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第三章 ヒッキーじゃなくてインドア派
3-1 妖怪布団もぐりと新しい朝
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おはようございます、黎藤珀弥です。今のところ、名前の画数の多さナンバーワンキャラクターです。
本当は佐藤とか鈴木とか、普通な苗字の家に生まれたかったです。いや、貶すつもりはありません。
ただ、主人公キャラだからって難しい苗字にすればいいってもんじゃありませんよね。言い忘れていましたが、僕は主人公です。
いっそのこと、普通の苗字の家に婿入りすればいいのでしょうか。ちなみに、この神社の跡継ぎは僕しかいません。
それでこちら、僕の腰にくっついている神凪千真さん。この子も変わった名前ですね。『千真』と書いて『かずま』っていうスポーツ選手もいるみたいですよ。
お休みのところ悪いけど、そろそろ離れていただきたい。
「千真さん。こんなところで寝るなんて、駄目でしょ?」
か細い腕を僕の腰に回し、普通に眠っている女の子の肩を軽く揺さ振った。
おかしいな。昨夜は確かに彼女の部屋に送り届けたはずなのに、明け方には僕の布団の中に潜り込んでいた。軽くホラーだ。
「やだぁ……」
彼女は僕の上でもぞもぞと動き、腕に力を込め、抵抗の意を示す。おいおい。
「やだじゃなぁあっくしょん!」
どうやら、僕は風邪を引いてしまったようだ。
千真はちゃっかり僕の羽織を着ているし……。気に入って貰えて何よりだ。
「ちょっと~。風邪が移っちゃうし、シチュエーション的にもマズいからね? そろそろ起きてもらっていいですか?」
再度、千真に声をかける。しかし、依然として彼女は僕にしがみつき、離れようとしない。
布団の中で少女が男の上に乗り、抱きついたまま眠っている。
ほら、傍から見たらこのシチュエーション絶対マズイでしょう。ゆうべはおたのしみでしたね案件でしょう。彼女には他意は無いだろうし、僕だって下心は一切無い。
僕としては健全にやっていきたいから、いらやしいやつとかそういうのは——。
『プルルルル……』
突然、枕元の携帯電話が無機質な着信音と共に震えだした。それに手を伸ばし、ディスプレイを確認する。見覚えのある名前と電話番号だ。
「はい……」
『もっしー! 寝起きっぽいなぁオイ!』
手に納まるほどの小さな機械から、無駄にテンションの高い耳障りな声が聞こえてきた。朝っぱらから元気だな。
「うん、寝起きだよ」
『やっぱりか! 悪ィ悪ィ!』
悪いと思っていないな、間違いない。
「で、何? 何か用なの?」
『あっれぇ、珀弥ちゃんご機嫌ナナメですかぁ!? お兄さんちょっと心配!』
電話の主は無駄に煽り口調だ。何がお兄さんだ。本当に腹立つなこいつ。
「アー、親指が不自然に滑って電源ボタンにー」
『落ち着け、待ちなさい、電話は切らないでください』
耳から電話を離して本当に切ろうとしたが、奴から慌てて制止が入ったので、再び電話を耳に当てた。
「わかってると思うけど今は君のせいで機嫌が悪いんだ。そんな僕に何か用があるなら十文字で簡潔に用件を言え」
口を挟む間を与えないくらい早口でまくしたて、相手の出方を見る。
『お前ン家に遊びにきた』
実に簡潔だ。だけれど、僕にとって都合の悪い返事だった。
「出直せデコっぱちが! こちとらまだ布団から出られてねぇんだよ!」
千真もくっついて離れないし、この状況を彼に見られたらやばい。
『酷くね!? わざわざこんな田舎まで来てやった親友を追い返すか!?』
「誰がお前なんかと親友なんだよ。お前のところだって山だろうが山。お前の額に『内』って書くぞ」
達筆に。
『機嫌悪すぎだろ! 何がそこまでお前をイライラさせたよ!?』
「お前が原因だって言ってんだろ。額から禿げろ」
『お前さっきから人の額に恨みでもあんのか!? もういいもんね、嫌がらせに起こしに行ってやるもんねー!』
床を歩く音が受話器越しに聞こえる。あいつ、家に上がりやがった。
「来るな馬鹿野郎お願いします来やがらないでください」
やばい、これは絶対来る。
家に上がり込んで、僕の部屋に直接来るのは今回に限ったことじゃない。このようなやりとりが有ろうが無かろうが、いつも絶対部屋まで来るのだ。嫌がらせに。
『お兄さん怒っちゃったもんね! 謝ったって遅いんだもんね!!』
と、そこで電話が切れた。あの野郎……!
