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4章 偏食お嬢さんと、血液を作るご飯
第12話 これから晩飯の支度なんだが、食ってくか?
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「マリナ、食べられるもんがいろいろ増えたみたいだぜ」
出勤して来たカロムの台詞である。
「ほら、灰汁抜きやら何やら教えただろ。あれが効いてるみたいだ。それでもセロリなんかはまだ無理みたいだがな」
「良かった。セロリは癖が強いから難しいよね。無理はしなくて良いと思う。あれからしんどくなったりしてないのかな」
「大丈夫みたいだ。話聞いてみたら、あそこまで酷くなる前も目眩はあったみたいなんだが、今はそれも大分ましになったってよ。勿論薬の効果も大きいんだが」
「そうだと嬉しいのですカピ。マリナさんは酷い症状だったので、お薬も多めに処方されている筈なのですカピ。徐々にでも量を減らす事が出来たら良いと思うのですカピ」
「そうだな。これで益々食の大切さってもんを思い知らされた気がするぜ。俺も気を付けよう」
「僕もロロアもね」
さてドライカレーの昼食を摂り、珈琲を煎れて一息吐いていた時。電話が呼び出し音を立てた。
「はい、こちら錬金術師の研究所です」
カロムが出ると、それから二言三言会話が交わされて、通話は切られた。
「クリントだった。血液検査を頼みたいってさ。貧血の」
「分かりましたカピ。準備をしておきますカピ」
「手伝うよ」
浅葱とロロアは立ち上がり、研究室へと入った。
数十分後、小さなトランクを抱えたクリントが到着した。
「こんにちは。よろしくお願いします」
「はいカピ。準備は出来ていますカピ。研究室へどうぞですカピ。それはもしかして、マリナさんの血液なのですカピ?」
「そうです。最近かなり調子が良い様で、爺ちゃんが再検査をしてみようと」
「そうですカピか。良い結果が出ると良いですカピ」
そうしてカロムも連なって研究室へ。
血液検査に必要な薬剤は既に出してある。ロロアはクリントがトランクから取り出した小瓶からスポイトで血液を吸い出し、プレートに垂らす。そこに薬剤を振り掛けた。
すると僅かに赤黒かった血液は、まるで宝石の様な赤色に輝いた。
「大分改善されていますカピ! この分ならお薬を減らしても大丈夫そうですカピ」
「本当ですね! 綺麗な赤色だ。マリナが言ってたんですが、何やら食生活もアサギさんのお陰で大分改善出来たと」
「そんな大層な事では無いんですが、貧血を改善する食材を教えたりしました。それを意識して食べてくれたんだと思います」
「そうなんですね。今まで考えた事も無かったですけど、食事ってやっぱり大事なんですねぇ」
クリントは朝のカロムの様にしみじみと言うと、「ありがとうございました!」と笑顔で帰って行った。
「マリナさん良かったね、もう大丈夫なんだね」
「まだ薬は飲んだ方が良いだろうがな。薬のお陰もあっての結果だからな。徐々に減らしながら様子を見て行くってところだろうさ」
「そうですカピね。この結果に慢心しては危ないのですカピ。まだお薬は欠かさず飲んでいただいて、ご飯もきちんと食べて欲しいのですカピ」
「そっか、そうだよね。お薬が減るんだったら、益々ご飯が大事になるかも。僕、またお料理考えてみようかな」
「良いんじゃ無いか? ルビアおばさんも喜ぶと思うぜ」
「試作をしてくれるのなら、楽しみなのですカピ」
「勿論だよ。何にしようかなぁ」
浅葱は様々な食材を頭に浮かべ、楽しげに笑みを浮かべた。
同じ日、夕方に差し掛かろうという時間。カロムが買い物から戻り、そろそろ夕飯の支度をしようかと言う頃。
ドアの呼び鈴が鳴った。
「はーい、どちらさん?」
カロムがドア越しに声を掛けると、「マリナです」と返って来た。
ドアを開けると、にこにこと笑みを浮かべるマリナと、その後ろにはまた笑顔のマルスがいた。
「おう、どうした。まぁ入れよ」
「お邪魔します。あのね!」
入って来るなりマリナは興奮した様に捲し立てる。
「今日アントン先生に診て貰ったら、凄い改善してるんだって! だから早く知らせたくて!」
そんなマリナにカロムはやや苦笑してしまう。
「知ってるよ。血液検査をしたのはロロアなんだぜ。俺もその場にいたんだからよ」
「あ、そうだった、血液検査は錬金術師さまがするんだった」
そこでマリナは少し落ち着きを取り戻す。
「でも良かったじゃ無いか。ともかく座れよ。マルスも。仕事帰りか?」
「うん。あ、アサギくんこんにちは」
「こんにちは」
夕飯の支度をしようと入っていた台所から出て来た浅葱は、マリナとマルスの挨拶に「こんにちは」と返す。
