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ep.004
テントと焚火とバーボンと
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ゴールデンウィークが終わり、何となく街中も落ち着きを取り戻した頃、仕事の方も少し落ち着いてきた。
今後の日程やルーティンワークを加味しても2日3日は休めそうな雰囲気なので、お気に入りのキャンプ場へ電話をかけ、予約する。
翌朝、古臭いコットンの三角テントや今やヴィンテージと言っても差し支えないような道具を積み込み、凡そ2時間ほど走ってキャンプ場へ。
到着して受付へ向かうと、主人が奥から出てきた。
「お、今年も来たね。またあのテントかい?」
真っ白なあご髭を伸ばし、ネルシャツとオーバーオールに古いテンガロンを被った姿はキャンプ場の主人というよりもはや牧場主の風貌だ。
「あぁ、いつものボロテントだよ。オヤジさんも、元気そうだね」
毎年変わらぬ挨拶を済ませてテントサイトへ向かう。今夜の客は俺一人だそうだ。
補修やツギハギだらけの古臭いテントを張り、火床を作り、まずは缶ビールで喉を潤す。暗くなるまではまだまだ時間がある。昼寝でもしようか…そんな事を考えていたら、主人がやって来た。
「あんたも物持ちがいいねぇ。この頃のコットンテントなんて、もう誰も使ってないよ。」
「手入れしてやれば、今だって現役だよ。尤も雨が降らない日しか使いたくないがね。」
イマドキのテントも持ってはいるが、この時期のキャンプはこのテントと決めている。重くて狭くて汚いテントだが、その如何にもテント!というスタイルが気に入っている。
「コットンテントに赤コールマン 、それにオプティマス8R…まるで40年前のキャンプだな。」そう言いながら彼は胸ポケットからジャーキーを一枚出してきた。この辺りでとれた鹿のジャーキーらしい。
細く裂いて口に入れると、野趣溢れる香りが広がり美味い。
「最近は鹿を食う人も少なくてな。冷凍庫にワンサとあるんだ。どうせ今日はアンタ一人だし、鹿でも炙りながら一杯やらないか?」
願っても無い誘いに乗り、焚火を起して主人を待つ。太陽はそろそろ山の陰に入り込む。
程なくして主人がクーラーボックスと瓶を一本ぶら下げて来た。
OLD GRAND-DAD と書かれたオレンジのラベルが焚火に映える。
熾になった焚火の上で鹿肉を炙りながら、主人と色々な話をした。山の話、キャンプの話、酒の話、仕事の話、家族の話、人生観人生訓…。
二人で概ねバーボンを一本空けた頃、主人は寝床へ帰っていった。さて、何時頃だろうかと時計を見ようと思ったが、そんな無粋な事をするのももったいない気がしたので、狭いテントの中、ブランケットに包まった。
起きたくなったら起きればいいさ。
今後の日程やルーティンワークを加味しても2日3日は休めそうな雰囲気なので、お気に入りのキャンプ場へ電話をかけ、予約する。
翌朝、古臭いコットンの三角テントや今やヴィンテージと言っても差し支えないような道具を積み込み、凡そ2時間ほど走ってキャンプ場へ。
到着して受付へ向かうと、主人が奥から出てきた。
「お、今年も来たね。またあのテントかい?」
真っ白なあご髭を伸ばし、ネルシャツとオーバーオールに古いテンガロンを被った姿はキャンプ場の主人というよりもはや牧場主の風貌だ。
「あぁ、いつものボロテントだよ。オヤジさんも、元気そうだね」
毎年変わらぬ挨拶を済ませてテントサイトへ向かう。今夜の客は俺一人だそうだ。
補修やツギハギだらけの古臭いテントを張り、火床を作り、まずは缶ビールで喉を潤す。暗くなるまではまだまだ時間がある。昼寝でもしようか…そんな事を考えていたら、主人がやって来た。
「あんたも物持ちがいいねぇ。この頃のコットンテントなんて、もう誰も使ってないよ。」
「手入れしてやれば、今だって現役だよ。尤も雨が降らない日しか使いたくないがね。」
イマドキのテントも持ってはいるが、この時期のキャンプはこのテントと決めている。重くて狭くて汚いテントだが、その如何にもテント!というスタイルが気に入っている。
「コットンテントに赤コールマン 、それにオプティマス8R…まるで40年前のキャンプだな。」そう言いながら彼は胸ポケットからジャーキーを一枚出してきた。この辺りでとれた鹿のジャーキーらしい。
細く裂いて口に入れると、野趣溢れる香りが広がり美味い。
「最近は鹿を食う人も少なくてな。冷凍庫にワンサとあるんだ。どうせ今日はアンタ一人だし、鹿でも炙りながら一杯やらないか?」
願っても無い誘いに乗り、焚火を起して主人を待つ。太陽はそろそろ山の陰に入り込む。
程なくして主人がクーラーボックスと瓶を一本ぶら下げて来た。
OLD GRAND-DAD と書かれたオレンジのラベルが焚火に映える。
熾になった焚火の上で鹿肉を炙りながら、主人と色々な話をした。山の話、キャンプの話、酒の話、仕事の話、家族の話、人生観人生訓…。
二人で概ねバーボンを一本空けた頃、主人は寝床へ帰っていった。さて、何時頃だろうかと時計を見ようと思ったが、そんな無粋な事をするのももったいない気がしたので、狭いテントの中、ブランケットに包まった。
起きたくなったら起きればいいさ。
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