私を支配するあの子

葛原そしお

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煉獄篇

第十六話②

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 人を人とも思わない遊びを提案して、エリザちゃんは何かとても素敵なことを思いついたかのように楽しそうだった。
「それじゃ順番は、じゃんけんで決めるよ。勝った人から好きな順番を選んでいってね」
 私たちはベッドに拘束されたお姉ちゃんの横で、じゃんけんをする。お姉ちゃんは怯えた目で私たちを見ていた。
 エリザちゃんに抗議して、私がお姉ちゃんの代わりになりたかった。ただここで私が交代を申し出たら、先の約束も反故にされるかもしれない。だから私は噛み潰すように、言葉を呑んだ。
 この引き出せた約束で、私がエリザちゃんに勝つことができれば、もう私たちは彼女に脅迫されなくなる。絶対に勝たなければいけない。このじゃんけんでも──そう思ったけれど、何番がいいのかとか、よくわからなかった。
 ただ私が考えを巡らせている間にも、じゃんけんは始まってしまう。
「最初はぐー、じゃんけん、ぽん」
 私はグー、エリザちゃんはパー、砂村さんはグー、姫山さんはチョキ。
「あいこで、しょっ」
 それを三回ほど繰り返して、最初に勝ったのは姫山さんだった。
「マリーちゃん、何番目がいい?」
「三番」
「勝ちにいってるね」
 エリザちゃんが笑った。なぜ姫山さんが選んだ三番目の順番が勝ちにつながるのか、意味はわからなかった。ただやはり順番が重要なようだった。姫山さんに先にとられて悔しい気持ちになったけれど、かといって私が勝ってもその順番を選ぶ発想にいたったとは思えない。
 その次に勝ったのはエリザちゃんだった。
「私は一番」
 そして意気込んだのに、結局私は砂村さんにも負けてしまった。
「四番ね」
 私は余った二番だった。それがどういう意味なのか、不利なのかもわからなかった。すでにゲームを理解している様子の三人が選ばなかったということは、よくない順番なのかもしれない。
 不意にエリザちゃんが私の耳元に口を寄せ、囁くように言う。
「ハナちゃん、女性がオーガズム期に入るのは、自慰を始めてから約十五分。だけどそれは平均で、実際には十分以内に達する人が多くて、次に五分以内。ハナちゃんの二番が、一番有利だよ」
 あのエリザちゃんが親切にそんなことを教えてくれるとは思えなかった。それなら自分が二番になればよかったのに。
「マリーちゃんはね、自分かダリアちゃんを勝たせるつもりでいると思うの。ただダリアちゃんは自分が勝つことだけを考えているから、四番にしたはず。もし私とダリアちゃんが連続して、次がマリーちゃんなら確実にイカされていた。それがわかっていたからダリアちゃんは四番にしたんじゃないかな。もし私が四番だったら、マリーちゃんは確実にディレイをかけてくる。だからこの勝負はハナちゃんにかかってるよ。単純なテクニックよりも、心理的な安心感から、ハナちゃんにお姉ちゃんは気を抜くはず。一周目はなるべく責めないで、二周目で一気にキメよう」
「聞こえてるわよ」
 砂村さんが腕組みしながら、エリザちゃんに言った。
「まあ、私が勝たせてもらうけど」
 砂村さんは自信に満ちていて、私は怖かった。
「咲良さん」
「え、あ、はいっ?」
 不意に姫山さんから声をかけられて、私は驚いた。姫山さんから話しかけられたのは初めてかもしれない。
「咲良さんは私かダリアちゃんを勝たせるべき。私とダリアちゃんは、咲良さんとお姉さんに興味がない。私たちのどちらかが勝てば、咲良さんたちには何もしないであげる」
「え」
 それにエリザちゃんが釘を刺すように言う。
「あ、今日の十七時まで、トイレ以外でこの部屋を出るのは禁止ね」
 姫山さんはエリザちゃんを無視する。
「私たちが勝ったら、咲良さんたちには何もしないと約束する」
 姫山さんは私に交渉をもちかけているようだった。
「ダリアちゃんはどうかな? ダリアちゃんが勝っても、私がお願いしたら聞いてくれるかも」
「私は別に、なんだっていいわよ……」
 それに対してエリザちゃんは、面白がる様子で横から口を出してきた。姫山さんはそれを無視して続ける。
「よく考えて。エリザちゃんが勝ったらどうなるか」
 姫山さんが念を押してくる。
「それにエリザちゃんは嘘をついている。彼女が一番を選んだのは、言った通り、二周目で勝負をかけるつもりだから。ただそれは彼女自身が勝つためで、あなたのことは考慮していない」
「それは、どういうこと……?」
「エリザちゃんはあなたに協力するつもりがないってこと」
 それはよくわかっていた。
「もし私が姫山さんに協力したら、私たちの写真や動画のデータを消してくれる……?」
「そこまであなたに利するつもりはない。あなたにとって、エリザちゃんが勝つことよりマシってだけ」
 私は淡い期待を抱いたけれど、姫山さんは私たちに少しも興味がないため、この提案をしてきただけだった。
 姫山さんは別に私たちの味方というわけではなかった。
「あなたじゃエリザちゃんに勝てない。だからあなたの次の私に、有利になるよう行動するべき」
「そうくるんだ。面白いね。いいよ、ハナちゃん。このゲームで私の敵に回っても。そのことで二人にお仕置きをしたりしないって約束する。ハナちゃんも純粋にこのゲームを楽しもう」
 その言葉も、嘘が混ざっているように思えた。
 それにゲームはまだ始まっていないはずなのに、エリザちゃんと姫山さんの二人は、すでに駆け引きをしているようだった。私はこれから何が始まるのか、どうすればいいのかも、よくわかっていないのに。
 どうすれば私は彼女たちに勝って、お姉ちゃんを、家族を助けることができるのだろうか。

