ロリ鉄‼ おじいちゃんと旅する昭和ワンダーランド

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第四話 青函連絡船

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 約束通り私は、昭和五十一年四月十二日におじいちゃんと蔵で合流し、そのまま上野駅に向かった。

「何で上野なの? 東京駅じゃないんだ」
「何言ってやがる。北行く夜行は、みんな上野発だろ?」
 ああ、そう言えばそんな歌があった様な……でもそう。私もちょっとは勉強したのだ。この時代、まだ東北新幹線は出来ていないはず。でも寝台特急って……。

 おじいちゃんにくっついて上野駅の下の方のホームを目指すと、あーあれか。
 確かに「ゆうづる」って書いてあるわ。
「ほら二葉。こっち……」おじいちゃんに導かれて車内に入ったのだが……うわっ、何これ二段ベッド? いや、三段か。電車の中がこんなになってるの初めて見たわ!

「なんだてめえ。鳩が豆鉄砲食らった様な顔しやがって。これが電車三段のB寝台だ。ほら二葉。お前一番上な。上はガキで丁度いい位で俺なんかだと狭すぎるんだよ。あー。ほんとは客車がよかったなー……もう朝までこのまんまだから、サッサと寝ちまったほうがいいぞー」
 いや。電車の中で横になって寝るって言う発想自体なかったけど、そもそも私、今の状態が夢の中なんだよね? このまま寝ても大丈夫なのかしら。目が覚めたらまた自分の部屋のベッドだったりして。そんな心配をよそに、やがて二葉と三郎が乗った寝台特急ゆうづる号はゆっくりと走り出した。
 
 …………

「……おーい。二葉。起きろー……」
 おじいちゃんに揺り起こされた。どうやら私はまだ、ゆうづるのベッドにいる様だ。自宅じゃなくて一安心だけど、まだ陽も昇ってなくて外は真っ暗じゃない。これだからお年寄りは……。

「もうすぐ青森着くぞ。さっさと降りる支度をしろ」
「えっ? まだ朝の五時前なんですけど⁉」
「ああ。列車は予定通り浅虫あさむしを通過した。だから青森でさっさと降りて並ぶんだよ!」
「並ぶ? 何に?」
「だから連絡船の乗船。指定取ってねえから早く行かねえといい場所取られちまうぞ!」
「れ・ん・ら・く・せ・ん? 船に乗るの?」
「何言ってやがる。本州から北海道に行くのに他にどんな手があるんだよ! いいから、さっさと支度しな!」
 おじいちゃんに言われるまま支度をし、青森に着いたとたん、ダッシュで連絡船桟橋さんばしに移動する。うわー、まだ午前五時ちょっと過ぎじゃない。それをこんなに大勢で大移動とか……でもあれ? 青函トンネルって出来たのいつだっけ?

 旅慣れているだけあって、さすがはおじいちゃん。結構列の前方に並ぶ事が出来、乗船名簿という小さな紙きれに名前を書いた。
 そして……あー、フロア席があるんだ。ショッピングモールにある子供用広場みたいな、カーペットが敷かれた区画があり、おじいちゃんがいち早くその区画の窓側の隅を確保した。

「ほら、ここなら人もあんまり通りかからねえからゆっくり寝られるぜ」
 確かに、後から乗って来た人達が、すまなそうに隙間に入ってくるわ。これは先に場所取った方が絶対有利ね。どうやら椅子席もある様だが、おじいちゃんは横になれるこっちの方がよくて、寝台特急のせまっ苦しいのから解放されたのが実感出来て好きなんだそうだ。

 函館まで四時間弱との事で、天気もよさそうだったので甲板に出て見た。ふわっ、気持ちいいなー。青森側と北海道側の陸地が見えるわ。売店で飲み物とサンドイッチを買って戻ったら、おじいちゃんは高いびきだったが、私に気付いたら起き出して、一緒に軽食を食べた。
 
 連絡船が函館に着き、長い桟橋を渡ったら駅のホームに直結で、すでに特急列車が待っていた。

「おおぞら?」そう前に書いてある。
「ああ。連絡船から朝一で乗り継ぐんだったら、やっぱりこれだろ。これで札幌まで今日中に着けるんだぜ。まあ俺達は途中で降りるけどな」
 函館を発車してしばらくすると、列車は海岸線に沿ってずっと走るが……北海道って本当に何もないなー。山手線なんか一周ずっとビルに囲まれてる様に感じる。いやまあ時代も違うんだけど。
 
 何から何までビックリばっかりだったが、夕べから興奮しっぱなしであんまり疲れは感じていないみたいだ。途中、おじいちゃんと私は取材も兼ねて、東室蘭ひがしむろらんと言う駅で下車して乗り換えたり、電車の写真を取ったり……いや、あれは電車じゃないと怒られたり……そうこうしながら、何回か室蘭と東室蘭の間を往復して、夕方近くに、ようやく登別のぼりべつ駅に着いたのだが……何もない。いやちらほら小屋みたいなものはあるが、とても有名な観光地とは思えないわ。おじいちゃん曰く、温泉はここからハイヤーで行くとの事なのだが、車はすごい山道を進み、日が暮れた頃、私達はようやく温泉街に着いた。
 うん。寄り道もしたけど……昨日の晩、上野駅を出てから二十四時間越えたわよ。

 泊まった旅館は超有名な所らしく、晩御飯も大人向きで私にはちょっと量も多かったけどすごくおいしかった。部屋に戻ったらおじいちゃんが言う。
「さあ二葉。ここに泊まったなら、ぜってえ大浴場ははずせねえぞ!」
「うん。私も楽しみ……」

 暗くなってから街に入ったので、よくは分からないけど、街中、卵の腐った様な硫黄の匂いがプンプンしている。何でも地獄谷という大昔の噴火口の名残みたいのがすぐそばにあるらしく、明日、追分から戻って来て、またここに泊まるので、そこは明後日見物に行こうなとおじいちゃんが言っていた。

 脱衣所で服を脱いで大浴場に足を踏みいれる。うわー、本当に広いわ。それに凄い湯気と匂いね。すっごく効きそう。湯気で向こう側が見えづらい位で、私は好奇心に駆られ、壁の反対側を目指す。おお、こっち側も人が多いわね。

 でも……あれ? ちょっと待った。これって……。

「おー、二葉。こっち来たのか? お疲れだろうし、俺が背中流してやんよ!」
 えっ、おじいちゃん⁉ ちょっと、何でおじいちゃんが女湯入ってるのよ! その時はそう思ったのだが、私は重大な認識ミスを犯していた様だ。私の周り……男の人ばっかりじゃん。これって……混浴⁉
 
「お、お、おじいちゃん。ここって、もしかして混浴⁉」
「ん? あー、東京のガキにはめずらしいか。だがな。こっちではまだこれが普通だぞ! ガキが恥ずかしがってんじゃねえよ。いっしょにゆっくり温まろうや」
「は……はははは……はい……」

 周りの人達も全然気にしてないし、私と同年代位の女の子も、すっぽんぽんでそこいらをウロウロしている。さすがに大人同士は、ちょっと離れた場所ですみ分けているみたいだけど……いやこれ令和なら完全アウトだわ。でも……ここでおかしいのは私の方になるのかな……とちょっと思った。
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