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4章
10 熱
カーテンの隙間から溢れる朝の光で目が覚める。今日も隣りで眠るアシェの様子を眺めようと思ったが、アシェは近くにいなかった。
昔はオレより早く起きて、掃除や洗濯をやろうとしていたが、まだ寝てていいと無理矢理寝かせていた。
最近はオレより遅く起きることが多くなったはずだが。トイレにでも行ったのだろうか。
遠くから物音がする。
「アシェ?」
「……ヴァルドさん。おはようございます」
アシェは箒を持って、笑顔で微笑んでいた。
心なしか目がとろんとしている。
「……どうしたんだ?まだ寝てていい」
「ううん。お掃除するの」
時計はまだ朝の5時をさしている。
そんなに早くアシェにしてもらう仕事はない。
むしろ、成長のためにもっと眠っていて欲しいくらいだ。
「アシェ。今日は図書館で勉強する日だろう。
掃除なんてしなくていい。
たまにやってくれてるだけで、充分だ」
「ううん」
今日はやけに強引だな。箒でゴミを掃くのを止める様子はない。ベッドから出てアシェの方へと向かう。
「アシェ」
「い、やだ」
腕を掴もうとするが、首を振り近寄ろうとはしない。顔が真っ赤だ。もしかして――
「あっ!」
強引に頭を掴み、顔を寄せる。
アシェのおでこに自身の額を当てる。
「……熱がある。混乱しているのか?」
「大丈……、は、わっ!」
アシェを抱え上げてベッドまで連れて行く。
身体が熱い。かなり熱がありそうだ。
まだ確実に寝ているだろうが、ルシアンに診てもらおう。
「そ、掃除できるよ。ご飯も作れる……」
「アシェ。ここはオレの部屋だ。
以前いたところではない。
熱でも、働かされていたのか……」
アシェはぼんやりとオレの目を見つめる。
あの義母達だ。アシェの体調なんて、構いはしなかっただろう。思わず拳を握る。
「ここでは熱で働かせるようなやつはいない。
アシェは今日、ゆっくり休め。わかったか?」
「ヴァルドさん……。お勉強は……」
「元気になったら再開すればいい。
今日はいい子で眠れるか?」
「……はい」
ベッドに寝かせて布団を肩までかける。
熱で頭が混乱してしまったのだろうか。
「薬と……お粥を作ってもらおう」
「……うん……」
オレの手を頬に当てると、アシェはすりすりと顔を預けてきた。
「ここでは安心して眠ってくれ」
そう呟く。アシェは安心したのか、目を瞑り小さく寝息を立て始めた。
過去の記憶はそう簡単には消えないだろう。
この生活がアシェにとって、幸せだと思える記憶になってもらえればいい。
これからもずっと。――傲慢だがな。
そのくらい、アシェがいる生活がもう当たり前になっている。ここに居る皆がきっとそうだろう。
魔導通信でルシアンに連絡をする。
やはり眠っていたのだろうルシアンは、寝ぼけた声で「時間外労働だよ……」と呟いていた。
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