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21.毒か蜜か
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SIDE:アルマール王国
ゴン、とナシルのいる執務室から鈍い音がして、続きの間に控えていたオルクリーはノックもせずに部屋に飛び込んだ。
「殿下っ……ものすごい音がしました……が……」
ナシルはさして驚いた様子もなくオルクリーに視線を注ぎ、取り繕うように苦笑した。
「あぁすまない。思わず額を机にぶつけてしまった」
「思わず?」
「先刻フィアルテ達につけてる”影”から定期報告が届いてな……読むか?」
机上に広げていた報告書をオルクリーに差し出す。
「よろしいので?」
「構わん」
神妙な面持ちで報告書を受け取って手元に視線を落としたオルクリーをナシルが上目遣いに見つめてぼそりと呟く。
「フィアルテとアキ殿が褥を共にしたそうだ」
沈黙が部屋を満たす。ナシルが冷めた茶をすすって、茶器をゆっくり机に置いた。
しとね。褥か。一拍置いて言葉の意味を咀嚼したオルクリーがぎょっとした顔をナシルに向ける。
「まさか、フィアルテが……?」
騎士団の中では一番常識人で品行方正なフィアルテがアキ様を?
動揺もそのままにオルクリーが報告書の後半部に目を走らせ始めると、ナシルが説明を付け加えた。
「案内役の魔族の公子に襲われてアキ殿がひどい魔力酔いを起こしたのをフィアルテが鎮めた、という意味だ。まぁ経緯を読むに、事故のようなものだろう」
オルクリーはほっと安堵の息を吐いたが、すぐに怫然とした表情で苦言を呈した。
「しかしアキ様が襲われたこと自体は問題です。フィアルテたちは一体何を」
「敵にやられたわけではないんだ。今回の件でフィアルテたちを咎め立てする必要はないぞ?」
ナシルが釘を刺すと、オルクリーは難しい顔をしたまま押し黙る。ナシルは報告書を再び机上に戻して、ため息混じりに零した。
「しかしキールといいエルシオンといい、アキ殿はなんというか……厄介な人間にちょっかいを出されるな」
「あの容姿に、異世界人という物珍しさもあるのでしょう。今後は厄介な属性の人間だけではなく我々の周辺……王宮内で似たようなことが起きてもおかしくないかと」
「あぁ、貴族連中がアキ殿と娘御を娶わせようとしているのだろう?」
目を閉じて額とこめかみを指で押さえたナシルに、オルクリーが片眉を跳ね上げた。
「ご存じでしたか」
「ちょくちょく耳にはしていた。まぁ前回の異世界人が最終的にこちらで所帯を持ったらしいからな。あわよくばということなのだろう」
こちらでは黒が力を持つから、黒目黒髪の血筋が欲しいのだ。とはいえ、配偶者の片方が黒い色彩を持っていても、子供がはっきり黒の特徴をもって生まれることは珍しいし、黒の特徴があるからといって必ずしも魔力が強いというわけでもない。それでも欲するのは、アキの容姿のせいもあるかもしれない。アキは自分の顔を平凡と自認しているようだが、こちらの基準で言わせてもらえば見目麗しい部類に入る。そして体つきに男っぽい威圧感がないので人が寄りつきやすい雰囲気を醸してしまっているのだ。
「離宮内であっても、なるべくお一人で歩かせないようにはするつもりですが」
「そうした方がいいだろうな……見合いの誘い程度ならかわいいものだが、襲って既成事実を作ろうとする者もいるだろうから」
「襲……相手が女性であればさすがにアキ様もいいようにはされないでしょう」
