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番外編
中編
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そういえば、エイダンは第二王子だったわね。噂で聞くに、第一王子様はここ数年間海外に留学されていると聞いていたけれど、戻っていらっしゃったのね。
王子なら、この堂々とした態度にも理解ができる。王になるものとして、それなりの教育をされてきた証なのだろう。私に行われてきた教育もそれなりのものだったのに、王になる人の教育とはどのくらいのものなのだろうか。
「……では、失礼する」
私が声を発する暇も与えずに、リアム様は去っていってしまった。私に期待など微塵も与えないように。そんな雰囲気を漂わせていた気がするのは、気のせいだろうか。
翌日の朝。大事な話があるからと、お父様は皆を食堂に集めた。私たち家族だけでなく、使用人達までもを。私は少し戸惑いながらもメイドさん達に連れられて食堂へと向かっていった。そこに待っていたのは、お父様だけではなく、見覚えのある青年も一緒だった。
「リ、アム、様……」
使用人達は訳がわからないようでざわざわと話し始める。彼が誰かは、私達家族だけが知っていた。
「落ち着きなさい、お前達。私の話を聞くのだ」
そういうお父様自身が一番慌てているような気もするが……。そんなことより、どうして王族であるリアム様がここに。
「今日は皆に発表したいことがあるのだ」
だんだんと静かになっていった使用人達がお父様の声を耳を傾けた。お母様も心配そうに私の肩越しにお父様を見つめている。
「ここおられる、リアム王太子様と我が娘、アリッサとの婚約が決定した」
……えっ、なっ。
ちょ、ちょっと待って、待ってください。私が、リアム様と婚約。ありえないわ。そんな都合のいい話がある訳が……う、うそでしょっ。
「あ、こら、待ちなさい。どこへ行くのだ。ありっ、アリッサ」
私は気づけば食堂を飛び出して庭に出ていた。頭の中で何かで埋め尽くされているようにパニック状態だ。
花を見ても、木を見ても、美しいこの庭を見ても、私の心も頭も落ち着かなかった。
「リアム様と婚約……」
嘘だ。私はきっと自分に都合のいい夢を見ているんだ。きっと私はまだ眠ったままで、これは夢なんだ。早く夢から醒めないと。現実を見るのよ、アリッサ。
私は空に向かって手を振り上げた。そして、思いっきり自分のほお目掛けて振り下ろす。私は固く目を閉じて。けれどその手は、私の頬に届く前に何かにぶつかって止まってしまった。
「アリッサ、何をしている」
耳元で聞こえたその声に驚いて後ろを振り返る。そこにいたのは。
「リアム、様」
私の新たな婚約者……えっ、まさか、夢じゃないの。
王子なら、この堂々とした態度にも理解ができる。王になるものとして、それなりの教育をされてきた証なのだろう。私に行われてきた教育もそれなりのものだったのに、王になる人の教育とはどのくらいのものなのだろうか。
「……では、失礼する」
私が声を発する暇も与えずに、リアム様は去っていってしまった。私に期待など微塵も与えないように。そんな雰囲気を漂わせていた気がするのは、気のせいだろうか。
翌日の朝。大事な話があるからと、お父様は皆を食堂に集めた。私たち家族だけでなく、使用人達までもを。私は少し戸惑いながらもメイドさん達に連れられて食堂へと向かっていった。そこに待っていたのは、お父様だけではなく、見覚えのある青年も一緒だった。
「リ、アム、様……」
使用人達は訳がわからないようでざわざわと話し始める。彼が誰かは、私達家族だけが知っていた。
「落ち着きなさい、お前達。私の話を聞くのだ」
そういうお父様自身が一番慌てているような気もするが……。そんなことより、どうして王族であるリアム様がここに。
「今日は皆に発表したいことがあるのだ」
だんだんと静かになっていった使用人達がお父様の声を耳を傾けた。お母様も心配そうに私の肩越しにお父様を見つめている。
「ここおられる、リアム王太子様と我が娘、アリッサとの婚約が決定した」
……えっ、なっ。
ちょ、ちょっと待って、待ってください。私が、リアム様と婚約。ありえないわ。そんな都合のいい話がある訳が……う、うそでしょっ。
「あ、こら、待ちなさい。どこへ行くのだ。ありっ、アリッサ」
私は気づけば食堂を飛び出して庭に出ていた。頭の中で何かで埋め尽くされているようにパニック状態だ。
花を見ても、木を見ても、美しいこの庭を見ても、私の心も頭も落ち着かなかった。
「リアム様と婚約……」
嘘だ。私はきっと自分に都合のいい夢を見ているんだ。きっと私はまだ眠ったままで、これは夢なんだ。早く夢から醒めないと。現実を見るのよ、アリッサ。
私は空に向かって手を振り上げた。そして、思いっきり自分のほお目掛けて振り下ろす。私は固く目を閉じて。けれどその手は、私の頬に届く前に何かにぶつかって止まってしまった。
「アリッサ、何をしている」
耳元で聞こえたその声に驚いて後ろを振り返る。そこにいたのは。
「リアム、様」
私の新たな婚約者……えっ、まさか、夢じゃないの。
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