「アサギくんが教えてくれた調理法とかお料理のお陰で、貧血が本当に改善されたよ。本当にありがとう」
マリナは言うと、深く頭を下げた。浅葱は慌てる。
「ああ、止めてください。良くなって本当に良かったよ。マリナさんも頑張ったもんね。僕も少しでもお役に立てたなら僕も嬉しい」
「それは勿論!」
マリナは顔を上げると、にっこりと笑う。そしてきょろきょろと室内を見渡す。
「錬金術師さまは?」
「ああ、研究室だ。呼んで来るな」
「あ、お忙しいなら良いよ。お薬とかのお礼を言いたかったんだけど」
「大丈夫だ。おーい、ロロア」
言いながらカロムは奥の研究室へ。ややあって、カロムとロロアが戻って来た。
「マリナさん、マルスさん、こんにちはですカピ」
「錬金術師さま、こんにちは」
「こんにちは」
「あの、アサギくんのお料理もだけど、錬金術師さまのお薬で良くなりました。本当にありがとうございました」
マリナはまた頭を下げる。ロロアもやはり焦っておろおろしてしまう。
「あ、あの、お顔を上げてくださいカピ。僕はお薬を調合しただけなのですカピ。それを適量処方したのはアントン先生なのですし、苦いお薬も苦手だった食材も、頑張って食べられたマリナさんが凄いのですカピ。勿論毎日お料理をされているルビアおばちゃまもですカピ」
「はい。お母さんにも勿論感謝してます。皆が助けてくれたから。本当にありがとうございました」
「どういたしましてなのですカピ。わざわざそれで来てくれたのですカピか?」
「はい。だって嬉しくて。最初に助けてくれたのもカロムとアサギくんでしたし」
「あ、そうでしたカピね」
「おいマリナ、マルス、これから晩飯の支度なんだが、食ってくか?」
「え?」
カロムの申し出にマリナの顔が一瞬輝くが、すぐに首を振る。
「ううん、それは申し訳無いよ」
「良かったら食べて行ってよ。そうだなぁ、折角だから、貧血改善ご飯の新作を考えてみようかな。そしたら作り方も持って帰って貰えるもんね」
「そうなのですカピ。お時間が良かったら、是非食べて行ってくださいカピ」
浅葱とロロアからも言われ、マリナとマルスは顔を見合わせる。そして嬉しそうに頷いた。
「じゃあご馳走になるね! ありがとう!」
「本当に何から何までありがとうございます」
「ううん。じゃあ早速作ろう。座って待っててね。カロム、お手伝いお願いね」
「おう。じゃ、ゆっくりしててくれ」
浅葱とカロムはそう言い残し、台所へと向かった。
出勤して来たカロムの台詞である。
「ほら、灰汁抜きやら何やら教えただろ。あれが効いてるみたいだ。それでもセロリなんかはまだ無理みたいだがな」
「良かった。セロリは癖が強いから難しいよね。無理はしなくて良いと思う。あれからしんどくなったりしてないのかな」
「大丈夫みたいだ。話聞いてみたら、あそこまで酷くなる前も目眩はあったみたいなんだが、今はそれも大分ましになったってよ。勿論薬の効果も大きいんだが」
「そうだと嬉しいのですカピ。マリナさんは酷い症状だったので、お薬も多めに処方されている筈なのですカピ。徐々にでも量を減らす事が出来たら良いと思うのですカピ」
「そうだな。これで益々食の大切さってもんを思い知らされた気がするぜ。俺も気を付けよう」
「僕もロロアもね」
さてドライカレーの昼食を摂り、珈琲を煎れて一息吐いていた時。電話が呼び出し音を立てた。
「はい、こちら錬金術師の研究所です」
カロムが出ると、それから二言三言会話が交わされて、通話は切られた。
「クリントだった。血液検査を頼みたいってさ。貧血の」
「分かりましたカピ。準備をしておきますカピ」
「手伝うよ」
浅葱とロロアは立ち上がり、研究室へと入った。
数十分後、小さなトランクを抱えたクリントが到着した。
「こんにちは。よろしくお願いします」
「はいカピ。準備は出来ていますカピ。研究室へどうぞですカピ。それはもしかして、マリナさんの血液なのですカピ?」
「そうです。最近かなり調子が良い様で、爺ちゃんが再検査をしてみようと」
「そうですカピか。良い結果が出ると良いですカピ」
そうしてカロムも連なって研究室へ。
血液検査に必要な薬剤は既に出してある。ロロアはクリントがトランクから取り出した小瓶からスポイトで血液を吸い出し、プレートに垂らす。そこに薬剤を振り掛けた。
すると僅かに赤黒かった血液は、まるで宝石の様な赤色に輝いた。
「大分改善されていますカピ! この分ならお薬を減らしても大丈夫そうですカピ」
「本当ですね! 綺麗な赤色だ。マリナが言ってたんですが、何やら食生活もアサギさんのお陰で大分改善出来たと」
