ポップンロール

はやしまさひろ

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 ケイコが陸上部に正式に入部をした理由は、体力強化が目的だった。本格的な練習をして、大会にも参加をする。人前で走ることは、度胸がつく。中学の部活と違い、高校ではテレビ中継も多いし、観客だって倍増だ。学生っていうのは、案外に時間があるんだ。勉強をして、本気で部活に打ち込んでもまだ時間はある。バンドの練習にも時間は充分に裂けたんだよ。
 短歌部に入ったカナエは、言葉の勉強をするのが目的なんだって最初は思った。作詞に興味があるからこその短歌なんだってな。しかしそうじゃなかったんだ。カナエは、短歌の中のリズムを体内に吸収しようとしていたんだよ。
 ヨシオが放送部の部長になったのは、音楽の幅を広げるためだ。校内放送っていうのは大抵が流行歌を流すんだよな。けれどそれって、退屈だろ? この世界には何十億っていう数の曲があるんだ。ヨシオは部長の権限を使って、様々な音楽を集めていたんだよ。
 ケンジの目的は単純だ。聞き屋とあの人と一緒の時間を過ごせば、それだけで色々なことを吸収できるっていうもんだからな。
 俺はもっと単純で、楽器を手に入れるためにはバイトで金を稼ぐしかなかったからだ。他の連中と違って、親が金を出してくれないのは分かっていたからな。
 俺は一ヶ月間分のバイト代を頭金にベースを手に入れた。一年間のローンだったが、かなりきつかったよ。バイトをしながら楽器の練習をするのは、肉体的にきつかった。俺は馬鹿だからさ、初めての楽器だっていうのに、あまりにも高価な品物を買ってしまったんだ。
 俺は特に演奏が上手ってわけでもない。当然だよな。ベースを始めたのは高校一年の夏だったんだから。それ以前に真剣に楽器を触ったことなんてない。っていうか、初めてベースを触ったのが、店頭でだったんだ。俺たちは誰がどの楽器を担当するかを話し合った。と言ってもまぁ、ヨシオが主体となって自然な形で決まっていったんだけどな。
 ケンジに楽器は似合わないよな。ヨシオがそう言うと、四人全員が頷いた。僕は鍵盤が得意だし、似合っているでしょ? そう言って笑顔を見せた。ドラムはやっぱり・・・・ とヨシオが言いかけると、ケイコが口を挟んだ。私じゃダメかな? ヨシオはすぐに、そう言うと思ったんだ。そう言ったよ。
 ケイコはパワフルだからな。きっと格好いいドラマーになるよ。俺がそう言った。するとヨシオが、最近では女の人のドラマーも多いんだよ。身体が小さくて細身でも、物凄くパワーがあるんだよ。それに加えて女の人特有の繊細さも兼ね備えているからね。まさにケイコ向きだよ。ヨシオのそんな言葉に、俺が失言する。
 ケイコのパワーはゴリラ並みだけどな。
 パシッと頭を引っ叩かれたよ。
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