ナシルが首を振る。
「なんらかの魔法や魔術を使われたらひとたまりもないぞ。指輪も万能ではないしな」
「では基礎魔法だけでなく護身術程度に剣術や体術の稽古もつけますか」
オルクリーの提案に、ナシルがうーんと唸る。
「本人が嫌がらなければ多少たしなませても構わんが……あれもこれもと、アキ殿に求めすぎてはいないか?」
「アキ様も自分で自分の身を守れないのは不本意ではないかと思うのですが」
「アキ殿は戦士じゃないんだ。こちらの世界の人間と比べればだいぶ体格も劣る。半端に鍛えて下手な自信をつけさせる方が危ないだろう」
「それはそうなのですが。アキ様の狙われる頻度が半端ではないので……世話係の者を既に2人配置換えしておりますし」
ナシルが顔を改めてオルクリーを見上げる。
「……聞いてないな」
「アキ様の身柄を王宮で預かる話が出ていた頃だったので私と侍従長で内々に処理いたしました」
「アキ殿に危害を加えようとしたのか?」
「いえ……いや、ある意味そうです。一人は売り物にするためにアキ様の髪を切ろうとして、一人は私物を盗もうとして、それぞれフィアルテたちに捕まりまして」
「髪の毛ね。あの迷信はまだ生きているわけだ」
黒い髪の毛を媒介にした大願成就の呪いやら魔導具の魔力付与のツナギやらで使いたいと、ナシルも小さい頃はしょっちゅう髪の毛を求められた。
「私物というのは」
「……下着です」
「下着?それまたどうして……」
オルクリーが肩をすぼめて言葉を濁す。
「売るつもりはなかったようですけどね」
ということは自分用?用途はなんだ、と追及しかけてやめた。ここを深掘りしても仕方がない。オルクリーの生暖かい視線だけで十分察しがつく。
「……離宮に出入りできる身元の確かな者がそのような馬鹿げたことをするとは信じられんな」
「アキ様がそれだけこの世界にとって格外の存在ということでしょう。アキ様を目の前にすると侍従も女官もどこかそわそわしておりますし」
「そんなにか?私は別にアキ殿を見ていてそういう気分になったことはないがな」
「殿下はあまりこちらにおいでになりませんから……」
「その言い方だと長時間接しているお前は少々あやしい気分になる、ということにならんか?」
ナシルの胡乱な目にオルクリーが苦い笑みを浮かべて答える。
「まぁそこまでではありませんが。独特の人の良さと隙があって庇護欲を掻き立てる人間だなとは思います」
「お前がアキ殿に甘いのはそういうわけか」
「甘い、ですか?」
「少なくとも幼少期の私に対するよりは過保護だろう」
渋い声で言うナシルをオルクリーが面白そうに見遣る。
「そうですか?殿下のことも猫可愛がりしていたつもりですが」
しれっと首をかしげるオルクリーにナシルの瞼がじとりと下がる。
「冷たい微笑みを向けられた記憶しかないんだが」
「それは殿下がしょっちゅう授業をすっぽかして後宮を脱走なさるからで」
「一度弓を引いたことすらあっただろう」
「ありましたね。殿下がきちんと動きを止めてくださいましたので、見事袖口を射ることができました」
王宮の一番外側の城門で、衛兵を気絶させてようやく外だ!と思ったらオルクリーが弓を引いているのが見えたので慌てて動きを止めたのだ。殺されるとは思わなかったが冷や汗はかいた。ちなみに矢は見事袖を射ち抜いてナシルの身体を城門に縫いとめーー文字通り臣下が王族に弓を引いたということで後々大問題になった。あの頃はオルクリーも若かったのである。
「あれが“猫可愛がり”か?」
