56 / 72
56.
しおりを挟む
マリアンヌがサイモンとブライオニーに面会した日の夜半。
「ガルシュ辺境伯家とブライオニーに浴びせられた泥を濯いで頂く」と当主サイモンに命じられたマリアンヌは遅ればせながら王家比翼の辺境伯を怒らせ傷つけた事を反省した。
浅深有れど反省できる事は善き事であった。
ただ王都に広まった悪意ある噂をどうしたものか...サイモン殿が納得する禊は如何なものか分からなかった為に国王であり夫のルパートに相談と言う名の懺悔をすることとなった。
ルパートは先日王都入りしたサイモンが不機嫌そうであった事の合点がいった。
余計なことをしてくれるな!と怒鳴りつけたいところを堪えて宰相と諜報のゼインを呼んだ。
ルパートにしたばかりの説明をマリアンヌが繰り返した所で、宰相が深くため息をついた。
「ガルシュに喧嘩を売った訳ですな」と宰相。
「そういう訳では...」
「サイモン殿にとって否、ガルシュにとって御息女は至宝です。その御息女にあのニコラスをあてがうなど!!」
ブライオニーは至宝と言い、我が甥は呼び捨て?!とマリアンヌは思った。
「マリアンヌを責めても仕方ない。あと僅かな時間で広まった噂を一掃せねばならないのだ。」
ルパートはゼインに今の状況を聞いた。
やはり興味の強弱はあれど「ガルシュ辺境伯の娘は傷物だ」という低俗な噂と「サイモン・ガルシュは娘を使って中央でも権力を持とうとしている」というきな臭い噂が広まったとゼインは答えた。
そして、サイモンの言うように、ブライオニーの顔に傷跡など無いのに「醜い傷跡が」と悪意を持って広めたのはマリアンヌの姪ナターシャであったと報告された。
自身の身内の愚行に言葉も出ないマリアンヌであった。
ゼインは王妃の落ち込み様に心を寄せ「最初の出処はナターシャの侍女であるエリー・オルテガである」と追加した。その際にエリーがガルシュ辺境伯の嫡男ランディの元婚約者であったことも話された。
このエリーという侍女の意図は全く不明であるが、出処はどうあれナターシャが周囲に吹聴していた事は確かである。
過ぎた事ではありますが...とゼインが続けて「ナターシャ嬢は兄のニコラス殿に対して執着が強く今まで数件の縁談を邪魔してきた事が判明致しました」と報告した。
ゼインの報告から、マリアンヌがニコラスとブライオニーを見合いさせようと持ちかけたことが、ナターシャの愚行を招いたと見通しがついたのであった。
見通しがついたとて....
さて...どうしたものか。
宰相は小細工無しに各貴族当主宛に国王の名で「ガルシュ辺境伯と息女に対して不名誉な発言は看過しない」と勅命を出すように...それしか有りますまいと提案した。
ルパートは、余りにガルシュを庇うことにならないかと躊躇したが、庇うもなにもガルシュに瑕疵は一切ないではございませんか!と言われ納得した。
「王妃様の節介が招いた事であり、それが思い付く限り悪い方向へ事が進んでしまったと弁明いたしましょう。」
「ガルシュ辺境伯は昔も今も、清廉潔白で辺境の守護神である事に誇りを持っている王国随一の剣であると記し名誉を守るのです!」
ルパートは宰相の案に頷くしか無かった。
「ガルシュ辺境伯家とブライオニーに浴びせられた泥を濯いで頂く」と当主サイモンに命じられたマリアンヌは遅ればせながら王家比翼の辺境伯を怒らせ傷つけた事を反省した。
浅深有れど反省できる事は善き事であった。
ただ王都に広まった悪意ある噂をどうしたものか...サイモン殿が納得する禊は如何なものか分からなかった為に国王であり夫のルパートに相談と言う名の懺悔をすることとなった。
ルパートは先日王都入りしたサイモンが不機嫌そうであった事の合点がいった。
余計なことをしてくれるな!と怒鳴りつけたいところを堪えて宰相と諜報のゼインを呼んだ。
ルパートにしたばかりの説明をマリアンヌが繰り返した所で、宰相が深くため息をついた。
