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1章 碧、前職で奮闘する
第7話 店長候補がやってきた
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2月になり、碧は勤め先の店舗の店長に就任した。いちスタッフだったときとは違う業務、レジの開け閉めや売り上げ確認、その他諸々が押し寄せてきて、慣れるまでは大変だった。
もちろん、琴平元店長はしっかりと引き継ぎをしてくれた。碧も何度も実際にやらせてもらった。だが琴平元店長が一緒だったのと、ひとりでやるのとでは、作業量も責任も違う。数週間は胃がしくしくしたりした。多分ストレスもあったのだろう。
それでも田所さんと協力しながら、店舗運営に尽力した。そのうち少しずつではあるが慣れてきて、胃も落ち着き、未熟ながらも店長としての職責を果たせる様になっていった。
この店舗、お客さまへの矢面に立つのも店長のお仕事だ。いちゃもん、もとい、クレームを入れられて頭を下げることだってある。大抵は理不尽なことが多く、辛い気持ちになった。
それでも踏ん張るしか無いのだ。この店長という役職は、絶対に碧の糧になる。碧は「とくら食堂」を継ぎたいと思っているのだ。それが実現できてからも、こんなことはあるのだろうから。
そして4月。春になり、桜が開き、温かな風が吹くころ。店長候補の社員が移動してきた。
「春日井です。よろしくお願いします」
配属日の朝、そう挨拶をしてくれた春日井さんは、さらりとしたブラウンの髪を前下がりカットにし、きりっとした、いわゆるシゴデキに見えた。しとやかに頭を下げられ、碧は思わず怯んでしまうが。
「店長の都倉です。よろしくお願いします」
「田所です。こちらこそよろしくお願いします」
碧と田所さんは揃って頭を下げる。
「ほんまにこちらこそです。野心むき出しみたいで引かれるかも知れんですけど、わたし、ずっと店長になりたくて!」
春日井さんはそう言いながら、屈託無く明るく笑う。碧の主観だが、そこに裏がある様には見えなかった。がらりと印象が変わり、なんだかほっとする。
「めっちゃ元気でええですね! 向上心素晴らしいです。あらためて、よろしくお願いします」
それから開店までの時間、普段の業務をこなしながら、碧は春日井さんにお仕事内容を伝えていく。基本はどの店舗も似た様なものだが、やはり細かいルールなどは店舗によって違ったりする。
「ご存知やと思うんですけど、わたしはいずれ、実家の定食屋を継ぐために退職します。そのときには、春日井さんにこの店舗をお任せすることになると思います。いつになるかはまだ分からんのですけど。その際にはよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします。店長にはなりたいですけど、わたしはまだまだ不勉強で。まずはこの店舗のことをもっと教えてください。わたし、前の店舗は新卒で入って、結局おったんは半年ぐらいでしたかね? おおまかなお仕事はどの店舗も共通してるとは思いますけど、細かいとこがちゃうなぁって思います。少しでも早く一人前になりたいです」
春日井さんは言って、力強くこぶしを握る。何て頼もしい。良い人がきてくれたと碧は嬉しくなった。
「春日井さんは、ここには大学を出はってからですか?」
「そうです。4年制大学出てます」
「わたしは去年の新卒で、2年制の専門学校やったんで、今年22歳になるんですよ。春日井さんがお姉さんですね」
すると春日井さんは「あ、そうなんですね!」と目を丸くした。
「わたしは24歳です。都倉店長、お若いのに凄いです。わたしももっとしっかりせんと」
少し前のめりの気があるかな? とほんの少し心配になる。だがそれが功を奏することだってある。春日井さんは店長候補として入社してきているのだから、人事の見極めを信じることにしよう。
それから春日井さんは順調にお仕事を覚えていき、お客さま絡みの小さなトラブルが起こりつつも、淀屋橋店はつつがなく営業していた。
そして、碧が店長になってから3年が経とうとしている。年が明け、今は1月に入ったばかりの冬真っ只中。お日さまの恵みが受けづらい日々が続いている。
今朝も碧は「とくら食堂」に向かう。「とくら食堂」は大晦日とお正月の三が日は休日になっていた。碧は変わらずお仕事だったので、お家でお父さんが朝ごはんを作ってくれた。