「互いに信頼がなければできないことです」
「……まぁいい。お前はきっとアキ殿には弓を引かん。そういうことだ」
「もしや拗ねていらっしゃる?私がアキ様に対して過保護だから?」
「子供じゃあるまいし。お前に自覚がないようだったから、アキ殿に対する甘さを自覚させてやっただけだ」
「それはありがとうございます」
おどけて礼を言うと、ナシルが面白くなさそうな顔をする。こんなに表情をくるくる変えるナシルを見るのは久しぶりで、オルクリーは内心驚いていた。良くも悪くも何事も淡々とした態度で捌き、気心の知れた人間相手には格別、こと外向きには表情の8割が無表情と評されるナシルである。そういう意味でも異世界人は特別なのかもしれない。
ナシルがオルクリーからふいっと目を逸らし、再び報告書に目を落とした。
「しかしフィアルテが少し心配だな」
「アキ様ではなく?」
「アキ殿は分からんが……フィアルテはそういう方面で割り切りのいい人間じゃないだろう。引き摺るというか、妙なところで情が深くて生真面目な男だから」
ナシルからフィアルテの性格に対する評価を聞くのは初めてで、オルクリーは興味深げに目を眇めた。
「心配は無用でしょう。情を移したり感情をこじらせたりしたとしてもフィアルテは任務をおろそかにする人間ではありませんので」
「私もそこは心配していないがな」
「というよりむしろアキ様がリノリアンであることの方が問題です。ただの異世界人なら魔族に関心を持たれたとしてもたかが知れていますが、リノリアンとなると話は別ですので」
「もう一度あちらに親書を出してから追加で人を送るか?」
「返書を待たずに、少なくとも国境には手勢を揃えておいた方がいいでしょう」
ナシルが深い息を吐く。
「アキ殿は人間も魔族も惹きつける甘い毒というわけだ」
「毒、というよりは蜜でしょうね」
「網目の細かい籠で覆わねば、群がる虫を追い払うのは難しいな」
「とはいえ閉じ込めるわけにもいきますまい」
問題は山積だ。署名を終えていない未決の書類箱に山と積まれた書面を横目に見ながら、ナシルは小さく息を吐く。
「これでアキ殿がこちらに来て2週間も経たぬと言うのだから驚きだな」
「腕が鳴るでしょう。殿下は面倒ごとがお好きですから」
「好きなわけではないぞ?面倒ごとに巻き込まれやすいだけで」
ナシルが苦労人の顔でぼやくと、オルクリーは労わるような表情を浮かべて淡く微笑む。
窓の外には丸く満ちた白い月と赤みがかった小さな天体が並んで浮かんでいた。
ゴン、とナシルのいる執務室から鈍い音がして、続きの間に控えていたオルクリーはノックもせずに部屋に飛び込んだ。
「殿下っ……ものすごい音がしました……が……」
ナシルはさして驚いた様子もなくオルクリーに視線を注ぎ、取り繕うように苦笑した。
「あぁすまない。思わず額を机にぶつけてしまった」
「思わず?」
「先刻フィアルテ達につけてる”影”から定期報告が届いてな……読むか?」
机上に広げていた報告書をオルクリーに差し出す。
「よろしいので?」
「構わん」
神妙な面持ちで報告書を受け取って手元に視線を落としたオルクリーをナシルが上目遣いに見つめてぼそりと呟く。
「フィアルテとアキ殿が褥を共にしたそうだ」
沈黙が部屋を満たす。ナシルが冷めた茶をすすって、茶器をゆっくり机に置いた。
しとね。褥か。一拍置いて言葉の意味を咀嚼したオルクリーがぎょっとした顔をナシルに向ける。
「まさか、フィアルテが……?」
騎士団の中では一番常識人で品行方正なフィアルテがアキ様を?
