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3話 言いがかりと侵入者

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 私たちは今日の朝、唐突に王城に呼び出された。私はその理由をもう知っている。私の大切な人から聞いたのだ。私の婚約者達の企てを。
 王城に着いた途端、私達は衛兵達に囲まれた。槍を向けられ、お父様とお母様は驚いて、キョロキョロしている。
 今、王城には魔国の今の王様がきているそうだ。それなのに、これはいったいどういう事態なのか。自国の恥を晒すつもりか。
「ローズ・ネモネ」
 兵達に誘導されて謁見の間につくと、怒りのこもった声で名前を呼ばれ、上を見上げる。すると、玉座へと続く階段の半ばに、憎しみに支配された私の婚約者、アーロン様が立っていた。その横には、見覚えのある女の姿もある。
 彼女の名前は、確かローイエ・ストック様。隣国の王女様だ。最近この国に留学に来ている彼女は、最近アーロン様と仲良くしていらっしゃると噂が流れていたが、どうやらそれは本当だったらしい。アーロン様の腕を掴み、うるうるさせた目で私を見下ろしている。
「お前、ローイエ様に暴力を振るったらしいな」
 証拠もないのに、よくそんなことが言えるものだ。けれど、確かにローイエ様の頬は腫れている。大方何かにぶつけたり、自分で叩いたりしたのだろう。けれどまあ、ここまでは予想通りだ。
「お前との結婚は取りやめだ。全く、昔から俺のいうことを信じず、自分の罪も認めない女だとは思っていたが、王女に不敬を働くなんてな……」
 呆れたようにアーロン様は頭を押さえる。
「ああ、そうだわ。ご両親は関係ないから許してあげるけど、あなたは国外追放だからね。ロ、オ、ズ、さ、ま」
 ……。何がしたいのだろうか、こいつらは。この男は。証拠もないのに、私を貶めようとする頭のおかし……王女様のいうことを一方的に信じたばかりか、私を国外追放だなんて。
 まあ、今更そんなことはどうでもいい。馬鹿なことをしているとは思うが、私にとってはむしろ好都合だ。
 私は思わず笑ってしまいそうになる口元を隠すと、入口の方を横目で見た。そろそろ彼が来る頃だろうと思ったからだ。
 バンッ。大きな音がして、扉が勢いよく開く。そこにいたのは、星空のように美しい銀の髪を持つ、真っ黒な格好をした男だった。眼鏡をかけた彼は、鋭い目つきで私たちを見つめている。
「失礼する」
 彼は低い、怒りのこもった声でそういうと、ズカズカと私たちに近づいてきた。
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