数のブランド米だよ! 全体数も多く無いだろうに、そこから種もみを……壱は何が何でもこの世界で繋いで行こうと心に決めた。
「リサーチって、どこで」
「深夜に図書館に忍び込み、農業新聞読んだカピ。色々な品種の米を見たカピが、やはり魚沼のコシヒカリが鉄板だとあったカピ」
あああ農業新聞……某アイドルが購読しているというあの……
「うむ、これは育てたらこの村の主食になり得るものカピね。後で、まずは田んぼを作るカピ。茂造、どこかに土地はあるカピ?」
「確か東に空いてるところがあった筈じゃ。しかし田んぼにするには小さいかのう」
「2個所までなら分散しても良いカピ。他はどうカピ?」
「北かの。東よりは少し狭いがの」
「ふむ。後で見に行くカピ。茂造の言う事だから大丈夫だとは思うがカピ」
茂造とサユリは、次々とこの米を育てる算段を進めて行く。土地だの何だの、それらは持ち主あっての事だろうに。
壱は思ったままを口にすると、サユリはしれっと言った。
「問題無いカピ。なぜなら、ここの表向き村長は茂造で、真の村長は我カピ」
「はぁ!?」
いくら魔法使いで知性があっても、カピバラが、動物が村長の村!
「いいのかよそれで!」
壱が突っ込むと、サユリは溜め息を吐く。
「うむ、人間どもはやはりそういう反応をすると思ったので、表向きに人間を据えたカピ。我はそもそもこの村の創始者カピ。それ故我が選んだ人間なら、異世界人でも村人から信用してもらえるカピ」
「創始者って、え、サユリがこの村を作ったのか?」
「そうカピ」
それはさすがに驚きを禁じ得ない。いくら何でも動物が村を興し、管理するなんて、壱の常識からなら考えられない事だ。
ああ、だがさっきサユリは言っていた。魔法使いはこの国ではかなり重宝されているのだと。
「我と、もうひとりの人間で興したのだカピ。ただ人間には寿命があるカピ。だからその人間の死後は我が後を継いで、思うところあり異世界から人間を呼んで、食堂経営と村長を兼任させて、今に至るカピ」
要点を得ている様で、突っ込みどころは多い。だがこれ以上は壱の頭が処理仕切れない。おいおい聞いて行く事にしよう。
「ところでじいちゃん、母さんは今でもじいちゃんの事探してるよ」
壱が言うと、茂造はしょんぼりと項垂れた。
「そうか……三枝子には悪い事をしたのう」
そう言いつつ、ご飯を口に運ぶ手は止まらない。
三枝子は壱の母であり、茂造の娘である。家族経営で成り立っている相葉味噌の当時の長男、要は壱の父親と結婚し、家に入り、姑や舅と渡り合って来た気丈な三枝子だったが、茂造の行方不明にはさすがに取り乱した。
ちなみに茂造の細君は茂造の行方不明1ヶ月前に病気で世を去っている。だから余計に三枝子にダメージを与えたのだ。
「その上で、息子の俺まで行方不明扱いになると思うんだけど。母さん無事ならいいけど」
「それはもう、祈るしか無いのう」
あっけらかんと言われる。他人事か! そう突っ込みたいところだが、もうどうしようも無い。
とりあえず茂造の無事は確認出来たのだし、壱も元気だ。どうかそれが母親に少しでも届きます様に。柚絵……妹よ、そして父さん、どうか母さんを頼む。
壱もまた、茂造ほどにこの世界にいると、そう割り切る事が出来る様になるのだろうか。それが良い事なのか悪い事なのか、壱には判らない。
壱はまたご飯を口に含むと、呟いた。
「……旨い」
少し塩味を感じた気がした。
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