動揺もそのままにオルクリーが報告書の後半部に目を走らせ始めると、ナシルが説明を付け加えた。
「案内役の魔族の公子に襲われてアキ殿がひどい魔力酔いを起こしたのをフィアルテが鎮めた、という意味だ。まぁ経緯を読むに、事故のようなものだろう」
オルクリーはほっと安堵の息を吐いたが、すぐに怫然とした表情で苦言を呈した。
「しかしアキ様が襲われたこと自体は問題です。フィアルテたちは一体何を」
「敵にやられたわけではないんだ。今回の件でフィアルテたちを咎め立てする必要はないぞ?」
ナシルが釘を刺すと、オルクリーは難しい顔をしたまま押し黙る。ナシルは報告書を再び机上に戻して、ため息混じりに零した。
「しかしキールといいエルシオンといい、アキ殿はなんというか……厄介な人間にちょっかいを出されるな」
「あの容姿に、異世界人という物珍しさもあるのでしょう。今後は厄介な属性の人間だけではなく我々の周辺……王宮内で似たようなことが起きてもおかしくないかと」
「あぁ、貴族連中がアキ殿と娘御を娶わせようとしているのだろう?」
目を閉じて額とこめかみを指で押さえたナシルに、オルクリーが片眉を跳ね上げた。
「ご存じでしたか」
「ちょくちょく耳にはしていた。まぁ前回の異世界人が最終的にこちらで所帯を持ったらしいからな。あわよくばということなのだろう」
こちらでは黒が力を持つから、黒目黒髪の血筋が欲しいのだ。とはいえ、配偶者の片方が黒い色彩を持っていても、子供がはっきり黒の特徴をもって生まれることは珍しいし、黒の特徴があるからといって必ずしも魔力が強いというわけでもない。それでも欲するのは、アキの容姿のせいもあるかもしれない。アキは自分の顔を平凡と自認しているようだが、こちらの基準で言わせてもらえば見目麗しい部類に入る。そして体つきに男っぽい威圧感がないので人が寄りつきやすい雰囲気を醸してしまっているのだ。
「離宮内であっても、なるべくお一人で歩かせないようにはするつもりですが」
「そうした方がいいだろうな……見合いの誘い程度ならかわいいものだが、襲って既成事実を作ろうとする者もいるだろうから」
「襲……相手が女性であればさすがにアキ様もいいようにはされないでしょう」
ナシルが首を振る。
「なんらかの魔法や魔術を使われたらひとたまりもないぞ。指輪も万能ではないしな」
「では基礎魔法だけでなく護身術程度に剣術や体術の稽古もつけますか」
オルクリーの提案に、ナシルがうーんと唸る。
「本人が嫌がらなければ多少たしなませても構わんが……あれもこれもと、アキ殿に求めすぎてはいないか?」
「アキ様も自分で自分の身を守れないのは不本意ではないかと思うのですが」
「アキ殿は戦士じゃないんだ。こちらの世界の人間と比べればだいぶ体格も劣る。半端に鍛えて下手な自信をつけさせる方が危ないだろう」
「それはそうなのですが。アキ様の狙われる頻度が半端ではないので……世話係の者を既に2人配置換えしておりますし」
ナシルが顔を改めてオルクリーを見上げる。
「……聞いてないな」
「アキ様の身柄を王宮で預かる話が出ていた頃だったので私と侍従長で内々に処理いたしました」
「アキ殿に危害を加えようとしたのか?」
「いえ……いや、ある意味そうです。一人は売り物にするためにアキ様の髪を切ろうとして、一人は私物を盗もうとして、それぞれフィアルテたちに捕まりまして」
「髪の毛ね。あの迷信はまだ生きているわけだ」
黒い髪の毛を媒介にした大願成就の呪いやら魔導具の魔力付与のツナギやらで使いたいと、ナシルも小さい頃はしょっちゅう髪の毛を求められた。
「私物というのは」
「……下着です」
「下着?それまたどうして……」
オルクリーが肩をすぼめて言葉を濁す。
「売るつもりはなかったようですけどね」
ということは自分用?用途はなんだ、と追及しかけてやめた。ここを深掘りしても仕方がない。オルクリーの生暖かい視線だけで十分察しがつく。
「……離宮に出入りできる身元の確かな者がそのような馬鹿げたことをするとは信じられんな」
「アキ様がそれだけこの世界にとって格外の存在ということでしょう。アキ様を目の前にすると侍従も女官もどこかそわそわしておりますし」
