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【28】歓迎会
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冒険者ギルドの受付で魔物討伐の証を確認してもらっている間に、ダンジョンに入る許可を得るための手続きをする。
「以上で手続きは終わりですが、注意事項はお聞きになりますか?」
ダンジョン経験者であるアリシアとベルセナがいるが、魔物討伐の確認をただ待つのも暇だったため、一応聞いておくことにする。
「えーと、それじゃあ。お願いします」
「かしこまりました。では、まずは――――」
受付嬢の説明によると、ダンジョン内で手に入れたモノは全て冒険者の物になるが、一度冒険者ギルドに持っていかなくてはならないのだそうだ。というのも、時々ではあるが、歴史的価値のあるモノが見つかることがあるらしく、そういったモノの場合、冒険者ギルドが買い取るのだという。また、ダンジョン内での問題は一切冒険者ギルドは責任を負わないとのことだ。
なるほど、言葉を濁してはいるけど、死んでも責任は取りませんよってことか。
その後も色々な説明をされたが、特に気にも留めておかなくてもよさそうなものであった。
「説明は以上となりますが、質問などはございますか?」
考えてみるも特に気になることは無いし、奥から魔物討伐の証を持っていった受付嬢がこちらに戻ってくるのが見えたため、特に質問は無いと断って報酬を受け取りギルドを出た。
冒険者ギルドでやることを終えた俺達はさっそくダンジョンに!!……という訳にもいかず、時間も時間だったため、夕食にすることにした。
「えー、それでは、少し遅れてしまいましたが、エリンとベルセナが仲間に加わったことを祝いまして、乾杯」
「乾杯!!」
アリシアに聞いたのだが、こういった仲間が加わった際には歓迎会というものを開くらしい。そのため、エリンとベルセナ両名の歓迎会を急遽本日行うことにした。
「アリシアはこういった歓迎会? といったことをしたことがあるんだな」
「意外でしたか?」
「まぁ、意外といったら意外だね。アリシアが誰かと一緒にいるのは想像できないし」
アリシアと長年の付き合いがあるが、誰かと仲良くしているのをあまり見たことが無い。城の者達はどちらかというと、仲良くというか尊敬しているといった感じだった。
「ラベオンの中で私はいったいどんなイメージなのですか……、実際こうやってラベオンと一緒にいるじゃありませんか」
「んー、それはそうだけど、それとこれとは別な気が……」
「まったく別じゃありませんよ。まったく……」
今日はやけに饒舌だなと思いつつ、次にベルセナに話を振ることにした。
「ベルセナは歓迎会をしたことあるのか?」
「僕は……、1人旅でしたから……」
苦笑いを浮かべてどこか自嘲気味にそう言うベルセナ。貴族、それも女子が身分を隠しながら冒険者をしているというのには何かしら理由があるのだろう。自分自身も似たような境遇であるため、特に触れるようなことはしないでおいた。
その後も何気ないことであったり、王城でのことやベルセナと出会う前のことであったりを話しているうちに楽しい時間は過ぎていった。楽しそうに話しているアリシア達を見ているとふと王城を抜け出した時のことを思い出す。
「それにしても、まさかこんなに大所帯になるなんてなぁ……」
王城を抜け出した時には1人旅になると思っていたのだが、あれよあれよと仲間が増えていき、気が付けば4人と1匹の旅となっていた。1人の気ままな旅も楽で良かったかもしれないが、こうして仲間がいてくれた方が良かったなと改めて思う。仲間がいなければ、きっと今のような楽しい旅にはなっていなかっただろう。
「……俺は幸せ者なのかもな」
ボソッと呟いたつもりだったのだが、思っていたよりも声が大きかったようで、楽しそうに話していた3人が一斉にこっちを向いたかと思うと、勢いよく抱き着いてきた。
「私もラベオンと一緒にいられてこの上ないほど幸せですよ」
「ぼ、僕も幸せだ!!」
「私も」
アリシアとベルセナの顔はほんのりと赤く、確実に酔っぱらっているのが見て分かる。エリンは……、良かったお酒は飲んでいないようだ。
「落ち着けお前ら!! ほら、離れろ!!」
どこからこんな力が出るのか、踏ん張ってはいるものの今にも後ろに倒れそうになる。リシアンはいつの間にか逃げていたのか、少し離れたところでこちらを見ている。
「ちょ、ちょ、うわっ!!」
流石に3人を支えることはできずに、大きな音共に勢いよく後ろに倒れてしまう。
「いったぁ……」
思いっきりぶつけてしまった頭をさすりながら状態を起こすと、スースーと寝息が聞こえてくる。
「おいおい……」
あれほど勢いよく倒れたのにも関わらず、アリシアとベルセナは気持ちよさそうに寝ている。精神が太いというか、なんというか……。なにわともあれ、2人が落ち着いてくれたようで助かった。
時間も時間なため、そろそろ店を出ないといけないなと思ったのだが……。
「……この状況は」
アリシアを背中側で、ベルセナをお腹側で店に借りた縄で縛って店を出ることになってしまった。
「ぐぅ……。重い……」
流石に2人を担ぐのはきつい……。
背中とお腹に柔らかい感触を感じるが、そんなことを気にしている余裕もない。1歩1歩右、左とゆっくり足を出すたびに、3人分の体重が片足にのしかかる。
「大丈夫?」
リシアンを抱きかかえたエリンが心配そうにこちらを見ているが、
「あ、あぁ、全然大丈夫だよ」
喋るのもつらいのだが、男としてのプライドなのだろうか、つい見栄を張ってしまう。
