身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ

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4章

9 休憩




くしゅん。

「アシェ?大丈夫か?」

先ほど洗濯物を取り込もうとして、一瞬だけど雨に打たれてしまった。ヴァルドさんはタオルで身体を拭いてくれた。

「ありがとう。もう大丈夫だよ。ココア、淹れるね!ヴァルドさんもココア?それともコーヒー?」

「……。ココアにする」

少し悩んで、ぼくの方をじっと見つめてからヴァルドさんはそう答えた。ヴァルドさんに美味しいココアの作り方を以前教わったんだ。

魔導コンロの上に鍋を用意する。
ミルクとココア、それからハチミツも。

「早くアシェのマグカップを買わないとな。
次の休みに見に行こう」

「いつものヴァルドさんの使ってないマグカップで、いいよ?」

戸棚にしまわれたマグカップを2つ取り出す。
1つはヴァルドさんがいつも使っている真っ黒のマグカップ。もう1つは以前、とりあえずこれを使ってくれ。と渡してくれた物。
なんだって嬉しいんだ。

「いや。買い物の予定を立てたい」

ヴァルドさんはなんだか嬉しそうに、予定表を確認していた。

鍋のココアが沸騰したのを確認してハチミツを垂らす。ゆっくり混ぜ合わせると、ココアの出来上がり。
2つのマグカップにそれぞれ注ぐ。
トレイに乗せて、ヴァルドさんが座ってる2人掛けソファーの前のテーブルに置く。

そしてヴァルドさんの隣りにぽすりとぼくは座った。

「……今日はメイドさん、やらないのか?」

「や、やらないよ!」

以前のメイドさんの真似っこが、なんだかヴァルドさんは気に入ったみたいで、度々言ってくる。よく考えたらメイドさんは女の人。
男の人は執事さんだった。恥ずかしい。

「……ココアです、よ?」

「頂こう」

ココアを少し押し出すと、ヴァルドさんは飲んでくれた。ぼくもココアをこくりと飲む。美味しく出来て良かった。
ポケットからビスケットを取り出す。

「ビスケット、リオットさんに貰ったんだ。
はい、どうぞ」

「そうだったのか。ありがとう」

2人でサクリとビスケットを齧る。
甘いココアとビスケットが、とても合う気がした。

「書類仕事は億劫だが、アシェとこうやって休憩出来るなら、いいものだ」

「……えへへ。ココアもコーヒーもいつでも作るよ」

役に立っているみたいで嬉しい。
ココアをもう一口飲む。

「まあ……それも助かるな」

ヴァルドさんはこちらを見て、苦笑していた。
その後ぼくはなぜだかヴァルドさんに、肩をぎゅっと抱きしめられていた。


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