「そんなにか?私は別にアキ殿を見ていてそういう気分になったことはないがな」
「殿下はあまりこちらにおいでになりませんから……」
「その言い方だと長時間接しているお前は少々あやしい気分になる、ということにならんか?」
ナシルの胡乱な目にオルクリーが苦い笑みを浮かべて答える。
「まぁそこまでではありませんが。独特の人の良さと隙があって庇護欲を掻き立てる人間だなとは思います」
「お前がアキ殿に甘いのはそういうわけか」
「甘い、ですか?」
「少なくとも幼少期の私に対するよりは過保護だろう」
渋い声で言うナシルをオルクリーが面白そうに見遣る。
「そうですか?殿下のことも猫可愛がりしていたつもりですが」
しれっと首をかしげるオルクリーにナシルの瞼がじとりと下がる。
「冷たい微笑みを向けられた記憶しかないんだが」
「それは殿下がしょっちゅう授業をすっぽかして後宮を脱走なさるからで」
「一度弓を引いたことすらあっただろう」
「ありましたね。殿下がきちんと動きを止めてくださいましたので、見事袖口を射ることができました」
王宮の一番外側の城門で、衛兵を気絶させてようやく外だ!と思ったらオルクリーが弓を引いているのが見えたので慌てて動きを止めたのだ。殺されるとは思わなかったが冷や汗はかいた。ちなみに矢は見事袖を射ち抜いてナシルの身体を城門に縫いとめーー文字通り臣下が王族に弓を引いたということで後々大問題になった。あの頃はオルクリーも若かったのである。
「あれが“猫可愛がり”か?」
「互いに信頼がなければできないことです」
「……まぁいい。お前はきっとアキ殿には弓を引かん。そういうことだ」
「もしや拗ねていらっしゃる?私がアキ様に対して過保護だから?」
「子供じゃあるまいし。お前に自覚がないようだったから、アキ殿に対する甘さを自覚させてやっただけだ」
「それはありがとうございます」
おどけて礼を言うと、ナシルが面白くなさそうな顔をする。こんなに表情をくるくる変えるナシルを見るのは久しぶりで、オルクリーは内心驚いていた。良くも悪くも何事も淡々とした態度で捌き、気心の知れた人間相手には格別、こと外向きには表情の8割が無表情と評されるナシルである。そういう意味でも異世界人は特別なのかもしれない。
ナシルがオルクリーからふいっと目を逸らし、再び報告書に目を落とした。
「しかしフィアルテが少し心配だな」
「アキ様ではなく?」
「アキ殿は分からんが……フィアルテはそういう方面で割り切りのいい人間じゃないだろう。引き摺るというか、妙なところで情が深くて生真面目な男だから」
ナシルからフィアルテの性格に対する評価を聞くのは初めてで、オルクリーは興味深げに目を眇めた。
「心配は無用でしょう。情を移したり感情をこじらせたりしたとしてもフィアルテは任務をおろそかにする人間ではありませんので」
「私もそこは心配していないがな」
「というよりむしろアキ様がリノリアンであることの方が問題です。ただの異世界人なら魔族に関心を持たれたとしてもたかが知れていますが、リノリアンとなると話は別ですので」
「もう一度あちらに親書を出してから追加で人を送るか?」
「返書を待たずに、少なくとも国境には手勢を揃えておいた方がいいでしょう」
ナシルが深い息を吐く。
「アキ殿は人間も魔族も惹きつける甘い毒というわけだ」
「毒、というよりは蜜でしょうね」
「網目の細かい籠で覆わねば、群がる虫を追い払うのは難しいな」
「とはいえ閉じ込めるわけにもいきますまい」
問題は山積だ。署名を終えていない未決の書類箱に山と積まれた書面を横目に見ながら、ナシルは小さく息を吐く。
「これでアキ殿がこちらに来て2週間も経たぬと言うのだから驚きだな」
「腕が鳴るでしょう。殿下は面倒ごとがお好きですから」
「好きなわけではないぞ?面倒ごとに巻き込まれやすいだけで」
ナシルが苦労人の顔でぼやくと、オルクリーは労わるような表情を浮かべて淡く微笑む。
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