2人を担ぎながらなんとか宿にたどり着き、部屋まで運ぶと2人をベッドの上に寝かせる。歩いただけだというのに、滝のようにかいてしまった汗を濡らしたタオルで拭いて、ベッドに横になると泥のように眠った。
「以上で手続きは終わりですが、注意事項はお聞きになりますか?」
ダンジョン経験者であるアリシアとベルセナがいるが、魔物討伐の確認をただ待つのも暇だったため、一応聞いておくことにする。
「えーと、それじゃあ。お願いします」
「かしこまりました。では、まずは――――」
受付嬢の説明によると、ダンジョン内で手に入れたモノは全て冒険者の物になるが、一度冒険者ギルドに持っていかなくてはならないのだそうだ。というのも、時々ではあるが、歴史的価値のあるモノが見つかることがあるらしく、そういったモノの場合、冒険者ギルドが買い取るのだという。また、ダンジョン内での問題は一切冒険者ギルドは責任を負わないとのことだ。
なるほど、言葉を濁してはいるけど、死んでも責任は取りませんよってことか。
その後も色々な説明をされたが、特に気にも留めておかなくてもよさそうなものであった。
「説明は以上となりますが、質問などはございますか?」
考えてみるも特に気になることは無いし、奥から魔物討伐の証を持っていった受付嬢がこちらに戻ってくるのが見えたため、特に質問は無いと断って報酬を受け取りギルドを出た。
冒険者ギルドでやることを終えた俺達はさっそくダンジョンに!!……という訳にもいかず、時間も時間だったため、夕食にすることにした。
「えー、それでは、少し遅れてしまいましたが、エリンとベルセナが仲間に加わったことを祝いまして、乾杯」
「乾杯!!」
アリシアに聞いたのだが、こういった仲間が加わった際には歓迎会というものを開くらしい。そのため、エリンとベルセナ両名の歓迎会を急遽本日行うことにした。
「アリシアはこういった歓迎会? といったことをしたことがあるんだな」
「意外でしたか?」
「まぁ、意外といったら意外だね。アリシアが誰かと一緒にいるのは想像できないし」
アリシアと長年の付き合いがあるが、誰かと仲良くしているのをあまり見たことが無い。城の者達はどちらかというと、仲良くというか尊敬しているといった感じだった。
「ラベオンの中で私はいったいどんなイメージなのですか……、実際こうやってラベオンと一緒にいるじゃありませんか」
「んー、それはそうだけど、それとこれとは別な気が……」
「まったく別じゃありませんよ。まったく……」
今日はやけに饒舌だなと思いつつ、次にベルセナに話を振ることにした。
「ベルセナは歓迎会をしたことあるのか?」
「僕は……、1人旅でしたから……」
苦笑いを浮かべてどこか自嘲気味にそう言うベルセナ。貴族、それも女子が身分を隠しながら冒険者をしているというのには何かしら理由があるのだろう。自分自身も似たような境遇であるため、特に触れるようなことはしないでおいた。
その後も何気ないことであったり、王城でのことやベルセナと出会う前のことであったりを話しているうちに楽しい時間は過ぎていった。楽しそうに話しているアリシア達を見ているとふと王城を抜け出した時のことを思い出す。
「それにしても、まさかこんなに大所帯になるなんてなぁ……」
王城を抜け出した時には1人旅になると思っていたのだが、あれよあれよと仲間が増えていき、気が付けば4人と1匹の旅となっていた。1人の気ままな旅も楽で良かったかもしれないが、こうして仲間がいてくれた方が良かったなと改めて思う。仲間がいなければ、きっと今のような楽しい旅にはなっていなかっただろう。
「……俺は幸せ者なのかもな」
ボソッと呟いたつもりだったのだが、思っていたよりも声が大きかったようで、楽しそうに話していた3人が一斉にこっちを向いたかと思うと、勢いよく抱き着いてきた。
「私もラベオンと一緒にいられてこの上ないほど幸せですよ」
「ぼ、僕も幸せだ!!」
「私も」
アリシアとベルセナの顔はほんのりと赤く、確実に酔っぱらっているのが見て分かる。エリンは……、良かったお酒は飲んでいないようだ。
「落ち着けお前ら!! ほら、離れろ!!」
どこからこんな力が出るのか、踏ん張ってはいるものの今にも後ろに倒れそうになる。リシアンはいつの間にか逃げていたのか、少し離れたところでこちらを見ている。
「ちょ、ちょ、うわっ!!」
流石に3人を支えることはできずに、大きな音共に勢いよく後ろに倒れてしまう。
「いったぁ……」
思いっきりぶつけてしまった頭をさすりながら状態を起こすと、スースーと寝息が聞こえてくる。
「おいおい……」
あれほど勢いよく倒れたのにも関わらず、アリシアとベルセナは気持ちよさそうに寝ている。精神が太いというか、なんというか……。なにわともあれ、2人が落ち着いてくれたようで助かった。
時間も時間なため、そろそろ店を出ないといけないなと思ったのだが……。
「……この状況は」
アリシアを背中側で、ベルセナをお腹側で店に借りた縄で縛って店を出ることになってしまった。
「ぐぅ……。重い……」
流石に2人を担ぐのはきつい……。
背中とお腹に柔らかい感触を感じるが、そんなことを気にしている余裕もない。1歩1歩右、左とゆっくり足を出すたびに、3人分の体重が片足にのしかかる。
「大丈夫?」
リシアンを抱きかかえたエリンが心配そうにこちらを見ているが、
「あ、あぁ、全然大丈夫だよ」
喋るのもつらいのだが、男としてのプライドなのだろうか、つい見栄を張ってしまう。
2人を担ぎながらなんとか宿にたどり着き、部屋まで運ぶと2人をベッドの上に寝かせる。歩いただけだというのに、滝のようにかいてしまった汗を濡らしたタオルで拭いて、ベッドに横になると泥のように眠った。
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