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『よぉお姉さん』
規律あるガルシュ領内ではこんな雑魚に出会うことは無い。
破落戸より数段上の野盗ならば時々出くわすが。
「何か用?」
ブライオニーが問えば破落戸の男は組んでいた腕を解いて果物ナイフをチラつかせた。
『身なりも良いが顔も良い、最高だな』
「ありがとう...で良いかしら?」
『オレとちょっと遊んでさ~財布置いていってもらおうか』
男はナイフを手にジリジリ迫り、人気のない路地にブライオニーを追いやった...つもりであった。
『痛い目に合いたくは無いだろ』
祭りの只中、裏道に人通りは無い。
袋小路に追い込んだつもりの男はナイフを舐めて芝居がかった声で凄んだ。
「ええ、痛いのは嫌だわ」
『なら、おとなしく...!!』
刹那ブライオニーが太腿から短刀を取り出した。
スカートの下「太腿にナイフホルダー」は騎士の嗜みよね。違う?
ちなみに今日のブライオニーは街歩きの為にランディが選んだ、クリーム色の地に臙脂色の小花柄が可愛いワンピース姿であった。
いきなりスカートを捲って短刀を取り出す令嬢っていますか?いません。
躊躇なく挑んでくる令嬢って見たことありますか?ありません。
脳内が忙しい、驚嘆の男に向かってガルシュ家令嬢ブライオニーは弾き出た。
『.....ぐぐ』
瞬殺であった。
男のナイフは明後日の空に飛ばされ、強か顎を打たれ、肩を外された。
『あ”ー!い”だい、あ”ーう”ー』
目から鼻から口から液体が流れ出る。
「痛いでしょうけど...」
そっちが悪いじゃんね...とふぅと息を吐いて、結果的に使うことの無かった短刀を仕舞おうとスカートの裾に手を掛けた。
「ビニー!!!」
背中から腕を回される。
「お兄様!」
「ビニー!スカート捲っちゃ駄目でしょう!」
そこかよ!と破落戸の男は呻いた。
顎も痛い、外れた肩はもっと痛い。
お兄様とやら!
額から汗を光らせつつも爽やかに現れた、麗しい顔のこの優男ならば何か施してくれるだろうか....。
「だって、お兄様..コレ仕舞わなきゃ!」
ペシペシと短刀で太腿を叩けば、ねぇ本当に勘弁してとランディが短刀を奪い取って自身のベルトに差し込んだ。
「ほら行くよ」
ランディがブライオニーの手を引く。
『あ、あ、あの...』
男が声を上げればランディは冷えた目で見つめ返し凍るような声で吐き捨てた。
「本当ならば半殺しだからな」
破落戸は傷みを堪えてコクコク頷くしか無かった。
▼
宿への帰路も賑やかな露店を眺めながら歩くこととなった。
「はぐれないでよね」
先程はぐれたのは自分に瑕疵が無いと言うようにランディが言った。
「じゃぁ手でも繋ぐ?」
ブライオニーが手を差し出せば、幾つぶりだろうねとランディが手を取った。
きゃー!ぎゃぁー!と周りの娘らが悲鳴を上げる。
ふとアクセサリーの露店が目に入った。
見てみるかいとランディが立ち止まる。
ブライオニーは並ぶアクセサリーの中から誕生石のイヤリングを手に取った。
「...どうかな」
小ぶりのターコイズが指先で揺れている。
ガルシュ家の財を持ってすれば、この数百倍の値段の宝石だって手に入る。ブライオニーが望めばこの店の品全てを買い占める事も出来よう。
「気に入ったのなら買おう」
ランディが支払いを済ませ、着けてごらんよとブライオニーに言った。
「...どうかな」
普段何も飾らないブライオニーの耳朶で美しい碧が揺れた。
「良いじゃない、似合うよ」
そう言ってランディはブライオニーの右耳にある傷を見た。
もう痛くも痒くも無い、良く見れば気付くほどの傷跡。
流れる血を手ぬぐいで押さえ、あー負けちゃったと去って行った、あの日のブライオニーも今日のブライオニーも美しく強い女なのであった。
規律あるガルシュ領内ではこんな雑魚に出会うことは無い。
破落戸より数段上の野盗ならば時々出くわすが。
「何か用?」
ブライオニーが問えば破落戸の男は組んでいた腕を解いて果物ナイフをチラつかせた。
『身なりも良いが顔も良い、最高だな』
「ありがとう...で良いかしら?」
『オレとちょっと遊んでさ~財布置いていってもらおうか』
男はナイフを手にジリジリ迫り、人気のない路地にブライオニーを追いやった...つもりであった。
『痛い目に合いたくは無いだろ』
祭りの只中、裏道に人通りは無い。
袋小路に追い込んだつもりの男はナイフを舐めて芝居がかった声で凄んだ。
「ええ、痛いのは嫌だわ」
『なら、おとなしく...!!』
刹那ブライオニーが太腿から短刀を取り出した。
スカートの下「太腿にナイフホルダー」は騎士の嗜みよね。違う?
