私に幸せになって欲しい?なら婚約破棄よ

空月 若葉

文字の大きさ
6 / 7
番外編

中編

しおりを挟む
 そういえば、エイダンは第二王子だったわね。噂で聞くに、第一王子様はここ数年間海外に留学されていると聞いていたけれど、戻っていらっしゃったのね。
 王子なら、この堂々とした態度にも理解ができる。王になるものとして、それなりの教育をされてきた証なのだろう。私に行われてきた教育もそれなりのものだったのに、王になる人の教育とはどのくらいのものなのだろうか。
「……では、失礼する」
私が声を発する暇も与えずに、リアム様は去っていってしまった。私に期待など微塵も与えないように。そんな雰囲気を漂わせていた気がするのは、気のせいだろうか。

 翌日の朝。大事な話があるからと、お父様は皆を食堂に集めた。私たち家族だけでなく、使用人達までもを。私は少し戸惑いながらもメイドさん達に連れられて食堂へと向かっていった。そこに待っていたのは、お父様だけではなく、見覚えのある青年も一緒だった。
「リ、アム、様……」
使用人達は訳がわからないようでざわざわと話し始める。彼が誰かは、私達家族だけが知っていた。
「落ち着きなさい、お前達。私の話を聞くのだ」
そういうお父様自身が一番慌てているような気もするが……。そんなことより、どうして王族であるリアム様がここに。
「今日は皆に発表したいことがあるのだ」
だんだんと静かになっていった使用人達がお父様の声を耳を傾けた。お母様も心配そうに私の肩越しにお父様を見つめている。
「ここおられる、リアム王太子様と我が娘、アリッサとの婚約が決定した」
……えっ、なっ。
 ちょ、ちょっと待って、待ってください。私が、リアム様と婚約。ありえないわ。そんな都合のいい話がある訳が……う、うそでしょっ。
「あ、こら、待ちなさい。どこへ行くのだ。ありっ、アリッサ」
私は気づけば食堂を飛び出して庭に出ていた。頭の中で何かで埋め尽くされているようにパニック状態だ。
 花を見ても、木を見ても、美しいこの庭を見ても、私の心も頭も落ち着かなかった。
「リアム様と婚約……」
嘘だ。私はきっと自分に都合のいい夢を見ているんだ。きっと私はまだ眠ったままで、これは夢なんだ。早く夢から醒めないと。現実を見るのよ、アリッサ。
 私は空に向かって手を振り上げた。そして、思いっきり自分のほお目掛けて振り下ろす。私は固く目を閉じて。けれどその手は、私の頬に届く前に何かにぶつかって止まってしまった。
「アリッサ、何をしている」
耳元で聞こえたその声に驚いて後ろを振り返る。そこにいたのは。
「リアム、様」
私の新たな婚約者……えっ、まさか、夢じゃないの。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢カタリナ・クレールの断罪はお断り(断罪編)

三色団子
恋愛
カタリナ・クレールは、悪役令嬢としての断罪の日を冷静に迎えた。王太子アッシュから投げつけられる「恥知らずめ!」という罵声も、学園生徒たちの冷たい視線も、彼女の心には届かない。すべてはゲームの筋書き通り。彼女の「悪事」は些細な注意の言葉が曲解されたものだったが、弁明は許されなかった。

お金に目がくらんで、婚約破棄しました

こうじゃん
恋愛
婚約していたアランに婚約破棄しました。 だって、お金がないんだもん。 新たに婚約を申し出てくれたトレーニ伯爵は、お金持ち。 しょうがないよね???? わたし、愛よりお金をとります!!

わたくし、連座で処刑は嫌ですわ!!!

碧井 汐桜香
恋愛
連座で処刑される、悪役令嬢の取り巻きに転生したわたくし。 悪役令嬢親衛隊の下っ端で、殿下と令嬢の恋を見守る会の一般会員。 そんな下っ端のわたくしが連座で処刑なんて、絶対に嫌ですわ! 必死に妨害をして、少しだけストーリーが変わったきがするような……?でも、ついに断罪の日になってしまいましたわ! あれ?何か様子がおかしいですわ……?

婚約破棄。される前にしてやりましょう

碧井 汐桜香
恋愛
乙女ゲーの悪役令嬢だと気づいたのは、断罪されるパーティーに向かう馬車の中!? お父様に頼んで各所と交渉してもらい、いろんな証拠をしっかりと固めて、先に婚約破棄を宣言して差し上げましょう。

婚約破棄した王子が見初めた男爵令嬢に王妃教育をさせる様です

Mr.後困る
恋愛
婚約破棄したハワード王子は新しく見初めたメイ男爵令嬢に 王妃教育を施す様に自らの母に頼むのだが・・・

婚約破棄されたのに、王太子殿下がバルコニーの下にいます

ちよこ
恋愛
「リリス・フォン・アイゼンシュタイン。君との婚約を破棄する」 王子による公開断罪。 悪役令嬢として破滅ルートを迎えたリリスは、ようやく自由を手に入れた……はずだった。 だが翌朝、屋敷のバルコニーの下に立っていたのは、断罪したはずの王太子。 花束を抱え、「おはよう」と微笑む彼は、毎朝訪れるようになり—— 「リリス、僕は君の全てが好きなんだ。」 そう語る彼は、狂愛をリリスに注ぎはじめる。 婚約破棄×悪役令嬢×ヤンデレ王子による、 テンプレから逸脱しまくるダークサイド・ラブコメディ!

魔法にかかった本物の悪役令嬢は求婚される

仲室日月奈
恋愛
「フランツェスカ・ヴァイス。君との婚約を、今日限りをもって破棄させていただく。理由は君が一番理解しているだろう」 婚約破棄から始まる断罪イベント。決められたシナリオのように話は進むが、新たな婚約者に指名されたディアナにはある秘密があった――。

堕とされた悪役令嬢

芹澤©️
恋愛
「アーリア・メリル・テレネスティ。今日を持って貴様との婚約は破棄する。今迄のレイラ・コーストへの数々の嫌がらせ、脅迫はいくら公爵令嬢と言えども見過ごす事は出来ない。」 学園の恒例行事、夏の舞踏会場の真ん中で、婚約者である筈の第二王子殿下に、そう宣言されたアーリア様。私は王子の護衛に阻まれ、彼女を庇う事が出来なかった。

処理中です...