足音が近い。ドタドタとわざと足音を立て、早足で来ている。大人げないにも程があるだろう。
こんな近くで不毛な罵り合いが繰り広げられていたのに、千真は起きる気配が無いし。なんてこった。
結局僕は動けないままで、奴は部屋の前に来てしまった。そして、障子に手を掛ける。
「ちっ」
僕は急いで掛け布団を掴んだ。
「おっはよォ! 元気ィー!?」
障子が開くのと、僕が掛け布団で千真を隠したのは、ほぼ同時だった。
障子の向こう側には、センター分けの茶髪男が陽の光をバックに仁王立ちしていた。相変わらずデコピンしやすい額だ。
「おはよう、翼君。いい朝だね」
自分でも驚くほど、抑揚の無い声が出た。
「うまい具合に太陽避けてるクセになーにがいい朝だぁ?」
翼は障子を全開にし、陽の光が僕に当たるように移動した。何てことをしやがるこの野郎。僕は腕で光を遮り、目を細める。
「うわ、やめろ、溶けるだろ」
「お前は引きこもりか!」
「いや、ちゃんと外出てるよ。買い物とか」
「じゃあ何でスゲー色白なんだよ! ボーンチャイナかお前!」
ボーンチャイナとは、白乳色の磁器のことである。うちでもボーンチャイナ製の食器を何点か愛用しているが、今は別にどうでもいい話だ。
「肌弱いんだよ放っておけよ。表題見てみなよ、何の為の『白鬼』だよ」
「驚きの白さがまさかの由来!?」
そこまで驚くことだろうか。
「まー確かにお前の先祖も白いしな」
「死人の白さと並べて語らないでくれる?」
* * * * * * * *
「へくちっ!」
「はくれん先生ー、大丈夫?」
「お風邪かな?」
「そんなわけないだろぉ」
突然くしゃみをした私の許へ、子供たちが駆け寄って来てくれました。優しい子たちなのです。
「ふふ、平気ですよ。誰かが私の噂をしているようなのです」
「うわさー?」
子供たちは声を揃えて首をかしげました。微笑ましいですね。
「えぇ。くしゃみをするときは、風邪を引いているか、噂をされているかのどちらかなのですよ」
「へぇ! 先生はもう風邪を引かないから、噂されてるんだね!」
「そういうことです」
私は李吉君に笑い掛け、背伸びして頭を撫でてあげました。
今は私の方が小さい子供に見えるはずですから、少々おかしな光景でしょうね。
「李吉ずるーい!」
「葉菜も!」
「里もー!」
子供たちは口を尖らせ、李吉君を責め立て始めてしまいました。
「はいはい、順番ですよ。喧嘩はお止め下さいな」
* * * * * * * *
「へくちっ」
「おい、字面は可愛いのに野太い声出してんじゃねーよ」
僕の突然のくしゃみに、翼は不快そうな表情をした。
「じゃあどうすればいいんだよ。裏声出セバイイノ?」
「やめろキモい」
一部裏声で話してみたが、あっけなく一蹴された。自分でも流石に無いと思ったが。
「ひどいな。風邪移してやろうか?」
「あぁ!? お前風邪かよ! 頭良くなったの?」
○○は風邪引かないってか?