なので、「とくら食堂」での朝ごはんは、少しばかりご無沙汰だった。もちろんお家で食べてもお父さんの朝ごはんは美味しい。けれど「とくら食堂」で食べると、特別な感じがするのだ。
碧はスキップでもしそうな軽い足取りで、歩を進めていった。
もちろん、琴平元店長はしっかりと引き継ぎをしてくれた。碧も何度も実際にやらせてもらった。だが琴平元店長が一緒だったのと、ひとりでやるのとでは、作業量も責任も違う。数週間は胃がしくしくしたりした。多分ストレスもあったのだろう。
それでも田所さんと協力しながら、店舗運営に尽力した。そのうち少しずつではあるが慣れてきて、胃も落ち着き、未熟ながらも店長としての職責を果たせる様になっていった。
この店舗、お客さまへの矢面に立つのも店長のお仕事だ。いちゃもん、もとい、クレームを入れられて頭を下げることだってある。大抵は理不尽なことが多く、辛い気持ちになった。
それでも踏ん張るしか無いのだ。この店長という役職は、絶対に碧の糧になる。碧は「とくら食堂」を継ぎたいと思っているのだ。それが実現できてからも、こんなことはあるのだろうから。
そして4月。春になり、桜が開き、温かな風が吹くころ。店長候補の社員が移動してきた。
「春日井です。よろしくお願いします」
配属日の朝、そう挨拶をしてくれた春日井さんは、さらりとしたブラウンの髪を前下がりカットにし、きりっとした、いわゆるシゴデキに見えた。しとやかに頭を下げられ、碧は思わず怯んでしまうが。
「店長の都倉です。よろしくお願いします」
「田所です。こちらこそよろしくお願いします」
碧と田所さんは揃って頭を下げる。
「ほんまにこちらこそです。野心むき出しみたいで引かれるかも知れんですけど、わたし、ずっと店長になりたくて!」
春日井さんはそう言いながら、屈託無く明るく笑う。碧の主観だが、そこに裏がある様には見えなかった。がらりと印象が変わり、なんだかほっとする。
「めっちゃ元気でええですね! 向上心素晴らしいです。あらためて、よろしくお願いします」
それから開店までの時間、普段の業務をこなしながら、碧は春日井さんにお仕事内容を伝えていく。基本はどの店舗も似た様なものだが、やはり細かいルールなどは店舗によって違ったりする。
「ご存知やと思うんですけど、わたしはいずれ、実家の定食屋を継ぐために退職します。そのときには、春日井さんにこの店舗をお任せすることになると思います。いつになるかはまだ分からんのですけど。その際にはよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします。店長にはなりたいですけど、わたしはまだまだ不勉強で。まずはこの店舗のことをもっと教えてください。わたし、前の店舗は新卒で入って、結局おったんは半年ぐらいでしたかね? おおまかなお仕事はどの店舗も共通してるとは思いますけど、細かいとこがちゃうなぁって思います。少しでも早く一人前になりたいです」
春日井さんは言って、力強くこぶしを握る。何て頼もしい。良い人がきてくれたと碧は嬉しくなった。
「春日井さんは、ここには大学を出はってからですか?」
「そうです。4年制大学出てます」
「わたしは去年の新卒で、2年制の専門学校やったんで、今年22歳になるんですよ。春日井さんがお姉さんですね」
すると春日井さんは「あ、そうなんですね!」と目を丸くした。
「わたしは24歳です。都倉店長、お若いのに凄いです。わたしももっとしっかりせんと」
少し前のめりの気があるかな? とほんの少し心配になる。だがそれが功を奏することだってある。春日井さんは店長候補として入社してきているのだから、人事の見極めを信じることにしよう。
それから春日井さんは順調にお仕事を覚えていき、お客さま絡みの小さなトラブルが起こりつつも、淀屋橋店はつつがなく営業していた。
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今朝も碧は「とくら食堂」に向かう。「とくら食堂」は大晦日とお正月の三が日は休日になっていた。碧は変わらずお仕事だったので、お家でお父さんが朝ごはんを作ってくれた。
なので、「とくら食堂」での朝ごはんは、少しばかりご無沙汰だった。もちろんお家で食べてもお父さんの朝ごはんは美味しい。けれど「とくら食堂」で食べると、特別な感じがするのだ。
碧はスキップでもしそうな軽い足取りで、歩を進めていった。
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