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王都にあるドレス工房から仮縫いが出来た旨、連絡が入った。
ランディ、ターニャが付き添ってくれているが、初めて王都へ足を踏み入れたブライオニーは瀟洒な街と人の多さに気圧され気味であった。
オースティン家の馬車で王都を走る。
晴れ渡る空。降り注ぐ陽の光。
心地良い風に当たりながら...とはいかない。
ブライオニーは「日焼け、駄目、絶対」と言われ、長袖のディドレスを纏い、つばの広い帽子を被り、手袋まで装着している。
「...何だか窮屈だわ」
手袋も帽子も乗馬の時とは大違いで、全くしっくりこない。似合ってないしさ...ぽつり呟くブライオニーであった。
「「郷に入っては郷に従え」だよ、ビニー。
それにとっても似合っているよ」ランディはブライオニーを宥めた。
ブライオニーはホームシックになりかけていた。
伯父も伯母も親切で丁寧にダンスやマナーを教えてくれる。
ターニャは気さくで面白いし何より頼もしい。
ここでの生活も快適で、食事も美味しいし、エステや美容の彼是と贅沢なくらいであるから、文句なんて言ったらバチが当たると思っている。
だが.....
広い草原を愛馬と駆け抜けたい!風を全身に受けて思うままに走りたい!
ネイサンと弓の的当てで賭けをして、ギルバートとふざけながら手合わせをしたい!
それから....それから...
膝の上で揃えた手の上に雫が落ちた。
ランディが息を呑む音が聞こえる。
困らせちゃ駄目だ、泣くなんて馬鹿じゃんね...そう思うのに涙が落ちる。
「ねぇ、ビニー?」とターニャが声を掛けた。
「いきなり王都に呼びつけられてパーティーに出ろだなんて、着慣れないドレスやヒールの靴だなんて戸惑うでしょうね。
でもね、サイモン叔父様はあなたのためを思って我が家を頼ってくれたと思うの。」
「...はい」
「あなたはきっと...良くも悪くも目立ってしまうわ。隠れるにはガルシュの名は大き過ぎるもの。」
「...ガルシュの名?」
「そうよ。あなたのお父様はサンサルヴァの雄。西の守護神なのよ。」
「はい。」
「親戚の私たちでさえ畏敬の念を覚えるサイモン叔父様が、ビニーをよろしくと頼ってくださった。どれ程嬉しかったことか」
「.....」
「だからね、やるからには中途半端は止めようって思ったのよ。
そしてどうせなら、ビニーに楽しんで貰いたいって思っているの」
ターニャはブライオニーの手を握った。
「ガルシュには無いものを楽しんで。今しか出来ないことに挑戦してみて。
私もランディ様も側にいるから」
「ターニャ...」
「ね!」
「.....はい」
ブライオニーは顔を上げてほんのちょっと微笑んだのだった。
ランディ、ターニャが付き添ってくれているが、初めて王都へ足を踏み入れたブライオニーは瀟洒な街と人の多さに気圧され気味であった。
オースティン家の馬車で王都を走る。
晴れ渡る空。降り注ぐ陽の光。
心地良い風に当たりながら...とはいかない。
ブライオニーは「日焼け、駄目、絶対」と言われ、長袖のディドレスを纏い、つばの広い帽子を被り、手袋まで装着している。
「...何だか窮屈だわ」
手袋も帽子も乗馬の時とは大違いで、全くしっくりこない。似合ってないしさ...ぽつり呟くブライオニーであった。
「「郷に入っては郷に従え」だよ、ビニー。
それにとっても似合っているよ」ランディはブライオニーを宥めた。
ブライオニーはホームシックになりかけていた。
伯父も伯母も親切で丁寧にダンスやマナーを教えてくれる。
ターニャは気さくで面白いし何より頼もしい。
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だが.....
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ネイサンと弓の的当てで賭けをして、ギルバートとふざけながら手合わせをしたい!
それから....それから...
膝の上で揃えた手の上に雫が落ちた。
ランディが息を呑む音が聞こえる。
困らせちゃ駄目だ、泣くなんて馬鹿じゃんね...そう思うのに涙が落ちる。
「ねぇ、ビニー?」とターニャが声を掛けた。
「いきなり王都に呼びつけられてパーティーに出ろだなんて、着慣れないドレスやヒールの靴だなんて戸惑うでしょうね。
でもね、サイモン叔父様はあなたのためを思って我が家を頼ってくれたと思うの。」
「...はい」
「あなたはきっと...良くも悪くも目立ってしまうわ。隠れるにはガルシュの名は大き過ぎるもの。」
「...ガルシュの名?」
「そうよ。あなたのお父様はサンサルヴァの雄。西の守護神なのよ。」
「はい。」
「親戚の私たちでさえ畏敬の念を覚えるサイモン叔父様が、ビニーをよろしくと頼ってくださった。どれ程嬉しかったことか」
「.....」
「だからね、やるからには中途半端は止めようって思ったのよ。
そしてどうせなら、ビニーに楽しんで貰いたいって思っているの」
ターニャはブライオニーの手を握った。
「ガルシュには無いものを楽しんで。今しか出来ないことに挑戦してみて。
私もランディ様も側にいるから」
「ターニャ...」
「ね!」
「.....はい」
ブライオニーは顔を上げてほんのちょっと微笑んだのだった。
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