「失礼だな。僕だって風邪ぐらい引くよ。移すぞ」
「野郎から病気貰うとかマジ勘弁、女の子からはむしろ奪いたい」
こいつが言うと何故か卑猥になる不思議である。
「いっぺん煩悩と共に往生しろ」
寺の子のくせに、こいつの頭の中は女の子のことや、いやらしいことばかりだ。
健全な男児なら普通なのか、僕にはよくわからないが、ただ一つ言えることは『こいつは変態だ』ということである。
「残ね~ん! 女の子と平和にキャッキャウフフするまでは意地でも死なねえからザマァみろ」
こいつ、きりっとした表情で何か言ってるぞ。
「いつも平和じゃないの?」
「なんかね~イイカンジだなって思った子がいつも刺客なんですよね~」
「へぇ」
「リアクションうっすーい!」
刺客だとしても美味しく頂いているのだろうが、平和とは程遠いものなのだろう。別にどうでも良いが。
「まぁ、朝起きたら隣に可愛い女の子が寝てたらなぁ~。幸せで往生しちまうかもしれねーけど」
「へ、へぇ……」
ニッと笑う翼の台詞に、ぎくりとした。
普段の僕なら、非難の目で彼を見据えて否定的な言葉を返すだろう。だけれど、今回は状況が違う。
隣ではないが、身体の上には女の子が乗っかっているのだ。いやそっちの方がもっとマズイ。
本当は、彼のことを変態だと言える立場ではないのだ。
「そんなエロゲみてーな展開はリアルにあるわけねぇけどな」
「そりゃあ、ね……」
すみません、日常系主人公なのにそんな展開に遭遇してるんです。
「つーか、さっきから気になってたんだけどよ、布団盛り上がってね? 朝立ち? とてもお元気?」
「ちげーよ死ね」
翼は千真が乗っかっているところをピンポイントで指摘した。気付いてたのか、そうか。
「ジェニファーだよジェニファー」
咄嗟の嘘だが、彼は僕がジェニファー型の抱き枕を愛用していることを知っている。もしかしたら、通るかもしれない。単純馬鹿だし。
「お前がやたらと気に入ってるムカつく顔のペンギンか?」
ジェニファーに失礼だな。まったく。確かにムカつく顔はしてるけど。
「そうそう。ちょっと大きめの二号買ったんだけど、寝てるうちに移動しちゃったみたい」
騙されろ、騙されろ馬鹿。
「へぇ、なるほどなぁ」
彼は納得したように頷いた——。
本当は佐藤とか鈴木とか、普通な苗字の家に生まれたかったです。いや、貶すつもりはありません。
ただ、主人公キャラだからって難しい苗字にすればいいってもんじゃありませんよね。言い忘れていましたが、僕は主人公です。
いっそのこと、普通の苗字の家に婿入りすればいいのでしょうか。ちなみに、この神社の跡継ぎは僕しかいません。
それでこちら、僕の腰にくっついている神凪千真さん。この子も変わった名前ですね。『千真』と書いて『かずま』っていうスポーツ選手もいるみたいですよ。
お休みのところ悪いけど、そろそろ離れていただきたい。
「千真さん。こんなところで寝るなんて、駄目でしょ?」
か細い腕を僕の腰に回し、普通に眠っている女の子の肩を軽く揺さ振った。
おかしいな。昨夜は確かに彼女の部屋に送り届けたはずなのに、明け方には僕の布団の中に潜り込んでいた。軽くホラーだ。
「やだぁ……」
彼女は僕の上でもぞもぞと動き、腕に力を込め、抵抗の意を示す。おいおい。
「やだじゃなぁあっくしょん!」
どうやら、僕は風邪を引いてしまったようだ。
千真はちゃっかり僕の羽織を着ているし……。気に入って貰えて何よりだ。
「ちょっと~。風邪が移っちゃうし、シチュエーション的にもマズいからね? そろそろ起きてもらっていいですか?」
再度、千真に声をかける。しかし、依然として彼女は僕にしがみつき、離れようとしない。
布団の中で少女が男の上に乗り、抱きついたまま眠っている。
ほら、傍から見たらこのシチュエーション絶対マズイでしょう。ゆうべはおたのしみでしたね案件でしょう。彼女には他意は無いだろうし、僕だって下心は一切無い。
