Dinner

中原涼

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 さなぎからの連絡に気付いたのは、仕事が終わって白衣を脱いで、鞄から機内モードにしていたスマホを解除した時だった。ぽこん、ぽこん、と黒い画面に浮き上がってくるいくつかのメッセージのなかに、埋もれるようにして「さなぎ」という名前が浮き上がり、上部へと押し上げられていく。俺は慌ててパスコードを入れてメッセージを開いた。
『なんだか久し振り、良かったら食事にでも行かない? 偶には外で食べようよ。』
 短い誘い文句に、微かに感じていた心の隙間が、あっという間に埋められていく気がした。俺は夏用のスーツジャケットに腕を通し、
『もちろん。どこに行こうか』
 と返事をした。
 返事までに時間があるだろうと、ロッカーの荷物棚にスマホを置くと、すぐにブブブっと大きな音を立てて薄べったいそれが震えた。俺は慌ててそれを引っ掴むと、隣に居た同僚に、悪い、と笑って会釈した。
「なんかにやけて返信してたけど、いい相手か?」
 揶揄い口調で言われて、違うよ、と返しながら画面を確認すれば、さなぎからだった。俺は鞄を掴んでロッカーに鍵を掛けると、お疲れ! とその同僚に手を振って、その場を出た。
『今日はどうかな、急すぎる?』
『今職場出たところだし、予定はないから平気だよ』
(クマのやったー! というスタンプ)
『表参道にいい店があるんだけど、どうかな』
『いいね、そっちの方にいくのは久し振りだから楽しそう』
 表参道ならば、ここから電車を使えばニ十分程度で行けるし、帰りもそれ程複雑な乗り換えはない。俺は地下鉄に向かって、脚の方向を変えた。
『今から地図を送るね。名前を言ってもらえれば通すようにお願いしておくから。ゆっくりおいで』
 まる親から受けるような誘いに、思わず頬が緩む。ぽこん、とそのメッセージの下に浮き上がるアドレスをクリックすると、店名と表参道駅からの簡易的な地図が現れた。歩いて五分くらいだろうか。
『今から三十分くらいかかると思う』
『了解。待ってるよ』
 俺はポケットにスマホを滑らせると、軽い足取りで地下鉄へと続く階段を下りた。
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