ちなみに今日のブライオニーは街歩きの為にランディが選んだ、クリーム色の地に臙脂色の小花柄が可愛いワンピース姿であった。
いきなりスカートを捲って短刀を取り出す令嬢っていますか?いません。
躊躇なく挑んでくる令嬢って見たことありますか?ありません。
脳内が忙しい、驚嘆の男に向かってガルシュ家令嬢ブライオニーは弾き出た。
『.....ぐぐ』
瞬殺であった。
男のナイフは明後日の空に飛ばされ、強か顎を打たれ、肩を外された。
『あ”ー!い”だい、あ”ーう”ー』
目から鼻から口から液体が流れ出る。
「痛いでしょうけど...」
そっちが悪いじゃんね...とふぅと息を吐いて、結果的に使うことの無かった短刀を仕舞おうとスカートの裾に手を掛けた。
「ビニー!!!」
背中から腕を回される。
「お兄様!」
「ビニー!スカート捲っちゃ駄目でしょう!」
そこかよ!と破落戸の男は呻いた。
顎も痛い、外れた肩はもっと痛い。
お兄様とやら!
額から汗を光らせつつも爽やかに現れた、麗しい顔のこの優男ならば何か施してくれるだろうか....。
「だって、お兄様..コレ仕舞わなきゃ!」
ペシペシと短刀で太腿を叩けば、ねぇ本当に勘弁してとランディが短刀を奪い取って自身のベルトに差し込んだ。
「ほら行くよ」
ランディがブライオニーの手を引く。
『あ、あ、あの...』
男が声を上げればランディは冷えた目で見つめ返し凍るような声で吐き捨てた。
「本当ならば半殺しだからな」
破落戸は傷みを堪えてコクコク頷くしか無かった。
▼
宿への帰路も賑やかな露店を眺めながら歩くこととなった。
「はぐれないでよね」
先程はぐれたのは自分に瑕疵が無いと言うようにランディが言った。
「じゃぁ手でも繋ぐ?」
ブライオニーが手を差し出せば、幾つぶりだろうねとランディが手を取った。
きゃー!ぎゃぁー!と周りの娘らが悲鳴を上げる。
ふとアクセサリーの露店が目に入った。
見てみるかいとランディが立ち止まる。
ブライオニーは並ぶアクセサリーの中から誕生石のイヤリングを手に取った。
「...どうかな」
小ぶりのターコイズが指先で揺れている。
ガルシュ家の財を持ってすれば、この数百倍の値段の宝石だって手に入る。ブライオニーが望めばこの店の品全てを買い占める事も出来よう。
「気に入ったのなら買おう」
ランディが支払いを済ませ、着けてごらんよとブライオニーに言った。
「...どうかな」
普段何も飾らないブライオニーの耳朶で美しい碧が揺れた。
「良いじゃない、似合うよ」
そう言ってランディはブライオニーの右耳にある傷を見た。
もう痛くも痒くも無い、良く見れば気付くほどの傷跡。
流れる血を手ぬぐいで押さえ、あー負けちゃったと去って行った、あの日のブライオニーも今日のブライオニーも美しく強い女なのであった。
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