影の盗賊(シャドウ・シーフ)

マイライト

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43.宇宙の均衡 ― 第2話選ばれしもの

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開かれた結晶宮殿の内部は、まるで無数の星々が散りばめられた夜空のようだった。
光の書板が宙に浮かび、回転しながら淡い音を奏でている。その一枚一枚が、古代の記録を宿していた。

アルトは一歩踏み出し、最も大きな書板に触れる。
瞬間、視界が白に染まり、彼らの前に「映像」が広がった。

——そこには太古の地球の姿があった。
空を覆う巨大な影、異星の艦隊。人類はその圧倒的な力に抗えず、滅亡の危機に瀕していた。

だが、ある日。
青白く輝く結晶が地表に降り立ち、それを媒介に異星種族と人類は「契約」を結んだ。

《我らは均衡を保つ。だが、その誓約を守る者は選ばれねばならぬ。》

声なき声が響く。
映像の中で、人々の中から数人が光に包まれ、結晶と共鳴していく。
彼らこそが「選ばれし者」――ルナの涙に応える者たちだった。

セシリアは呆然とその光景を見つめ、震える声でつぶやいた。
「……この契約がなければ、人類はすでに滅んでいたのね。」

ファントムの視線は険しいままだった。
「だが、均衡を保つとは……つまり『力を制御する代わりに、永遠の枷を負う』ということだ。」

映像は次第に暗転し、最後の記録が浮かび上がる。
そこにはこう刻まれていた。

《均衡が崩れる時、ルナの涙は再び“問い”を与える。》
《答えるのは一人、だがその答えは全てを決する。》

アルトはその文を読み取り、無意識に拳を握った。
「……問い、か。」

沈黙が流れた。そのとき、突如として結晶宮殿が震えた。
書板の光が乱れ、黒い靄が内部に侵入してくる。

「来たか……!」
ファントムが身構える。

現れたのは、かつて虚空の中で彼らを追い詰めた“黒い影”。
だが今回は輪郭がより明確で、無数の瞳と手を持つ異形の姿をしていた。

「……あれは?」
セシリアが後退りする。

アルトは低く答えた。
「契約に従わず、秩序を壊そうとする“答えを欲するもの”だ。」

黒い影は声にならない囁きを放つ。
《答えを寄越せ。均衡を壊せ。新たな秩序は我らが支配する。》

結晶宮殿の光がかき消され、世界が闇に飲まれていく。
三人は、それぞれの武器と決意を手にした。

——人類と宇宙の未来を懸けた、本当の戦いが始まろうとしていた。
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