僕としては健全にやっていきたいから、いらやしいやつとかそういうのは——。
『プルルルル……』
突然、枕元の携帯電話が無機質な着信音と共に震えだした。それに手を伸ばし、ディスプレイを確認する。見覚えのある名前と電話番号だ。
「はい……」
『もっしー! 寝起きっぽいなぁオイ!』
手に納まるほどの小さな機械から、無駄にテンションの高い耳障りな声が聞こえてきた。朝っぱらから元気だな。
「うん、寝起きだよ」
『やっぱりか! 悪ィ悪ィ!』
悪いと思っていないな、間違いない。
「で、何? 何か用なの?」
『あっれぇ、珀弥ちゃんご機嫌ナナメですかぁ!? お兄さんちょっと心配!』
電話の主は無駄に煽り口調だ。何がお兄さんだ。本当に腹立つなこいつ。
「アー、親指が不自然に滑って電源ボタンにー」
『落ち着け、待ちなさい、電話は切らないでください』
耳から電話を離して本当に切ろうとしたが、奴から慌てて制止が入ったので、再び電話を耳に当てた。
「わかってると思うけど今は君のせいで機嫌が悪いんだ。そんな僕に何か用があるなら十文字で簡潔に用件を言え」
口を挟む間を与えないくらい早口でまくしたて、相手の出方を見る。
『お前ン家に遊びにきた』
実に簡潔だ。だけれど、僕にとって都合の悪い返事だった。
「出直せデコっぱちが! こちとらまだ布団から出られてねぇんだよ!」
千真もくっついて離れないし、この状況を彼に見られたらやばい。
『酷くね!? わざわざこんな田舎まで来てやった親友を追い返すか!?』
「誰がお前なんかと親友なんだよ。お前のところだって山だろうが山。お前の額に『内』って書くぞ」
達筆に。
『機嫌悪すぎだろ! 何がそこまでお前をイライラさせたよ!?』
「お前が原因だって言ってんだろ。額から禿げろ」
『お前さっきから人の額に恨みでもあんのか!? もういいもんね、嫌がらせに起こしに行ってやるもんねー!』
床を歩く音が受話器越しに聞こえる。あいつ、家に上がりやがった。
「来るな馬鹿野郎お願いします来やがらないでください」
やばい、これは絶対来る。
家に上がり込んで、僕の部屋に直接来るのは今回に限ったことじゃない。このようなやりとりが有ろうが無かろうが、いつも絶対部屋まで来るのだ。嫌がらせに。
『お兄さん怒っちゃったもんね! 謝ったって遅いんだもんね!!』
と、そこで電話が切れた。あの野郎……!
足音が近い。ドタドタとわざと足音を立て、早足で来ている。大人げないにも程があるだろう。
こんな近くで不毛な罵り合いが繰り広げられていたのに、千真は起きる気配が無いし。なんてこった。
結局僕は動けないままで、奴は部屋の前に来てしまった。そして、障子に手を掛ける。
「ちっ」
僕は急いで掛け布団を掴んだ。
「おっはよォ! 元気ィー!?」
障子が開くのと、僕が掛け布団で千真を隠したのは、ほぼ同時だった。
障子の向こう側には、センター分けの茶髪男が陽の光をバックに仁王立ちしていた。相変わらずデコピンしやすい額だ。
「おはよう、翼君。いい朝だね」
自分でも驚くほど、抑揚の無い声が出た。
「うまい具合に太陽避けてるクセになーにがいい朝だぁ?」
翼は障子を全開にし、陽の光が僕に当たるように移動した。何てことをしやがるこの野郎。僕は腕で光を遮り、目を細める。
「うわ、やめろ、溶けるだろ」
「お前は引きこもりか!」
「いや、ちゃんと外出てるよ。買い物とか」
「じゃあ何でスゲー色白なんだよ! ボーンチャイナかお前!」
ボーンチャイナとは、白乳色の磁器のことである。うちでもボーンチャイナ製の食器を何点か愛用しているが、今は別にどうでもいい話だ。
「肌弱いんだよ放っておけよ。表題見てみなよ、何の為の『白鬼』だよ」
「驚きの白さがまさかの由来!?」
そこまで驚くことだろうか。
「まー確かにお前の先祖も白いしな」