「そんな大層な事では無いんですが、貧血を改善する食材を教えたりしました。それを意識して食べてくれたんだと思います」
「そうなんですね。今まで考えた事も無かったですけど、食事ってやっぱり大事なんですねぇ」
クリントは朝のカロムの様にしみじみと言うと、「ありがとうございました!」と笑顔で帰って行った。
「マリナさん良かったね、もう大丈夫なんだね」
「まだ薬は飲んだ方が良いだろうがな。薬のお陰もあっての結果だからな。徐々に減らしながら様子を見て行くってところだろうさ」
「そうですカピね。この結果に慢心しては危ないのですカピ。まだお薬は欠かさず飲んでいただいて、ご飯もきちんと食べて欲しいのですカピ」
「そっか、そうだよね。お薬が減るんだったら、益々ご飯が大事になるかも。僕、またお料理考えてみようかな」
「良いんじゃ無いか? ルビアおばさんも喜ぶと思うぜ」
「試作をしてくれるのなら、楽しみなのですカピ」
「勿論だよ。何にしようかなぁ」
浅葱は様々な食材を頭に浮かべ、楽しげに笑みを浮かべた。
同じ日、夕方に差し掛かろうという時間。カロムが買い物から戻り、そろそろ夕飯の支度をしようかと言う頃。
ドアの呼び鈴が鳴った。
「はーい、どちらさん?」
カロムがドア越しに声を掛けると、「マリナです」と返って来た。
ドアを開けると、にこにこと笑みを浮かべるマリナと、その後ろにはまた笑顔のマルスがいた。
「おう、どうした。まぁ入れよ」
「お邪魔します。あのね!」
入って来るなりマリナは興奮した様に捲し立てる。
「今日アントン先生に診て貰ったら、凄い改善してるんだって! だから早く知らせたくて!」
そんなマリナにカロムはやや苦笑してしまう。
「知ってるよ。血液検査をしたのはロロアなんだぜ。俺もその場にいたんだからよ」
「あ、そうだった、血液検査は錬金術師さまがするんだった」
そこでマリナは少し落ち着きを取り戻す。
「でも良かったじゃ無いか。ともかく座れよ。マルスも。仕事帰りか?」
「うん。あ、アサギくんこんにちは」
「こんにちは」
夕飯の支度をしようと入っていた台所から出て来た浅葱は、マリナとマルスの挨拶に「こんにちは」と返す。
「アサギくんが教えてくれた調理法とかお料理のお陰で、貧血が本当に改善されたよ。本当にありがとう」
マリナは言うと、深く頭を下げた。浅葱は慌てる。
「ああ、止めてください。良くなって本当に良かったよ。マリナさんも頑張ったもんね。僕も少しでもお役に立てたなら僕も嬉しい」
「それは勿論!」
マリナは顔を上げると、にっこりと笑う。そしてきょろきょろと室内を見渡す。
「錬金術師さまは?」
「ああ、研究室だ。呼んで来るな」
「あ、お忙しいなら良いよ。お薬とかのお礼を言いたかったんだけど」
「大丈夫だ。おーい、ロロア」
言いながらカロムは奥の研究室へ。ややあって、カロムとロロアが戻って来た。
「マリナさん、マルスさん、こんにちはですカピ」
「錬金術師さま、こんにちは」
「こんにちは」
「あの、アサギくんのお料理もだけど、錬金術師さまのお薬で良くなりました。本当にありがとうございました」
マリナはまた頭を下げる。ロロアもやはり焦っておろおろしてしまう。
「あ、あの、お顔を上げてくださいカピ。僕はお薬を調合しただけなのですカピ。それを適量処方したのはアントン先生なのですし、苦いお薬も苦手だった食材も、頑張って食べられたマリナさんが凄いのですカピ。勿論毎日お料理をされているルビアおばちゃまもですカピ」
「はい。お母さんにも勿論感謝してます。皆が助けてくれたから。本当にありがとうございました」
「どういたしましてなのですカピ。わざわざそれで来てくれたのですカピか?」
「はい。だって嬉しくて。最初に助けてくれたのもカロムとアサギくんでしたし」
「あ、そうでしたカピね」
「おいマリナ、マルス、これから晩飯の支度なんだが、食ってくか?」
「え?」
カロムの申し出にマリナの顔が一瞬輝くが、すぐに首を振る。
「ううん、それは申し訳無いよ」
「良かったら食べて行ってよ。そうだなぁ、折角だから、貧血改善ご飯の新作を考えてみようかな。そしたら作り方も持って帰って貰えるもんね」
「そうなのですカピ。お時間が良かったら、是非食べて行ってくださいカピ」
浅葱とロロアからも言われ、マリナとマルスは顔を見合わせる。そして嬉しそうに頷いた。
「じゃあご馳走になるね! ありがとう!」
「本当に何から何までありがとうございます」
「ううん。じゃあ早速作ろう。座って待っててね。カロム、お手伝いお願いね」
「おう。じゃ、ゆっくりしててくれ」
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