「ガルシュに喧嘩を売った訳ですな」と宰相。
「そういう訳では...」
「サイモン殿にとって否、ガルシュにとって御息女は至宝です。その御息女にあのニコラスをあてがうなど!!」
ブライオニーは至宝と言い、我が甥は呼び捨て?!とマリアンヌは思った。
「マリアンヌを責めても仕方ない。あと僅かな時間で広まった噂を一掃せねばならないのだ。」
ルパートはゼインに今の状況を聞いた。
やはり興味の強弱はあれど「ガルシュ辺境伯の娘は傷物だ」という低俗な噂と「サイモン・ガルシュは娘を使って中央でも権力を持とうとしている」というきな臭い噂が広まったとゼインは答えた。
そして、サイモンの言うように、ブライオニーの顔に傷跡など無いのに「醜い傷跡が」と悪意を持って広めたのはマリアンヌの姪ナターシャであったと報告された。
自身の身内の愚行に言葉も出ないマリアンヌであった。
ゼインは王妃の落ち込み様に心を寄せ「最初の出処はナターシャの侍女であるエリー・オルテガである」と追加した。その際にエリーがガルシュ辺境伯の嫡男ランディの元婚約者であったことも話された。
このエリーという侍女の意図は全く不明であるが、出処はどうあれナターシャが周囲に吹聴していた事は確かである。
過ぎた事ではありますが...とゼインが続けて「ナターシャ嬢は兄のニコラス殿に対して執着が強く今まで数件の縁談を邪魔してきた事が判明致しました」と報告した。
ゼインの報告から、マリアンヌがニコラスとブライオニーを見合いさせようと持ちかけたことが、ナターシャの愚行を招いたと見通しがついたのであった。
見通しがついたとて....
さて...どうしたものか。
宰相は小細工無しに各貴族当主宛に国王の名で「ガルシュ辺境伯と息女に対して不名誉な発言は看過しない」と勅命を出すように...それしか有りますまいと提案した。
ルパートは、余りにガルシュを庇うことにならないかと躊躇したが、庇うもなにもガルシュに瑕疵は一切ないではございませんか!と言われ納得した。
「王妃様の節介が招いた事であり、それが思い付く限り悪い方向へ事が進んでしまったと弁明いたしましょう。」
「ガルシュ辺境伯は昔も今も、清廉潔白で辺境の守護神である事に誇りを持っている王国随一の剣であると記し名誉を守るのです!」
ルパートは宰相の案に頷くしか無かった。
640
あなたにおすすめの小説
【完結】地味な私と公爵様
ベル
恋愛
ラエル公爵。この学園でこの名を知らない人はいないでしょう。
端正な顔立ちに甘く低い声、時折見せる少年のような笑顔。誰もがその美しさに魅了され、女性なら誰もがラエル様との結婚を夢見てしまう。
そんな方が、平凡...いや、かなり地味で目立たない伯爵令嬢である私の婚約者だなんて一体誰が信じるでしょうか。
...正直私も信じていません。
ラエル様が、私を溺愛しているなんて。
きっと、きっと、夢に違いありません。
お読みいただきありがとうございます。短編のつもりで書き始めましたが、意外と話が増えて長編に変更し、無事完結しました(*´-`)
私が、良いと言ってくれるので結婚します
あべ鈴峰
恋愛
幼馴染のクリスと比較されて悲しい思いをしていたロアンヌだったが、突然現れたレグール様のプロポーズに 初対面なのに結婚を決意する。
しかし、その事を良く思わないクリスが・・。
記憶を無くした、悪役令嬢マリーの奇跡の愛
三色団子
恋愛
豪奢な天蓋付きベッドの中だった。薬品の匂いと、微かに薔薇の香りが混ざり合う、慣れない空間。
「……ここは?」
か細く漏れた声は、まるで他人のもののようだった。喉が渇いてたまらない。
顔を上げようとすると、ずきりとした痛みが後頭部を襲い、思わず呻く。その拍子に、自分の指先に視線が落ちた。驚くほどきめ細やかで、手入れの行き届いた指。まるで象牙細工のように完璧だが、酷く見覚えがない。
私は一体、誰なのだろう?