「死人の白さと並べて語らないでくれる?」
* * * * * * * *
「へくちっ!」
「はくれん先生ー、大丈夫?」
「お風邪かな?」
「そんなわけないだろぉ」
突然くしゃみをした私の許へ、子供たちが駆け寄って来てくれました。優しい子たちなのです。
「ふふ、平気ですよ。誰かが私の噂をしているようなのです」
「うわさー?」
子供たちは声を揃えて首をかしげました。微笑ましいですね。
「えぇ。くしゃみをするときは、風邪を引いているか、噂をされているかのどちらかなのですよ」
「へぇ! 先生はもう風邪を引かないから、噂されてるんだね!」
「そういうことです」
私は李吉君に笑い掛け、背伸びして頭を撫でてあげました。
今は私の方が小さい子供に見えるはずですから、少々おかしな光景でしょうね。
「李吉ずるーい!」
「葉菜も!」
「里もー!」
子供たちは口を尖らせ、李吉君を責め立て始めてしまいました。
「はいはい、順番ですよ。喧嘩はお止め下さいな」
* * * * * * * *
「へくちっ」
「おい、字面は可愛いのに野太い声出してんじゃねーよ」
僕の突然のくしゃみに、翼は不快そうな表情をした。
「じゃあどうすればいいんだよ。裏声出セバイイノ?」
「やめろキモい」
一部裏声で話してみたが、あっけなく一蹴された。自分でも流石に無いと思ったが。
「ひどいな。風邪移してやろうか?」
「あぁ!? お前風邪かよ! 頭良くなったの?」
○○は風邪引かないってか?
「失礼だな。僕だって風邪ぐらい引くよ。移すぞ」
「野郎から病気貰うとかマジ勘弁、女の子からはむしろ奪いたい」
こいつが言うと何故か卑猥になる不思議である。
「いっぺん煩悩と共に往生しろ」
寺の子のくせに、こいつの頭の中は女の子のことや、いやらしいことばかりだ。
健全な男児なら普通なのか、僕にはよくわからないが、ただ一つ言えることは『こいつは変態だ』ということである。
「残ね~ん! 女の子と平和にキャッキャウフフするまでは意地でも死なねえからザマァみろ」
こいつ、きりっとした表情で何か言ってるぞ。
「いつも平和じゃないの?」
「なんかね~イイカンジだなって思った子がいつも刺客なんですよね~」
「へぇ」
「リアクションうっすーい!」
刺客だとしても美味しく頂いているのだろうが、平和とは程遠いものなのだろう。別にどうでも良いが。
「まぁ、朝起きたら隣に可愛い女の子が寝てたらなぁ~。幸せで往生しちまうかもしれねーけど」
「へ、へぇ……」
ニッと笑う翼の台詞に、ぎくりとした。
普段の僕なら、非難の目で彼を見据えて否定的な言葉を返すだろう。だけれど、今回は状況が違う。
隣ではないが、身体の上には女の子が乗っかっているのだ。いやそっちの方がもっとマズイ。
本当は、彼のことを変態だと言える立場ではないのだ。
「そんなエロゲみてーな展開はリアルにあるわけねぇけどな」
「そりゃあ、ね……」
すみません、日常系主人公なのにそんな展開に遭遇してるんです。
「つーか、さっきから気になってたんだけどよ、布団盛り上がってね? 朝立ち? とてもお元気?」
「ちげーよ死ね」
翼は千真が乗っかっているところをピンポイントで指摘した。気付いてたのか、そうか。
「ジェニファーだよジェニファー」
咄嗟の嘘だが、彼は僕がジェニファー型の抱き枕を愛用していることを知っている。もしかしたら、通るかもしれない。単純馬鹿だし。
「お前がやたらと気に入ってるムカつく顔のペンギンか?」
ジェニファーに失礼だな。まったく。確かにムカつく顔はしてるけど。
「そうそう。ちょっと大きめの二号買ったんだけど、寝てるうちに移動しちゃったみたい」
騙されろ、騙されろ馬鹿。
「へぇ、なるほどなぁ」
彼は納得したように頷いた——。
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