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2話 徹底的に
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愛していたつもりだった。けれど、何故だろう。なんだか楽しくなってきてしまっている自分がいることに、私は少し驚いていた。私はあの人のために尽くしてきた。私はあの子を守っていた。けれど、それももう、必要ないのね。……ふふ。案外早く立ち直れるものね。
私がお父様にお会いしたいと呟くと、ジッノーレは行って参ります、と、お父様のもとへ行ってしまった。おそらく、私が会いたいと言っている、と、お父様に伝えるつもりなのだろう。
今お時間が取れないようなら、また今度でもいいのだけれど、ことは早急に対応しなければならない。いつ何を起こされるか、分からないからだ。音を立ててなるこの心臓。これは、緊張か、恐怖か。そんな可愛らしいものではない。
こうと決めたら私は曲げずにやってきた。ええ、やってやりますわ。徹底的にね。
ほとんど足音も立てずに帰ってきたジッノーレは、気がつくとドアの前までやってきていた。彼女は影の一員でもあるのだ。このくらい余裕なのだろう。
ドアが開かれて見えたのは、満面の笑みのジッノーレだった。これはいい返事が期待できそうだ。
「お父様はなんとおっしゃいましたの」
ゆっくりと椅子から立ち上がりながらジッノーレに問いかけると、彼女は私のもとまで歩いてきて可愛らしい笑顔を作った。
「今すぐ来いとのことです。王太子様の浮気の件も、すでに伝えてあります」
ジッノーレもどこか楽しそうだ。
「やっちゃうんですか、お嬢様」
ニマニマと笑うジッノーレ。彼女はもともと争い事が好きなようだ。もしかしたら、私を元気付けようとしてくれているのかもしれない。
「ええ、徹底的に、と、先ほど決めましたの」
私も口元を手で覆いながらニコッと笑顔で答えた。
ジッノーレと共にお父様の執務室へと向かう。着くまでの間、私たちは静かに微笑んでいたのだが、いいことがあったとでも思われたのだろう。すれ違う人達は皆私達に笑顔を向けてくれた。笑顔でいられるというのはいいことだ。
ノックをして、お父様の部屋の扉を開ける。扉からお父様の顔が見えた途端、途端、お父様は青ざめた顔で私に抱きついてきた。
「可哀想に。大変だったね。さあ、お入り。」
お父様はしてやられた私よりも悲しいらしく、今にも泣きそうだ。もうかなり大きくなった私。けれど、お父様はいつも会うと頭を撫でてくれる。今日はいつもに比べて優しく、まるで髪を解かれているようだった。
私がお父様にお会いしたいと呟くと、ジッノーレは行って参ります、と、お父様のもとへ行ってしまった。おそらく、私が会いたいと言っている、と、お父様に伝えるつもりなのだろう。
今お時間が取れないようなら、また今度でもいいのだけれど、ことは早急に対応しなければならない。いつ何を起こされるか、分からないからだ。音を立ててなるこの心臓。これは、緊張か、恐怖か。そんな可愛らしいものではない。
こうと決めたら私は曲げずにやってきた。ええ、やってやりますわ。徹底的にね。
ほとんど足音も立てずに帰ってきたジッノーレは、気がつくとドアの前までやってきていた。彼女は影の一員でもあるのだ。このくらい余裕なのだろう。
ドアが開かれて見えたのは、満面の笑みのジッノーレだった。これはいい返事が期待できそうだ。
「お父様はなんとおっしゃいましたの」
ゆっくりと椅子から立ち上がりながらジッノーレに問いかけると、彼女は私のもとまで歩いてきて可愛らしい笑顔を作った。
「今すぐ来いとのことです。王太子様の浮気の件も、すでに伝えてあります」
ジッノーレもどこか楽しそうだ。
「やっちゃうんですか、お嬢様」
ニマニマと笑うジッノーレ。彼女はもともと争い事が好きなようだ。もしかしたら、私を元気付けようとしてくれているのかもしれない。
「ええ、徹底的に、と、先ほど決めましたの」
私も口元を手で覆いながらニコッと笑顔で答えた。
ジッノーレと共にお父様の執務室へと向かう。着くまでの間、私たちは静かに微笑んでいたのだが、いいことがあったとでも思われたのだろう。すれ違う人達は皆私達に笑顔を向けてくれた。笑顔でいられるというのはいいことだ。
ノックをして、お父様の部屋の扉を開ける。扉からお父様の顔が見えた途端、途端、お父様は青ざめた顔で私に抱きついてきた。
「可哀想に。大変だったね。さあ、お入り。」
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