前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします
柚木ゆず
恋愛
※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。
我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。
けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。
「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」
そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。
お兄様の指輪が壊れたら、溺愛が始まりまして
みこと。
恋愛
お兄様は女王陛下からいただいた指輪を、ずっと大切にしている。
きっと苦しい片恋をなさっているお兄様。
私はただ、お兄様の家に引き取られただけの存在。血の繋がってない妹。
だから、早々に屋敷を出なくては。私がお兄様の恋路を邪魔するわけにはいかないの。私の想いは、ずっと秘めて生きていく──。
なのに、ある日、お兄様の指輪が壊れて?
全7話、ご都合主義のハピエンです! 楽しんでいただけると嬉しいです!
※「小説家になろう」様にも掲載しています。
死にかけ令嬢の逆転
ぽんぽこ狸
恋愛
難しい顔をしたお医者様に今年も余命一年と宣告され、私はその言葉にも慣れてしまい何も思わずに、彼を見送る。
部屋に戻ってきた侍女には、昨年も、一昨年も余命一年と判断されて死にかけているのにどうしてまだ生きているのかと問われて返す言葉も見つからない。
しかしそれでも、私は必死に生きていて将来を誓っている婚約者のアレクシスもいるし、仕事もしている。
だからこそ生きられるだけ生きなければと気持ちを切り替えた。
けれどもそんな矢先、アレクシスから呼び出され、私の体を理由に婚約破棄を言い渡される。すでに新しい相手は決まっているらしく、それは美しく健康な王女リオノーラだった。
彼女に勝てる要素が一つもない私はそのまま追い出され、実家からも見捨てられ、どうしようもない状況に心が折れかけていると、見覚えのある男性が現れ「私を手助けしたい」と言ったのだった。
こちらの作品は第18回恋愛小説大賞にエントリーさせていただいております。よろしければ投票ボタンをぽちっと押していただけますと、大変うれしいです。
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
《完結》当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!
犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。
そして夢をみた。
日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。
その顔を見て目が覚めた。
なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。
数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。
幼少期、最初はツラい状況が続きます。
作者都合のゆるふわご都合設定です。
日曜日以外、1日1話更新目指してます。
エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。
お楽しみ頂けたら幸いです。
***************
2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます!
100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!!
2024年9月9日 お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます!
200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!!
2025年1月6日 お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております!
ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします!
2025年3月17日 お気に入り登録400人達成 驚愕し若干焦っております!
こんなにも多くの方に呼んでいただけるとか、本当に感謝感謝でございます。こんなにも長くなった物語でも、ここまで見捨てずに居てくださる皆様、ありがとうございます!!
2025年6月10日 お気に入り登録500人達成 ひょえぇぇ?!
なんですと?!完結してからも登録してくださる方が?!ありがとうございます、ありがとうございます!!
こんなに多くの方にお読み頂けて幸せでございます。
どうしよう、欲が出て来た?
…ショートショートとか書いてみようかな?
2025年7月8日 お気に入り登録600人達成?! うそぉん?!
欲が…欲が…ック!……うん。減った…皆様ごめんなさい、欲は出しちゃいけないらしい…
2025年9月21日 お気に入り登録700人達成?!
どうしよう、どうしよう、何をどう感謝してお返ししたら良いのだろう…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる