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月影舞華

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世界の終わり

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異能力者。それは文字通り常人とは異なる力を持つ者のことである。異なる力を持つ故、古くから彼らは神として

崇められてきた。そしてそれは近代技術のは媚びる今でも制度として残っている。
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「ふわぁー、おはよー。」

気だるげな声とともに2階から降りてきたのはボサボサの髪にピンク色の可愛らしいパジャマを着た少女である。

「心葉、髪ぐらいきちんとしなさい。」

その少女に声をかけるのは俺の母こと如月麗子。艶やかな黒髪を高い位置で1つに結わえていて、すらりとのびた

長い脚。血縁関係のある俺から見てもなかなかのスタイル。それもそうだ。何しろ彼女は学生時代は元モデルで、

今数々のテレビドラマに出演中の超人気女優なのだから。

「はぁーい。」

そんな母にそう返事をするのは如月心葉、16歳。俺の2つ下の妹である。しかし、さすがは人気女優の娘と言う

べきか、こんなにだらしない格好をしているにも関わらず全く不細工に見えない。むしろ少し可愛げがあるように

見えたりするのはまあ1種の才能であろう。

「あ、心葉、異能力使うのは禁止だからね…」

と母が言いかけた時には

「よいしょっ」

と言って心葉は異能を発動させていた。0コンマ1秒後、心葉の髪は綺麗に整えられ母親と同じように高い位置で

1つにまとめられている。服も、パジャマからのりのきいた新しい学校の制服へ。そして今日は頭に可愛らしいお

花のバレッタというおまけ付きだ。

「もう!何でもかんでも異能使うの禁止って何度も言ってるでしょ!」

母が卵焼きを器用に焼きながら心葉に怒鳴る。

「えー、何でダメなのー?」

めんどくさがり屋の心葉としっかりものの母親との毎日の恒例のやりとり。

「だから!」

「はいはい、異能にばっかり頼ってると人間ダメになるからー、でしょ?わかってるって。」

母がはあっと溜息を1つついて

「分かってるなら気をつけなさいよ」

というのまでか毎朝同じ、日常である。

「和人ー、あんたはさっさと朝ご飯食べちゃって。今日生徒会で、早く学校行かなきゃダメって行ってなかった?」

そう言われてはっと我に返る。俺、如月和人は18歳。今日から妹も通う帝都九重花学園で生徒会長も務める、高

校3年生である。

「ちょっとお兄ちゃん、邪魔邪魔。食べ終わったんならどいてよね。私だって今日は新入生代表のスピーチをしないといけなくて緊張してるんだから。」

心葉が腰に手を当てて仁王立して俺の側に立っていた。

「ああ、悪い悪い。」

俺は立ち上がって食べ終わったお皿を台所へ持っていく。

「でもびっくりだよな。まさかお前が新入生代表のスピーチをすることになるなんて。」

「まーねー。でも一番驚いたのは私だよー。でも私、一番じゃないんでしょ?」

帝都九重花学園では毎年、新入生代表のスピーチを入試成績の1番良い者に生徒会から依頼をする、ことが決まっ

ている。しかし今年はその依頼を拒否されたのである。普通、スピーチをすると教師からの評価も上がるので拒否

する者は滅多にいない。過去には和人も新入生代表スピーチを行った。ともかく、今年度は拒否をされたので2番

目に成績の良かった心葉に依頼が舞い込んできた、という訳だ。

「まあ、1番ではなかったな。でも結果的にはお前がスピーチ出来るんだからいいじゃないか。」

「そーなんだけどさ…私、自分で言うのもなんだけど入試結果、結構自信あったのにそれ以上って…」

心葉が納得いかない、という顔で続ける。

「この辺にいたら絶対名前ぐらい知ってると思うんだけどなぁ。お兄ちゃん、名前分かんないの?」

「それが…なーんだったかなあ…ちょっと記憶にないんだよな…」

「ああ、もう!頼りないなぁ!」

心葉がイライラしてそう言う。しかしそこで

「ちょっと、くだらない事で喧嘩してないで早く学校行きなさい!遅刻するわよ!」

という母の大きな声で、俺と心葉は顔を見合わせると逃げるように家を飛び出した。
......................................................
和人達の通う帝都九重花学園は俗にいうエリート校。通うことの出来るのはもちろん、異能力者のみ。つまり生ま

れ持って特別な力を持つ者だけである。そして、入試では一般的な学力よりも単純に本来持ちうる異能の強さ、そ

れだけが問われる。この世界の原則として異能力者は生まれ持っては1つの異能しか持つことは出来ない。しか

し、特殊な学校で訓練を重ねることで様々な力を使役出来るようになる。その数少ない教育を行っている学校の1

つが、和人たちの通う帝都九重花学園だ。そして何故か、如月家の者達は皆元々持っている異能の力がすば抜けて

強かった。和人は2年前、入学試験におきてダントツの1位の数値をたたき出し首席で入学。その後生徒会書記、

副生徒会長を得て、生徒会長という現在の地位に至るわけである。

......................................................
「結局、お兄ちゃんと一緒に学校行くはめになっちゃったじゃないの!」

和人の横で心葉がうるさく騒ぐ。

「うるせえな。てか俺についてきたのお前だろ。」

「うっ…それは…だって、私が時間ずらして行こうとしたら後ろにお母さんの冷たい視線が…」

そう言い訳をする心葉の声は段々と小さくなる。

「じゃ、仕方ないな。」

和人は軽くあしらいつつ、今日の入学式での生徒会の動きと段取りを脳内でシュミレーション。学校が近くなるに

つれて、周りを歩く生徒も増えてくる。

「ねえ、あそこ歩いてるのって生徒会長じゃない?」

「ほんとだ!、相変わらず今日もカッコイイねー。ね、隣にいるめっちゃ可愛い女の子誰!?」

「私知ってる!あの子会長の妹さん。今年の新入生代表スピーチする子だって。」

「兄妹揃ってエリートかぁ…流石如月家。いいなぁ。」

周りから聞こえて来るのはそんな会話。

「モテモテですなぁ、和人殿?」

周りの会話も隣でニヤニヤしながら冷やかしてくる妹も完全に意識からシャットアウト。こういうのは無視が1番

である。

「ちょっと!聞いてるの!お兄ちゃんってば無視しないでよ。」

ふくれっ面で後ろから和人の頭を叩こうとしてくる。だが無理な話だ。和人は180cm、心葉は165cmである。約

20cmの身長差。届くはずもなく。そんなことをしている内に学校へ到着。

「はあー、何時見ても本当に大きいねー、この学校。」

確かに。もう見慣れてしまったが和人も初めて見た時は同じ事を思ったものだ。慣れというのは怖いものである。

校舎に入ると一際目を惹くのは大きなシャンデリア。建物は円柱状になっておりそこに存在する階段には綺麗な黄

金比が用いられているらしい。

「行くぞー。」

和人はぼーっとしている心葉に声をかけ、校舎へと足を進める。そこで、

「じゃあ、また後でねー。」

そう言って和人とは違う方向へ向かおうとする、心葉。

「おい、心葉。どこへ行くんだ?生徒会室はこっちだぞ?」

和人がそう言うと心葉は不思議そうに首を傾げた。

「え?なんで私が生徒会室に?」

「あれ?言ってなかったか、俺?百合がお前のスピーチに関する最終確認とかをしたいから生徒会室に来て欲しいって…」

どうやら言ってなかったようで心葉は目を丸くする。

「そんなの聞いてないわよ!てか百合さん?って誰?」

「あー、一条百合だよ。3-Aの俺と同じクラスでうちの副生徒会長。」

そんな会話をしながら和人は心葉を生徒会室に案内することにした。”生徒会室”と書かれたプレートのかかる大き

な部屋。和人はそこのドアを大きく開ける。中はかなり広い造り。通常教室の2倍はあるであろうその部屋の中心

には大きな会議用のデスクが2台とその脇に椅子。窓際には個人の机か3つあり、それぞれの机にはパソコンと個

人の名前の書いたプレートが置いてある。そして部屋のいちばん奥にある大きめの机。そこで1人の少女が気持ち

良さげに眠っていた。和人は無言でツカツカと歩み寄り、バンっと手のひらで机を思いっきり叩く。
「ふ…ふえ…??」

そんな情けない声を上げるのは、一条百合。肩にかかるぐらいの短めボブの髪は鮮やかなオレンジ色。その百合に

和人は怒鳴る。

「何でいっつもお前はここで寝てるんだ!ここは俺の机であってお前の机じゃない!……まあいいや、とにかく。ほら、妹連れてきたぞ」

と、心葉の方に視線をやる和人。心葉はあたふたとした後、ばっと頭を下げる。

「こっ、こんにちは、如月、心葉です!よっよろしくお願いします!」

それを受けて、眠そうにしていた百合の目がばっと大きく開かれる。そのパッチリとした二重の中にある大きな

瞳。それは右は淡い緑、左は澄んだ青色をしていた。百合は椅子から立ち上がり、心葉の肩をがしっと掴む。

「わお!これ和人の妹さんですカ?めっちゃ可愛いネ!」

少しイントネーションのおかしい日本語。百合は母がロシア人、父がイギリス人のハーフ。その瞳を見て、心葉が驚く。
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