   *  *  *

 ベッドに拘束されたお姉ちゃんの横に、三脚が設置され、その上に姫山さんのスマートフォンが据えられた。
 エリザちゃんは暑いのか、ブラウスのボタンを外しながら砂村さんに言う。
「タイマーは、誰のでやる?」
「私のでいいわよ。五分ね。あと、私たちも裸でやるの?」
「どっちでもいいよ。タイマーよろしくね。あと、該当ターンのプレイヤーがお姉ちゃんに触れた時点でタイマー開始ね。それから、前のプレイヤーのターンがおわったあと、次のプレイヤーは十秒以内に開始することにしようか。何もしなくても、十秒経ったらターン開始。もし焦らす戦略の場合、有利になるからね」
「わかったわ──それで、あなたは脱ぐのね……」
 エリザちゃんは下着姿になった。フリルのついた薄緑色の下着だった。
「だってお姉ちゃん、一人だけ裸でかわいそうだから」
 少しでも、かわいそうだと思っているのなら、こんなことやめてほしかった。
「それじゃダリアちゃん、タイマーお願い。ダリアちゃんの時は私がやるね」
 エリザちゃんはそう言うと、拘束されたお姉ちゃんに覆い被さる。エリザちゃんの手が、お姉ちゃんの腰に触れた。それにお姉ちゃんは目を固くつぶって、体を震わせた。
「スタート」
 砂村さんが無情に開始を告げた。
 エリザちゃんはどうしてこんなひどいことを思いついて、どうして無邪気に、悪気など少しもない様子で、それを私たちにできるのだろうか。
 私はこの最低な遊びを、止めることもできず、見守っていることしかできなかった。
 お姉ちゃんは目と唇をきつく結んで、顔を背けていた。手足は拘束されて、逃げることも、抗うこともできない。
 そのお姉ちゃんにエリザちゃんは唇を近づけて、左耳を舐める。右手は左の乳房をゆっくりと揉んでいた。
「お姉ちゃん、かわいいよ」
 エリザちゃんが嘲るように、お姉ちゃんの耳元でささやいた。
 そのまま耳を舐めながら、お姉ちゃんの左の乳首を指の腹で転がす。
「んっ……!」
 それにお姉ちゃんが苦しそうに声を漏らした。
 私はそれに、お腹の下の方が締めつけられるように痛んだ。私自身の無力さを呪った。大切な、大好きなお姉ちゃんを守ることもできない。私がこの怪物に目をつけられたことで、お姉ちゃんまで巻き込んでしまったのに、少しも守ることができない。
「お姉ちゃん、私の指で感じてくれてるんだ。嬉しい」
「そんなわけない……」
「うそ。だってお姉ちゃん、もう濡れてるよ」
 エリザちゃんの右膝が、お姉ちゃんの股の間を、あそこをこする。
「うっ……くっ……!」
 お姉ちゃんは苦しそうにうめいていた。
「本当は二周目からのつもりだったんだけどな」
 そう言うとエリザちゃんは体を下げる。お姉ちゃんの右胸の先に口づけして、左の乳首をいじっていた右手を股の間に滑らせる。
「あっ、や、やだっ……!」
 エリザちゃんの指がお姉ちゃんのあそこを撫で、こすると、少しずつ水気のある音が聞こえてきた。
「ん、うっ……!」
 お姉ちゃんは固く目をつぶって、下唇を噛んで声を堪えているようだった。
 エリザちゃんの指は、お姉ちゃんの割れ目の中の上にある、突起を転がしているようだった。
「あっ、あっ……!」
 お姉ちゃんの息は短く、早く、苦しそうな声にも甘い響きが重なって、切なげだった。
「お姉ちゃん……」
 私は思わず口の中でそう漏らしてしまった。
「いいよ、お姉ちゃん。イって」
「ああっ──」
 お姉ちゃんが切ない声をあげて、体を震わせた。
「軽くイったね。まずは一点」
 それから間もなく、砂村さんのスマートフォンからアラームが鳴った。
「エリザ、おわりよ」
「思ったより短いな」
 エリザちゃんは身を離すと、お姉ちゃんの体液に濡れた指を舐めながら笑う。
「次はハナちゃんだよ」
 このゲームは、私もエリザちゃんと同じように、お姉ちゃんにひどいことをしないといけない。胸が痛かった。
 エリザちゃんはベッドを降りる。その横を私は通って、お姉ちゃんに向かう。お姉ちゃんは泣いていた。鼻をすすり、唇を結んだり解いたり、自由にならない体を強張らせて、少しでも身を守ろうとしているように見えた。閉じることのできない股の間に、お姉ちゃんのあそこが、エリザちゃんにいじめられて、泣いているように濡れていた。
「三秒前──」
 砂村さんが言う。
 不意に私の肩にエリザちゃんが手を置いた。
「ハナちゃん、点を取りにいった方がいいよ。予想以上にお姉ちゃん、敏感みたいだから」
 そんなことを言われても、どうしたらいいか分からなかった。
「スタート」
「え、あっ──」
 砂村さんの声を合図に、私はもう何も考えることができず、お姉ちゃんのあそこに口づけした。
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